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ニトリやサツドラも導入 自社ECで「Amazonのようなビジネス」を実現するサービスの魅力AIの進化が加速する「プラットフォームビジネス」とは?

オンラインマーケットプレイス構築を支援するMiraklが日本で初のイベントを開催し、新たな成長戦略と技術革新を披露した。

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 オンラインマーケットプレイスプラットフォームを提供するMiraklは2024年11月13日、日本で初めての自社イベント「Platform Pioneer」を渋谷QWSで開催した。同イベントでは、ボストン コンサルティング グループの平井陽一朗氏による基調講演(ITmedia マーケティングで後日レポート予定)や、イオンや阪急阪神百貨店の関係者が登壇するパネルディスカッションなど、多彩なセッションが展開された。

 本稿では、Miraklの製品アップデートを中心に、プラットフォームビジネスがもたらす可能性について、小売業やEC業界のマーケターが特に注目すべきポイントを紹介する。

ニトリやサツドラも導入 自社ECに「Amazonのような機能」を


Platform Pioneerのパネルディスカッションの様子。左がMirakl日本法人代表の佐藤恭平氏(画像提供:Mirakl、以下同)

 Miraklは「プラットフォームモデルはデジタルビジネスの未来」をビジョンに掲げ、マーケットプレイスを展開する仕組みをSaaS型の「Mirakl Platform」として提供する。マーケットプレイスとは、自社が展開するECサイトにセラーとして他社の参加を募ることで、品ぞろえを拡大できるビジネス形態だ。自社ECにAmazon.comや楽天市場のようなプラットフォーム機能を持たせることで、セラーには販売機会の増大を、買い手には利便性を提供できる仕組みと言える。Mirakl Platformを通じた2023年の年間流通金額(GMV)は86億ドルで、前年比50%増の記録的な成長を達成した。

 日本ではニトリやアイリスグループの公式通販サイトを運営するアイリスプラザなどの企業がMiraklを導入している。今回のイベントでは、2024年10月にMirakl Platformを導入し、自社ECサイトとマーケットプレイスの同時立ち上げを発表したサツドラホールディングスの大井拓人氏(執行役員事業戦略本部本部長)が登壇した。

 サツドラホールディングスは北海道でドラッグストアチェーンのサツドラを展開している。同社の計画は「ドラッグストアEC」「マーケットプレイス」「プライベートEC(定期購入・サブスクリプション)」の3つを柱に、実店舗、EC、メディアを統合した新たなビジネスモデルを構築するというもので、2025年以降の本格稼働を目指している。大井氏は、「マーケットプレイス事業では、ドラッグストア店舗で取り扱えない商品カテゴリーの拡充や、新商品のマーケティングテストの場としての活用が見込まれています。また、離島住民が大型店舗での買い物体験をオンラインで再現できる仕組みを構築し、買い物弱者への支援を実現します。さらに、地元商品の活用による『北海道No.1商品』の開発や地産地消を推進し、国内外への事業拡大を目指します」とコメントした。


サツドラホールディングスの大井拓人氏

マーケットプレイスを支えるエコシステム

 MiraklのソリューションはMirakl Platformの他、世界中の優良セラーのエコシステムである「Mirakl Connect」、商品のカタログデータを管理する「Mirakl Catalog Platform」、リテールメディアソリューション「Mirakl Ads」で構成される。

Mirakl Platform

 Mirakl Platformについては2023年だけで340以上の新しい機能が追加されているが、今回は「Mirakl Seller Communication」「Mirakl Delivery Manager」「Mirakl Insights For Marketplace」の3つの機能が紹介された。

 マーケットプレイスで成功するためにはセラーとの緊密な連携が欠かせない。Mirakl Seller Communicationは、毎月のお知らせ配送料金改定情報など、セラーに伝えたい情報をプラットフォーム内で迅速に伝えるためのツールだ。Mirakl Delivery Managerはセラーの配送品質サービスをリアルタイムで監視して分析し、必要があれば改善を提案する。Mirakl Insights For Marketplaceは、オペレーター(マーケットプレイス運営者)とセラーの双方のパフォーマンスを多角的に分析できるダッシュボードを提供する。


Mirakl Platform

Mirakl Connect

 Mirakl Connectには1万3000社の優良セラーが登録しオペレーターとセラーの連携をより簡単にして出店プロセスを効率化する。この中から自分のカテゴリーや戦略そして時期に合わせて好きなセラーにコンタクトして、自社のマーケットプレイスへの参加を呼び掛けることができる。オペレーターの利用は無料だ。


Mirakl Connect

Mirakl Catalog Platform

 Mirakl Catalog Platformはセラーと連携し、商品カタログデータの収集を効率化する。セラーはそれぞれ独自のやり方で商品のカタログデータを整理している。

 カタログデータはファイル形式もデータ量もまちまちで、同じ項目を指していても呼び方が違うといった問題があり、これをオペレーターが手動で統合するのは難しい。また当然データの欠落もある。そこでこのほど発表されたのが、AI搭載の「Catalog Transformer」だ。これを使うことで、データの変換、品質チェック、商品承認、データの充実、リッチ化を全て自動で行い、販売開始までの時間を大幅に削減できる。完成したデータはオペレーターのバックエンドのシステム(ERPやCRMなど)に自由に連携できるのも特徴だ。


Mirakl Catalog Platform

Mirakl Ads

 Mirakl Adsは、マーケットプレイスで広告収益を得るための完全セルフサービス型のソリューション。ECサイトを訪問する購買意欲の高いユーザーにセラーが自社の商品を広告としてアピールできる。また、ブランドや代理店も簡単に広告出稿できる。コンバージョンに近いところで商品を訴求できるのはリテールメディアの大きな強みだが、それだけでなく動画広告でエンゲージメントを高めたり、将来的にはオフサイト広告も展開し、外部からの集客も可能にすることを検討している。


Mirakl Ads

 Miraklシニアビジネスコンサルタントの内藤誓力良氏は「セラーを管理することは、(マーケットプレイスを使った)プラットフォームビジネスにとって非常に重要。セラーが変な動きをしてしまうと顧客体験を損ねてしまう。Miraklは顧客体験に軸足を置いたプロジェクト開発とアルゴリズム設計がなされている」と、各ソリューションの意義を強調した。


Miraklの内藤誓力良氏

Miraklを支えるAI技術

 Miraklを支えるのが、独自のAI技術である「AMI(Artificial Mirakl Intelligence)」だ。AMIの使命は「自動化」「マーケットプレイスの質を高める」「GMV(流通取引総額)と収益成長の加速」の3つ。Miraklのデータサイエンス & AIチームが40人体制で、顧客体験を強化するために製品の改善を進めている。チームを率いるのが、高瀬礼美氏だ。


Miraklの高瀬礼美氏

 高瀬氏のチームの現在の主な取り組みは2つある。1つが、Mirakl Catalog Platformの画像に関する機能強化。例えば商品画像の切り抜きや低解像度画像のアップスケーリング、さらには不適切な画像を検出して自動的に拒否するといったモデレーションができるようになる。季節に応じて背景を入れ替えるなどの画像生成にも対応する予定だ。

 もう1つの取り組みが、リテールメディアに関するアップデートだ。一般的に運用型広告では、よりパフォーマンスの高いクリエイティブに寄せるためにA/Bテストを行うが、テストの結果は季節の変動などにより永続するとは限らない。そこでMiraklでは「多腕バンディット」と呼ぶ手法で、より収益性を高めるアルゴリズムを採用している。

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