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PR会社は広告代理店とどう違うの? そもそもPR会社って何? 失敗しない選定法は?B2Bマーケターのための「広報」入門【最終回】

連載最終回となる今回のテーマは「PR会社とは何か」です。PR会社の役割やPR会社との付き合い方など、筆者の経験を基にポイントを解説します。

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 マーケティング担当の皆さんは、コンテンツ制作はコンテンツ制作会社へ、イベント開催はイベント運営会社へ、広告出稿は広告代理店へと、それぞれ発注していることでしょう。では、PRは?

 最終回となる今回のテーマはズバリ「PR会社とは何か」です。わざわざそんなことを書くのは、PR会社が上記の会社とは位置付けが異なり、特にマーケティングとPRの兼任担当者には「わかりづらい」からです。

 PR会社は広告代理店と同一視されがちですが、実際には似て非なるものです。広告代理店とPR会社の違いを簡単にまとめると以下の表のようになります。


(画像提供:ビーコミ)

なぜ筆者はPR会社について書けるのか

 そもそもなぜ筆者はPR会社について書けるのか、理由は4つあります。本題に入る前に説明しておきましょう。

 まず1つ目は、数年間記者をしていた経験があることです。当然ながら取材の際に直接の接点となるのはPR会社であり、さまざまな取材提案をいただいた経験があります。PR会社のしつこい売り込みに困ったこともあれば、適切な資料を用意してもらって記事が書きやすかったこともあります。

 2つ目の理由に、企業の広報担当者としてPR会社に仕事を発注する立場だった経験があります。PR会社の選定に関わり、実際にPR会社と業務を行っていたのです。

 そして3つ目、現在自らPR会社であるビーコミを経営していることがあります。実際に他のPR会社とのコンペに参加して、競って案件を勝ち取ったことも、落としてしまったこともあります。

 さらに今は、企業とPR会社、メディアの垣根を超えて何か支援できないかと思っており、記者やPR会社の社長や社員、企業の広報担当の方と意見交換や交流を続けています。そこから現在のPR会社の傾向をざっくりと把握しています。

PR会社の幅広い業務内容

 PR会社とは企業や組織のPRをサポートしてくれる会社です。PRとはパブリックリレーションズ(Public Relations)の略で、メディアと企業の間を取り持つ広報代理店とも呼ばれますが、業務はそれだけではありません。

 PR会社はテレビで報道される不祥事などの記者会見を取り仕切ったり、ロビイングやパブリックアフェアーズ、ガバメントリレーションズなどと呼ばれる、社会や政府に対して働きかける活動を手掛けることもあります。例えば「スマホで領収書を撮影するだけで経費精算ができるサービス」や「免許やヘルメットなしで乗れる電動キックボード」などの普及を目指す上では、法律の壁を乗り越えなければならない場合があるからです。

 規模もまちまちです。総合PR会社としてさまざまな業務を行っている大手もあれば、個性豊かなブティックエージェンシー、個人コンサルタント、副業で広報を行うエージェンシーもあります。

 PR会社を分類すると以下の図のようになります。

 ビジネスの過程を川の流れになぞらえて「上流」「下流」という言い方があります。PR会社は戦略やコンセプトなどを考える上流業務を得意とする会社、どちらかというと下流に当たる現場の代行を得意とする会社に分かれます。長年の業界経験や独自のフレームワークを用いた戦略的なアドバイスを得意とするPR会社に「社内で執筆したプレスリリースを持って、記者を訪問してください」と言ったり、何度もメディアを訪問して掲載を獲得するタイプのPR会社に「業界の傾向や、効果測定について一緒に指標を作ってください」と言っても良い結果にはつながりません。

メディアリレーションをサポートしてくれるPR会社

 実際にはさまざまな機能を持つPR会社ですが、多くの人が思い浮かべるのはメディアリレーションをサポートしてくれる会社でしょう。この記事でも、メディアリレーション業務にフォーカスします。

