「AIによる顧客体験(CX)向上」に懐疑的な見方が広がる――Qualtrics調査:「2025年消費者トレンドレポート」を発表
Qualtricsが実施した年次グローバル調査から見えたカスタマーエクスペリエンス(CX)の現状はどうなっているのか。
Qualtrics日本法人のクアルトリクスは、23の国・地域の23730人(うち日本は1199人)の消費者を対象にグローバル調査を実施し、その結果をまとめた「2025年消費者トレンドレポート」を発表した。本稿では主に日本の調査結果について紹介する。
良くない顧客体験、日本における理由の最多は?
優れた顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を提供することの重要性は言うまでもない、2025年に良くない顧客体験が2回に1回以上あると支出を減らすと回答した人はグローバルでは53%(2024年比プラス2.7ポイント)、日本でも50.0%(2024年比プラス11ポイント)と半数に達した。
良くない体験の理由を6個の項目で質問したところ、日本で最も回答が多かったのは「従業員とのやりとり」(54%)で、「提供サービスの問題」(36%)、「価格」(19%)などが続く結果になった。価格や「商品の欠陥・質」に関して日本は他の国・地域と比較しても不満を持っている人が少ない一方、従業員とのやりとりに関しては最も不満が多いことがうかがえる。
顧客は不満があっても口にしなくなっている
良くない体験は当然改善されなければならない。そのためには顧客の率直な声が企業に届く必要がある。しかし、自分の体験について共有したがらない消費者が増えており、特によくない体験についてのフィードバックのレベルは2021年以降、約12ポイントも減少している。
AIへの警戒心が強まる
AIの使用に関する消費者の肯定的感情はこの1年で低下している。AIを使用することに抵抗がない
人は日本では前年比マイナス10ポイントとなる45%、グローバルではマイナス11ポイントとなる46%となった。さまざまなタスクにAI を使用することに消極的になっており、航空券予約の安心感は2024年比12ポイント低下している。
企業が顧客とのやりとりの自動化にAIを活用する場合の懸念点1位は「インタラクションの質が悪い」(48%)だった。AIの回答は分かりやすい日本語に洗練されつつあるものの、望ましいニュアンスを組み込めていない、通り一辺倒で杓子定規な回答しかできていないと感じる人もまだ多いようだ。2位が「個人情報の利用」(47%)だ。パーソナライゼーションのためには個人情報が不可欠だが、それがどこでどう取得されているのか、不安に思っている人が多いようだ。「個人情報を収集した企業が、その情報を責任を持って使用している」と企業を信頼している消費者はわずか16%にすぎない。
クアルトリクスの久崎智子氏(XMストラテジー シニアディレクター)は「企業は苦境に立たされています。消費者はパーソナライズされた体験を求めているにもかかわらず、それを提供するために必要なインサイトを与えてくれなくなってきています。この現実は、消費者の信頼がいかに重要かということを新たな視点から考えさせられます。ブランドは、消費者の信頼を取り戻すために何をすべきかを見極めなければいけません。的外れなことをして、かえって顧客離れを招かないよう十分な注意が必要です」とコメントしている。
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