検索
連載

CDPの使い方には正解がない だから「コミュニティー」が必要だったトレジャーデータ流ユーザーコミュニティーの作り方【前編】

「Treasure Data CDP」ユーザーが主体となって活動するコミュニティー「Treasure Data Rockstars」はなぜ生まれたのか。コミュニティーマネージャーが解説します。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 はじめまして。トレジャーデータの伊藤かすみと申します。当社は米国のソフトウェア開発会社Treasure Dataの日本法人で、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の「Treasure Data CDP」を提供しています。私はそのTreasure Data CDPユーザーのためのコミュニティー「Treasure Data Rockstars」のコミュニティーマネージャーとして、企画・運営などの面から陰ながらコミュニティー活性化をご支援しています。

CDPとは何か? なぜユーザーコミュニティーが必要だったのか?

 米国の CDP Institute(外部リンク/英語)が定義するCDPの特徴は以下の3点です。

  • パッケージソフトであること
  • あらゆるデータを統合して、任意の期間活用できる顧客データベースであること
  • 他の分析システムやマーケティングツールからアクセス可能であること

 当社が提供する「Treasure Data CDP」はマーケティング、カスタマーサポート、営業など、企業内のさまざまな部門に存在する顧客データを収集・統合するサービスです。Treasure Data CDPに一元化された顧客データを活用してもらうことで、導入企業のさまざまな意思決定を支援し、顧客体験の向上、さらにはビジネス成長への貢献を実現します。

 Treasure Data CDPは日本も含め世界中の大手企業に導入いただいています。国内でのシェアは7年連続1位(ITR「ITR Market View:メール/Web/SNSマーケティング市場2024」CDP市場:ベンダー別売上金額シェア)を獲得しています。


Treasure Data CDPの概要(画像提供:トレジャーデータ、以下同)

 先述したように、CDPはマーケティング、カスタマーサポート、営業など、企業内の多くの部門をまたいで活用されています。また、CRMやPOS、Eコマース、コンタクトセンター、Webやアプリのログといった、ありとあらゆるチャネルとデータと接続します。

 商品やサービスのコモディティー化がますます進む中、顧客とのエンゲージメント向上のために良質な顧客体験を提供することは、企業にとって重要なテーマとなっています。

 トレジャーデータのユーザー会は2015年にユーザーを発起人として立ち上がりました。当時は顧客データ専門のチームを置く企業も少なく、そもそもCDPという概念がまだ十分に浸透していませんでした。CDPを扱う組織に十分な人材が配置されないことで孤軍奮闘している担当者が何か困ったことがあったときに気軽に相談できる場所が必要とされていたのです。

 しかし、顧客に関するデータを収集・統合するためのCDPはビジネスの根幹に関わる存在であり、これを活用して課題を解決する取り組みを対外的に公開すること自体にハードルのあるユーザーが少なくないのも事実です。そこで、各社の使い方の発表を中心に「ここだけの話」を話す場が生まれたわけです。


2015年10月に開催された初回のユーザー会の様子

 「顧客データ活用」と一言で言っても、その方法は多種多様です。現時点でTreasure Data CDPと直接繋がる製品は、今や190を超えています。それらとTreasure Data CDPを柔軟に組み合わせることで、思うままの活用が可能になります。一方、CDPは使い方が定義された他のアプリケーションと異なり、使い方に「正解」がありません。実際、ベンダーである私たちが考えてもいなかったような使われ方が日々生まれ続けています。

 そのため、CDP使いこなすのには想像力が求められます。そこでユーザー会は、幅広い顧客データ活用のユースケースやノウハウが可能な範囲でシェアされ、各参加者が自社に応用するためのヒントを得られる場へと、徐々に進化していきました。

 参加者は、眠っていた顧客データから価値を生み出す知恵を皆で共有して企業を変え、さらに日本、そして世界を変えよう、という熱い思いを持っています。ユーザー会は失敗談も含め何を言っても認めてもらえる場所、そして各々の目標や活動、知見を共有して、皆で高め合える場所を目指そうと、少しずつ活動を活発化させていきました。

コロナ禍を経て2024年3月に再始動

 しかし、2019年末に世界をコロナ禍が襲ったことで、ユーザー会もコミュニケーションを完全オンラインにシフトせざるを得なくなりました。

 オンラインになってもユーザー会の火が消えることはありませんでした。Zoomを活用してオンラインのイベントを開催し、ユーザーとトレジャーデータ社員の対談や一人一人の経歴を深掘りした動画を配信するなど、さまざまな取り組みを行いました。しかし、オンラインのイベントはどうしても双方向のコミュニケーションが生まれにくく、盛り上がってもその場限りとなりがちでした。オンラインのみでのユーザーコミュニティー運営の難易度の高さは、皆が感じていました。

 コロナ禍が収束に向かい、世界の各地域においてはオフラインのユーザーコミュニティーが徐々に形成され始めました。ちょうどその頃、ある一人のユーザーから指摘をいただきました。コロナ禍で既存のコミュニティーでのコミュニケーションが希薄になってしまっていたことに対してのご意見でした。

 それをきっかけに、日本でもコロナ禍で下火となっていたコミュニティーの在り方を見直すことになりました。そして、再度トレジャーデータのコミュニティーの目指す姿について社内で議論しました。その中で、「コミュニティーはユーザー同士の繋がりを促進することでさらなる課題解決に結びつけていただくための場であり、トレジャーデータがその活性化を支援すべきだ」との認識があらためて共有されました。

 そして2024年3月、ユーザーの横の交流を促進し、ユーザーとトレジャーデータとの連携を深める場として、オンラインとオフラインハイブリッド形式で、日本のユーザーコミュニティーの再始動を決定しました。

新生コミュニティー「Treasure Data Rockstars」誕生までの道のり

 コミュニティーは基本的にはユーザーが主体となる活動ですが、再始動に当たっては、のちに「Champ」と呼ばれるユーザー数名に働きかける形を取りました。コミュニティーの理念は特にChampとの議論が白熱した部分でしたが、ユーザー同士が繋がってノウハウを共有することで、皆で皆をさらに進化させていこうという思いを込め、「共に、繋がる。共に変革する。」に決定しました。

 新生コミュニティーの名称は「Treasure Data Rockstars(トレジャーデータ・ロックスターズ)」。強く、ひたむきに努力し、多大な功績を出し続ける人々としてのRockstarsという意味に加え、RockstarsのRockは「石=ダイヤモンド」、Starsは「星=輝く存在」とかけています。トレジャーデータのシンボルにはダイヤモンドのマークが使われています。ユーザーを「輝くダイヤモンド」になぞらえたのです。

 Treasure Data Rockstarsを象徴するビジュアルとしては、まだ見ぬ未来に向かって星のように宇宙を突き進むロケットを選定しました。


Treasure Data Rockstarsメインビジュアル

 今回は、トレジャーデータユーザー会が発足した2015年から再始動までの歩みを振り返りました。次回はコミュニティーのリーダーであるChampを設けた理由、運営の形式やその意図などについて、詳しく紹介します。

寄稿者紹介

伊藤かすみ

いとう・かすみ トレジャーデータ  Customer Marketing Manager 。デジタルエージェンシーやDMPベンダーで営業を経験後、2019年にトレジャーデータに入社。ユーザー向けトレーニングサービス「Treasure Academy」、ユーザー向けメディア「TreasureData User Engagement」、そしてユーザーコミュニティー「Treasure Data Rockstars」の運営に携わる。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る