CMOはつらいよ マッキンゼー調査で浮かび上がるAI時代の厳しめな業務実態:Marketing Dive
生成AI、研究開発、価格戦略……。慢性的なリソース不足の中でマーケターの業務範囲はますます拡大している。
McKinsey(マッキンゼー)の最新レポート「Connecting for growth: A makeover for your marketing operating model」によると、マーケティングリーダーは生成AIに関連するものを含め、職務内容を拡大させている。一方で、組織が拡大する任務に対処するための十分な準備ができていると感じているリーダーはわずか27%にすぎない。
CMOの職務範囲は拡大する一方だが予算は……
CMOは長い間、組織からのプレッシャーと新技術の出現に対処しながら、より少ないリソースでより多くの成果を上げるよう求められてきた。McKinseyの今回のレポートもその事実を裏付けている。同レポートは北米と欧州の大手消費財および小売りブランドのマーケティング意思決定者(マーケティング責任者、最高成長責任者、最高ブランド責任者を含む)100人以上を対象に行った調査結果をまとめたものだ。
これまでCMOが担当してきた機能であるブランド構築は依然として最優先事項であり、回答者の87%がこれを挙げている。だが、自社がこの分野で成熟していると考えているのは58%にすぎない。過去数年間はファネル下部のパフォーマンスマーケティングへ過剰に傾倒していたが、2024年にはある程度の回復が見込まれている。McKinseyによると、コンテンツ、クリエイティブ、消費者インサイト、コミュニケーションなど、ビジネスの他の従来の分野は、現在、回答者の大多数によって必須事項と見なされている。
リテールメディアの台頭や消費者の変化と断片化に伴い、CMOの職務範囲は著しく拡大している。現在、購買者のインサイトとプロモーションは、マーケターの約3分の2(それぞれ63%と61%)によって主導されており、価格設定は35%が担当している。小売業、レストラン、消費財業界は、インフレの影響を受けた消費者の価格感度の高まりに直面しており、この要因はホリデーマーケティングキャンペーンにも影響を与えるだろう。
マーケティングの成功を追跡すること、そして最も重要なKPIを明確にすることも課題である。厳格なマーケティングパフォーマンス管理は8割の回答者が必須と見なしている」。だが、実行に自信を持っているのは4割にすぎない。成功の障壁としては、社内のサイロ化(36%)、マーケティング活動に必要とされる予算の不足(34%)、社内の人材不足(32%)、一貫性のない戦略的ビジョン(32%)などが挙げられている。これらの課題に対処しないブランドは新たな機会を逃す可能性があるだろう。
CMOの職務には、デザイン(46%)、セールスとEコマース(34%)、プロダクトイノベーション(24%)、生成AI(22%)も含まれる。生成AIは変革的な技術と位置づけられているが、約2年の誇大宣伝の後も実質的な成果は見られていない。
生成AIのユースケースについて尋ねられたマーケターの39%は、クリエイティブ効率の向上を挙げ、パーソナライゼーションとメディア最適化はそれぞれ28%が挙げている。5分の1は、検索やチャットなどのチャネルを通じて顧客体験の改善を試みており、22%はマーケティング業務の自動化を試みている。
以前の調査でMcKinseyは、生成AIがマーケティング領域で年間4630億ドル相当の生産性向上をもたらす可能性があると推定し、74%のCMOはこの技術をリスクよりも機会と見なしているとした。しかし、実際に生成AIの能力を構築しているマーケターはわずか5%で、ユースケースをスケールしているのは4%にすぎない。不適切なメッセージングや技術的なトラブルによって生成AIに対する消費者の反発も強まっている。
多くの業界関係者が生成AIのような新興技術の習得に取り組んでいる一方で、McKinseyが強調する広範な制約は依然として馴染み深いものである。予算の支援、才能、部門横断的な協力の欠如は、在任期間が短くなりがちなCMOにとって、長年の悩みの種となっている。
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