「MMM」は日本のマーケターにどれだけ浸透しているのか?:今日のリサーチ
サイカは、マーケティングを統合的に分析する手法「MMM(マーケティングミックスモデリング)」の日本国内での利用実態を調査しました。
データサイエンスで企業のマーケティングを支援するサイカは、データドリブンなマーケティング分析手法の一つである「MMM(マーケティングミックスモデリング)」の日本国内での利用実態を明らかにすることを目的に、「MMM市場調査」を実施しました。
MMM(マーケティングミックスモデリング)とは?
MMMは、企業がマーケティング活動の効果を評価して最適な戦略を立案するための分析手法です。オンラインおよびオフラインの各種マーケティング施策に加え、競合の状況や天候などの外部要因も含めて統合的に分析することで、それぞれの要素が売り上げに与える影響を可視化します。MMMによってマーケターは最も効果的な施策を理解し、リソースを最適に配分することができます。
今回、本調査を実施する前のプレ調査としてマーケティング担当者125人にMMMの認知・導入状況を確認すると、MMMを「導入している」「知っている」「興味がある」と回答した人全て合わせても30.4%にとどまりました。MMMを認知していないマーケターが約7割いることから、マーケティング先進企業とそうでない企業のデータ活用における格差が拡大していると推測されます。
本調査では、MMMの導入経験者に導入時期を聞いています。2020年の導入者は6.1%なのに対し、2021年は16.3%と約2.7倍。2021年にMMMの導入数が急増したことが分かります。2020年にGoogleやAppleがサードパーティーCookieの廃止を発表し、2022年3月には日本でも改正個人情報保護法が公布されたことで、サードパーティーCookieの代替手段としてMMMの導入・検討が増えたことが一因と考えられます。MMM導入数は不十分とはいえ、2022年以降も市場は拡大傾向にあるようです。
MMMの導入経験者に活用の目的を聞いたところ、「マーケティング戦略策定に活用する」が41.8%で最多になり、「データを蓄積する」(35.7%)がそれに続きました。一方で上申や意思決定への利用は3割以下にとどまっています。
MMMの導入経験者および興味・関心層を対象に、MMM導入前に期待したことを尋ねたところ、「最終成果(KGI)に直接つながる直接効果や波及効果(間接効果)を加味した分析ができる」(25.6%)、「データを基に将来の最終成果(KGI)を予測できる」(21.9%)、「認知度や指名検索数などの中間成果(KPI)ではなく、売り上げや販売数などの最終成果(KGI)に対するマーケティング効果を可視化できる」(20.5%)といった回答が多く寄せられました。
MMM導入経験者には、MMM導入によって実現できたことも聞いています。「最終成果(KGI)に直接つながる直接効果や波及効果(間接効果)を加味した分析ができる」は24.1%で、約4分の1程度の回答者が実現できているようでした。一方で「データを基に将来の最終成果(KGI)を予測できる」は19.0%と2割に届かず、「認知度や指名検索数などの中間成果(KPI)ではなく、売り上げや販売数などの最終成果(KGI)に対するマーケティング効果を可視化できる」も17.7%と、先述した期待したほどには成果が出ていない様子が見て取れます。
MMMの導入経験者と興味・関心層に「MMMを導入する際に重視するポイント」を聞いたところ、「分析結果の納得感や実務での活用のしやすさ」が16.9%と最多でした。それに「提供企業のスキルの高さやマーケティング知識の豊富さ」(12.6%)が続きました。分析精度の高さや、マーケティング活動の実態に沿った分かりやすく納得感のある分析が求められていると言えそうです。
MMMにかける年間費用は「2000万円以上」(28.6%)が最多。次いで「1250万円〜1500万円」(11.2%)、「1000万円〜1250万円」(10.2%)が多い結果となりました。
MMMにかかる費用は導入時の不安材料にもなっているようです。MMMの導入経験者と興味・関心層に「導入時の不安・懸念点」を聞くと「価格(費用対効果)」(39.8%)が最も多い結果になりました。次いで「レポートの内容(分かりやすさや示唆・提案の充実性)」(30.3%)、「分析結果の納得感や実務での活用のしやすさ」(29.9%)といった回答が多く、分析結果を理解し、施策へ落とし込めるかという点でも不安を感じている様子がうかがえます。
これだけの費用がかかるMMMを導入者はどの程度、活用できているのでしょう。MMM導入経験者にMMMの分析結果をマーケティングにどのくらい活用できているかを聞いたところ、「活用できているが課題はある」(31.6%)と「ある程度活用できているが課題が多い」(35.7%)を合わせた67.3%が課題を感じていることが分かります。
MMMを現在導入している人の課題感を深掘りすると、「MMMで分析できない新たな課題が出てきている」が16.9%でトップでした。具体的には「予算配分の最適化はできるが、施策自体をどのように改善すればよいのかが分からない「広告出稿後、数年〜十数年にわたって最終成果(KGI)につながるブランド蓄積効果が分からない」などが新たな課題になっているようです。
MMMの分析結果を得た後に具体施策へ落とし込むフェーズと、ブランド蓄積効果の可視化に新たなマーケティングの課題があると考えられます。
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