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インタビュー

マーケティングを「リアルタイム」に進化させるために何から始めればいい?Braze CEOビル・マグヌソン氏に聞く

2024年9月に米ラスベガスで開催されたBrazeの年次イベント「Forge 2024」の会場で、同社最高経営責任者兼共同設立者のビル・マグヌソン氏に話を聞いた。

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 LTV(顧客生涯価値)が経営の重要指標として注目される中、顧客とのエンゲージメント強化はマーケターにとってますます優先度の高いテーマとなっている。

 カスタマーエンゲージメントプラットフォームのベンダーとして知られるBrazeは、リアルタイムのデータ活用により個々の顧客にパーソナライズされた体験を提供し、メールやプッシュ通知、アプリ内メッセージなどの複数チャネルを統合して最適なコミュニケーションを実現する。Gartnerの「2023 Magic Quadrant for Multichannel Marketing Hubs(2023年のマルチチャネルマーケティングハブ分野のマジッククアドラント)」でリーダーに選出されており、金融、メディア・エンターテインメント、小売業、旅行・ホテル、外食産業など世界中でさまざまなブランドの成長を支援している。

 2024年9月に米ラスベガスで開催されたBrazeの年次イベント「Forge 2024」の会場で、同社最高経営責任者兼共同設立者のビル・マグヌソン氏に話を聞いた。


ビル・マグヌソン氏

リアルタイムでなければ意味がない

――データに基づくパーソナライズされた顧客体験は重要なテーマですが、他の多くのベンダーもそれをセールストークに使います。その中でBrazeが特別である理由とは何でしょうか。

マグヌソン 一つは、「今できることをきちんとやって、お客さまとの約束は全て守る」ということです。私たちは製品の完全性に重点を置いており、現状と将来のバランスを取りながら、どういう方向に進んでいくべきかをお客さまと共に考え、統計的に正しい数字を確認しながら現実的なステップを踏んでいます。その上で、お客さまのビジネスの目的に合うよう、非常に高いパフォーマンスを確保しながら、常に安定したサービスを提供していかなくてはいけないと考えています。

 もう一つは、規模感です。私たちのデータポイントは何兆にも上ります。私たちのお客さまはそのパワーと柔軟性を同時に使うことができるので、文字通りカスタムメイドの体験を顧客に提供できます。

――大規模なデータがあるからこそ顧客に対してなすべきことができるのですね。逆に言うと、多くの企業は顧客のことが分かっていないということなのでしょうか。

マグヌソン マーケターは直感的にはお客さまのことをよく理解しているのだと思います。ただし、システムにそれをさせるというのはまた別の問題になってきます。顧客理解のためのシステムを構築するには、データの側面から包括的な作業を大規模かつ整理された状態で行わなければいけません。しかも、リアルタイムにです。テクノロジーの問題では、このリアルタイムというのが、非常に大きな課題となっています。

――いくら顧客のことを理解していても、リアルタイムに動けなければ意味がないということですね。

マグヌソン Brazeにとってのリアルタイムとは、インタラクティブであるということ。モーメントをとらえて顧客と連絡を取り合うことができることを意味します。スマートフォンを使うとき、顧客はシステムが自分と対話することを期待します。 そして、アプリの多くのユースケースは、電車の切符を買うために列に並んでいるときのような、ほんの一瞬に生じることが多いのです。

 基本的にマーケティングの目的というのは顧客との人間的なつながりを強めることにあります。だからこそ、モーメントをしっかりとらえ、表現力豊かなフォーマットで体験をパーソナライズし、チャンスを確実にものにする必要があります。

――リアルタイムなマーケティングを実践するためにどのような手順を踏めばいいのでしょうか。

マグヌソン  顧客との関係性を強くするためのインタラクションをシステム上で自動化に行うため、まずは膨大なデータを収集して整理しなくてはいけません。

 次にコミュニケーションです。ジャーニーを細かく分割して実験を繰り返して最適解を見つけ出していくのが理想ですが、一人一人の顧客を理解してコンテンツを制作するとなると、膨大なパターンが必要になります。顧客は多様であり、それぞれに価値観も違いますから。

