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広告制作に生成AI活用 成功企業が語る「100万ドルのコスト削減」だけじゃないメリットMarketing Dive

IT管理プラットフォームのAteraは、「Sora」や「Midjourney」などの生成AIツールを使用して、動画広告の制作コストを大幅に削減した。

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Marketing Dive

 生成AIへの関心と投資が急速に高まる中、マーケターは広告キャンペーンにAI技術を取り入れるための試行錯誤を続けている。例えば、Mondelez Internationalなど一部の企業は、広告代理店やコンサルティングファームと提携して、生成AIを駆使した大規模キャンペーンを展開している。また、フィンテック企業のKlarnaも、AIを活用してすでに数百万ドルのマーケティング費用を節約したと主張している。

 しかし、生成AIを活用したマーケティングの全てが成功しているわけではない。

トイザらスやGoogleは大炎上 それでも生成AI活用に取り組むべき?

 例えばToys R Us(トイザらス)は、OpenAIの動画生成ツール「Sora」を使ったブランドフィルムを発表したが、批判を受けることとなった。また、Googleは夏季オリンピックの前後にAI製品を宣伝する広告で物議を醸し、結局取り下げる事態に至った。これらの課題を考慮すると、生成AIのみを使用して動画広告キャンペーンを作成することは、リスクの高い試みといえる。しかし、ITマネジメントプラットフォームのAteraはこの挑戦に踏み切った。

 Ateraの新しい2つの広告は、ITマネージャーの夢が現実になるような場面を描いている。それは最初、例えば南の国で動物たちが楽器を演奏する中で働くことであったり、UFOが工場を破壊することであったりする。しかしその後、夢のようなシーンから一転して、彼らの真の願いであるAI搭載のオールインワン管理プラットフォームが現れる。約1分間の広告の後半には、Ateraのソリューションが稼働する様子が映し出され、デスクでパラシュートを装着するビジネスパーソンやノートPCを使う宇宙飛行士、ロボットのスピードボートの副操縦士など、ファンタジーの場面が交錯する。

 Marketing Diveは、このキャンペーンがどのように作られたのか、マーケターにとって生成AIがどのような意義を持つのかについて、Ateraのクリエイティブマーケティングマネージャーであるエラッド・ガイズラー氏にメールインタビューを行った。


――このキャンペーンにおいて、人間はどこからどこまで関与しましたか。

ガイズラー 人間による関与は、コンセプトの開発とスクリプトの作成から始まりました。私たちが基本アイデアとスクリプトを自分たちで作り上げた後、AIがコンセプトを映像に変えるプロセスを担いました。AIがビジュアル生成において重要な役割を果たしましたが、私たちも視覚的な仕上がりが期待に沿うよう、プロセス全体で積極的に関与しました。

 私たちのマーケティングチームは「Sora」「Runway」「Midjourney」「Topaz Labs」「Adobe Photoshop」「Adobe Premiere」などのAIテクノロジーを活用してこの動画シリーズを制作しました。そのため、各ツールの準備を整えた後は、私たちは手を引いて残りの作業はAIに任せました。

――この方法によって得られた時間とコストの削減効果について教えてください。

ガイズラー このAI生成キャンペーンを開始したことで、AIがいかにして制作期間を大幅に短縮し、創造性を高め、ビジネスをより機敏に機能させることができるかが示されました。構想からAIによる制作まで、全プロセスに費やした時間は約4週間です。そのうちシーンの選定と制作は約1週間で完了しました。私たちはプロジェクトを段階的に進め、制作会社のMamashおよびToo Short for Modelingというクリエイティブデュオ、そして社内のコンテンツ・クリエイティブチームと連携しながら段階的にプロジェクトに取り組みました。私たちは共同でスクリプトを作成し、クリエイティブディレクションを担当しました。この間、AIはコンセプトを実現する上で重要な役割を果たしました。

 この方法を採用することで、クリエイティブディレクションに磨きをかけ、細部にまで注意を払いつつ、プロジェクト全体を高品質に保つための時間と労力を費やすことができました。もし実際に動画を制作していた場合、費用は100万ドル規模に達していたでしょう。AIを活用することで、チームは高度なクリエイティブ作業とディレクションにより集中し、金銭的および時間的な制約を受けることなく全体的な品質を向上させることができました。従来の制作プロセスであれば、完了まで最低でも3〜4カ月はかかっていたでしょうが、今回は4週間で済みました。

――生成AIをクリエイティブプロセスで活用したいと考えているマーケターへのアドバイスはありますか。

ガイズラー 前例のないものを扱う際には、試行錯誤が避けられません。具体的で明確なプロンプトを提供することが重要です。しかし、マーケターがAIの可能性を受け入れ、大胆に探求すればするほど、テクノロジーはより高度で洗練されたものになります。

 また、AIと人間のスキルセットは大きく異なることも認識する必要があります。AIには人間的な感覚がないため、クリエイティブチームにはAIが最も得意とする作業を任せ、自分たちは自らの強みを生かす作業に集中できるようにすることをお勧めします。

――AI生成キャンペーンの実施に当たって、批判される懸念はありませんでしたか。

ガイズラー 実際には批判はありませんでした。Ateraでは、常にイノベーションの価値を追求しています。AIを活用した最初で唯一のIT管理プラットフォームとして、クリエイティブな分野でも限界に挑戦するのは自然な流れでした。リスクを取ることはイノベーションの一環であり、どのような結果であってもこの過程から学び、成長すると信じています。とはいえ、Ateraでは、責任あるAIの追求に終着点はなく、常に旅の途中であるとも信じています。

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