生成AIで「購買グループ」にリーチ 「Adobe Journey Optimizer B2B Edition」の地味にすごいところとは?:ABMからBGMへ
「Adobe Journey Optimizer B2B Edition」は、B2Bマーケティングで注目される「購買グループ」にリーチし、グループのメンバー個々の役割に応じてカスタマイズされた体験を提供するソリューションだ。
アドビは「Adobe Journey Optimizer(AJO) B2B Edition」の提供を開始した。B2C向けのAJOは、CDP(顧客データプラットフォーム)に顧客エンゲージメント機能を統合し、リアルタイムで更新される顧客プロファイルに基づいて、マルチチャネルでパーソナライゼーションを実現するものだ。日本では2021年5月から提供されている。
AJO B2B Editionは2024年4月の年次イベント「Adobe Summit」で発表された。生成AIと連携して企業の「購買グループ(Buying Group)」にリーチできるのが特徴だ。
B2Bマーケティングで注目される「購買グループ」とは?
購買グループ(ビジネス上の問題を解決するために協力する人々)はB2Bマーケティングで注目される概念だ。B2Bでは複数人が意思決定に関与するため、マーケティング担当者や営業担当者は、意思決定者を特定する課題を抱えている。従来のリードジェネレーションは個々のリードに、ABM(アカウントベースドマーケティング)は特定のアカウントに焦点を当ててきたが、BGM(Buying Group Marketing)はこれらのアプローチを統合し、事実上の購買意思決定者として機能する購買グループに焦点を当てる。
AJO B2B Editionはインバウンドの情報とメールなどのアウトバウンドのエンゲージメントを統合し、主要な意思決定者、実務担当者、インフルエンサーなどから成る購買グループを特定。生成AIを使って個々のメンバーに合ったコンテンツを提供し、パーソナライズされた体験を実現する。また、購買グループとのインタラクションが発生するとエンゲージメントの評価と行動分析を開始する。さらに、マーケティングオートメーションツールである「Adobe Marketo Engage」と併用することで、リードを特定し、ナーチャリングして、購買グループに変えることができる。
AJO B2B Editionの主な機能は以下の通りだ。
- 購買グループの作成と編成:自社の製品ポートフォリオに合わせた購買グループを簡単に設定。「デマンドマーケティング担当本部長」「IT部門長」などのキーパーソンを追加することも可能。Adobe Marketo Engageと「Adobe Real-Time Customer Data Platform」と連携することでWebサイト訪問などのインサイトも取得できるため、顧客ライフサイクル全体においてこれらの購買グループが適格であることをデータで裏付けることができる。生成AIを活用して購買グループの役割やメンバーの割り当てに関するレコメンデーションを得て、不足しているメンバーのリストを作成して、広告キャンペーンなどを展開し、ターゲティング活動を支援することもできる。
- パーソナライズされたカスタマージャーニーの設計:購買グループが特定されると、企業は各メンバーにメールやWeb、チャット、ウェビナーなどさまざまなチャネルを通じてカスタマイズされたジャーニーを設計することができる。生成AIを搭載した会話型インターフェイスである「Adobe Experience Platform AI Assistant」は、カスタマージャーニーを設計する際に、ユーザーに操作方法のアドバイスやトラブルシューティングを提供する。また、各購買グループの契約更新などのライフサイクルステージを定義し、そのタイミングが来た時点でリアルタイムのインタラクションを開始する機能も近日中に提供予定だ。
- パーソナライズされたコンテンツの生成:生成AIと統合されたアセットライブラリ(「Adobe Firefly」や「Adobe Experience Manager Assets」からの画像を含む)を活用して、異なる購買グループに向けてパーソナライズされたメールコンテンツを生成することもできる。ドラッグ&ドロップで配置可能なコンポーネント、テンプレート、カスタムHTMLツールを使用して、製品への関心や職務内容に基づいてカスタマイズされたメールをすばやく作成。今後、生成AIでランディングページやデジタルフォームなどを作成できる機能も近日中に提供予定だ。
- 営業とマーケティングの連携強化:営業部門とマーケティング部門の双方がオンラインとオフラインのあらゆるチャネルで取り組んでいる購買グループへのアプローチを可視化し、ワークフローを合理化することで、より精緻な顧客エンゲージメントを可能にする。例えばマーケティング部門は、自動アラートを通じてAIが生成した要約、インサイト、推奨アクションとともに適格な購買グループの情報を営業部門に提供することで、より質の高いパイプラインと案件創出を支援できる。
- パフォーマンスの測定と最適化:ダッシュボードにより、どの購買グループの購買プロセスが最も効果的であるかを分析し、リソースの最適化を図りながら、マーケティングが収益に与える全体的な影響を分析できる。さらに、コンバージョン率が高い購買グループの特定など、AIを活用したインサイトをダッシュボード上で提供する機能提供も近日中に予定している。
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