 これは特にグローバル企業にとっては重要な問題です。西欧の人に響くメッセージの伝え方は、価値観が異なる米国でのそれとは大きく異なってくるでしょう。

 最も共感を呼ぶ言葉を確実に言うためには、相手の特性に合わせて戦略を適応させる必要があります。そこで私たちは、柔軟にその瞬間にデータを取り込むためのデータ プラットフォームと、生成AIを活用してコンテンツを生みだすBraze Canvasに注力しています。

 信頼できる技術がないと、思考や創造性を歪めてしまいます。マーケターがそれを最優先できるようにしてあげるのがBrazeの仕事だと考えています。

―― AIで顧客体験を良くしていくことはもちろん素晴らしいことだと思うのですが、逆にあまりに先回りし過ぎて自分の欲しいものを言い当てられると、気持ち悪く感じることもある気がします。そういう消費者心理についてどうお考えですか。

マグヌソン 気持ち悪いと感じるのは、「どこからこんな情報が出てきたんだ」というときですよね。外部のデータを購入してマーケティングに使用するということは、昔から行われてきたことですが、やはりここでも大事なのは信頼だと思うのです。利用許諾の取れたファーストパーティーデータだけを使うなど、顧客に敬意を持って接し、人間らしい関係性につなげていかなくてはいけないと思います。

Brazeの過去、現在、未来

――Braze自身のこれまでのビジネスの軌跡について教えてください。

マグヌソン Braze自身はB2Bのビジネスであり、主にブレイズの自動化の利点が生かせるような、大量の顧客ベースを抱えるブランドと取引をしています。特にプロダクトレッドグロース(製品主導の成長)のモデルを使用する組織においては、Brazeの自動化のメリットが大きいと言えます。

 創業時はAppboyという社名でしたが2017年に現在のBrazeに改名しました。Brazeは金属の接合技術である「ろう付け」を意味する言葉で、文字通り2つのものを結合する存在でありたいという意志を込めました。もともとモバイルアプリを重視して創業しましたが、ブランドと顧客の間に強固な関係を築くというビジネスの根本的な問題に取り組むよう自分たちを変革をしてきたことを踏まえて改名に至りました。

 背景にはマーケティングがより洗練され、データドリブンになったことがあります。アプリの世界ではもともとダウンロード数やインストール数、アプリストアのチャートなどは把握していましたが、ダウンロードした人の日常的な活動についてまでは理解していませんでした。 また、長期的な、より高いレベルのLTVを見ることもできていませんでした。

 私たちはマーケティングの進化に合わせてより高度な機能をサポートするようになり、製品を進化させました。

――Braze自身もまたプロダクトレッドグロースを実践してきたというわけですね。

マグヌソン その通りです。そして私たちは自社でのマーケティングでもBrazeをフル活用しています。「ドッグフーディング」というものですね。私たちは、Braze SDKをダッシュボードに統合し、Brazeを使用しているお客さまに新しい機能への拡張を促進したり、イベントについてお知らせしたりしています。新機能の「Project Catalyst」をリリースする上でもこれが大いに役に立っています。

――根本的なことをおうかがいしますが、「良い顧客体験」とはどういうものでしょう。ストレスがないことが重要なのか、それとも感動的な何かを提供することが重要なのか。

マグヌソン  場合によると思います。単にA地点からB地点まで移動するとか非常に忙しい中でカロリーを摂取したいということであれば前者でしょうが、それがデートのときに受ける体験であればロマンチックに演出されている方がいいですよね、その時々でどちらが自社の顧客にしてるのか理解しながら進めていくことが重要です。

――Brazeは、お客さまのお客さまの課題解決も視野に入れて伴走しているわけですね。

マグヌソン  Brazeのお客さまには最先端を行くスタートアップもあれば大きな会社もあります。Forgeのようなイベントで、いろいろな事例を紹介しており、相互に学習していただくことも大事にしています。

――コロナ禍を経てオンラインチャネルで行動が定着したことで、顧客エンゲージメントの重要性はより高まっていると思います。今後の展望を聞かせてください

マグヌソン 人々の行動がますますモバイル中心になる傾向があるからこそ、モーメントを捉えることがますます重要になっているのだと思います。Brazeはブランドに対して、顧客にとって価値ある仲間であろうと話しています。 それを怠ることは顧客に対して失礼に当たりますし、逆に顧客の仲間でいるという意思を示すことは、より多くの人々に選択されるための要素となるのです。

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