B2Bマーケターの「イマ」――KPI・KGIはどう設定? 他部門への関与度は?:B2Bマーケティングの「イマ」を読み解く【2024年版】
メディックスがITmedia マーケティングと共同で開催したウェビナー「2024年最新調査から読み解くBtoBマーケティングのイマ」の内容を基に、B2Bマーケティングの現状を理解するヒントとなるトピックスを紹介する。
デジタルマーケティング支援事業のメディックスは法人向け商材・サービスの売り手と買い手を対象に「BtoBマーケティングに関するアンケート調査」を実施している。2024年版調査は2024年3月18日から20日、売り手であるマーケティング担当者516人(直近1年以内にSaaS系商材のマーケティング業務に関与した258人と非SaaS系商材のマーケティング業務に関与した258人)と、買い手である製品選定者1030人(直近1年以内にIT製品・サービスの導入に関与した515人と工場用製品やオフィス機械・部品など機械・機器の導入に関与した515人)を対象に行った。
メディックスはこの調査の結果を基に2024年10月30日にウェビナーを開催。ここにITmedia マーケティング編集長も登壇し、メディックスの小松知志氏(ビジネスマーケティングユニット SaaS Growth Partners マネージャー)に、B2Bマーケティングの「イマ」について尋ねた。本連載ではその内容を紹介する。
今回の調査内容は多岐にわたる(※)が、ウェビナーでは以下の4つのトピックスに絞って議論が交わされた。
- マーケティング部門のKGIとKPI達成に向けた取り組み
- オフラインイベントへの回帰
- パートナー戦略の重要性
- 認知領域・ブランディングへの取組み
※詳細なレポートは関連リンクからダウンロードできる。
マーケティング部門のKGIとKPI達成に向けた取り組み
企業は何を事業目的と定め、そのために各部門はどのような目標を設定しているのか。他部門との連携が欠かせないB2Bマーケターにとって、KGI・KPI設計の在り方は特に気になるところだ。
今回の調査においてKGIとしてトップに挙がったのは「受注金額」(24.8%)で、「受注件数」(14.7%)がそれに続いた。一方、KPIも受注金額と受注件数(共に39.7%)がトップだったがこれに加えて、「SQL」(26.7%)、「MQL」(23.7%)も上位に挙がった。
近年「THE MODEL」型の組織づくりが注目されているように、部門を超えた連携が必要であるという認識は高まっている。しかし、実態はどうか。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスのそれぞれの領域におけるKGI、KPIの運用方法について尋ねたところ、各部門で共通のKGI・KPIが設定・管理されているのは全体の43%だった。これは2021年調査の結果と比べると高い数字だが、半数以上の企業ではいまだにデータ連携の取り組みが進んでいないことを示しているとも言える。
ここまでの調査結果を踏まえ、小松氏は「マーケティング部門は、より成果にコミットする時代に入っていく」と述べ、SaaSビジネスの評価指標として用いらfれる「Rule of 40」について言及した。これは、ARR(年間経常収益)の成長率と利益率の合算が40%を超えているかどうかということだ。「成長+利益」を重視する時代にあって、顧客獲得の起点となるマーケティングには、より事業に貢献する成果創出が求められるようになる。やみくもにリードの数を追い求めるだけでは不十分であり、獲得したリードが商談や受注にきちんとつながっているのかも意識する必要があるということだ。
成果創出のために自部門以外のKPIにも関与しなければならないとなれば、それを可視化するためにも部門横断的なデータ連携の仕組みが不可欠になる。だが、現実にはここでデータの分断が課題となる場面も多い。実際、データ連携への取り組みを実施している企業数について2021年と2024年の調査結果を比較したところ、「実施中」の割合は2021年の36.0%から2024年約は47.1%へと、10ポイント以上も伸びているものの、「検討中」は27.5%から18.8%にダウンしており、検討中以上の総量はほぼ横ばいだった。小松氏は「データ連携の必要性を認識して実行できている会社では導入が進んだ。一方で技術面のハードルや組織の風土などから断念した企業も一定数ある」との認識を示した。
データ連携が進まない企業は何が問題なのか。小松氏によればデータ連携を阻む主な理由は3つある。
1つ目がデータの分散。マーケティング部門は広告管理画ツールやGoogleアナリティクスなどの分析ツール、CRMやMAなどさまざまなツールを使っている。自社開発のツールもある。それぞれが必ずつながっているわけではなく、結果としてデータが分散している。
2つ目がセールスとの連携。部門をまたぐデータ基盤を整えようとしれば、共通の成果指標として中間KPIのようなものを設計する必要が生じるが、営業部門の理解を得ること自体が課題になるケースがよくある。
3つ目が技術面の課題。例えば広告にパラメーターを付けてリードと突合してMAに格納するといったことを考える企業は多いが、そこにクリックIDを付与したいとなると、フォームにJavaScriptを書いて埋めるなど、バックエントとフロントエンド双方でさまざまな改修が走ることになる。それに対応できるのか、できたとしてうまく運用が回るのかなど、技術に関する悩みは尽きない。
「これらの課題を乗り越えていくことは非常に重要なプロセス」と、小松氏は語った。
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