 メディアリレーションと一口に言っても、得意領域はPR会社によって異なります。企業の経営戦略に合わせてメディア戦略を考える会社もあれば、取材の調整やレポートなど実務を引き受ける会社もあります。プレスリリースの代筆に特化して「PR TIMES」のような配信サービスに登録するところまでを担ったり、反対にプレスリリースは書かずにメディアとのつなぎに特化していたりする会社もあります。その他にも、OJT型と称してやり方を教えて伴走する、いわゆるオンラインサロン形式で会員に広報実務の相談に乗る、クライアントの名刺を持って社内に常駐本当にするなど、まちまちです。

 ここまで読んで、混乱された方もいるのではないでしょうか。しかし、何をやるかを細かく提示するのではなく、「月額定額でPRをやっておきます」というようなふんわりした形でサービスを提供するPR会社もあって、依頼した後でトラブルになったという話も多く聞きます。よくあるのは以下のようなトラブルです。

  • 当然入っていると思っていたサービスが提供されず、依頼すると追加料金が発生すると言われた
  • 記事が全然掲載されない
  • 納品物がないのに毎月お金ばかりかかる
  • 何をやっているのかが見えない。活動レポートを見てもよく分からない
  • クライアントの事業分野での経験がないのか、アドバイスが見当違い

●RFP/SOWが鍵 お互いにサービスと成果物について合意しよう

 これらを防ぐのがRFP(Request for Proposal)とSOW(Scope of Work)です。

 まずRFPとは、PR会社に提案を依頼する際の提案依頼書です。RFPを作成し、複数のPR会社のコンペを経て、自社が求める要件と一番合致する提案のあった企業に発注します。

 コンペは3社程度で実施するのが一般的です。自社の強みと顧客の希望が合わずにコンペを辞退する会社もあれば、そもそも方針としてコンペを受けない会社もあるので(ちなみにPR会社のコンペにおいては、一般的にコンペフィーは発生しません)、依頼時点では5〜7社くらいをピックアップすることになるでしょう。

 続いてはSOWです。PR会社との契約時にどこまでの業務を盛り込むかを決めておきます。そして、お互いにその内容について合意して、ズレないようにしておくわけです。四半期レポートの作成が必要か、クリッピングはどの程度までやってもらうか、プレスリリースの配信は何本までやってもらうか、記事の掲載目標は何件かなどを決めておくことで「やってもらえると思っていた業務が料金に入ってなかった」「メディアリストがもらえなかった」「定例の会議をやりたかったのに月に一度、こちらから言わないと訪問してもらえなかった」などのトラブルが防げます。

 ここまで読んで、「あれ? この話はどこかで聞いたことがあるな」と思った方もいるかもしれません。そう。システム開発の仕事に似た部分があると私は思っています。PR会社は人力で行うプロジェクトを管理して成果を上げる仕組みなので「要件定義」「人を管理する手法」「プロジェクト管理の能力」が問われるのです。

PR会社による支援は必須ではないけれど

 企業の広報業務において、いつどんな場合でもPR会社の支援が必要なわけではありません。企業内に大規模な専任チームを持ち、広報業務は全て内製でやっている企業もありますし、企業の公式発表は自社で行うもののメディアへの取材の働きかけはせず、広告と展示会に注力する企業もあります。

 PR会社に依頼した方がいいのは、自力で成果を出せないときです。ノウハウやリソースが足りず、頑張っても掲載記事が増えない、そもそも何がいけないのか分からないといった悩みを抱える企業は数多く存在します。新製品が出るとかIPOを視野に入れているとか、何らかの大きなイベントが将来に見えているのに自力ではどうにもできないといった場合こそ、プロのノウハウや知見が必要です。中長期的にPRスキルを底上げする目的でPR会社に依頼するという考え方もあります。


 以上で本連載は終了します。最後までお読みいただき、ありがとうございました。読者の皆さんとまたどこかでお会いできることを楽しみにしています。

執筆者紹介

加藤恭子

加藤恭子氏

かとう・きょうこ ビーコミ代表取締役。アスキー、ソフトバンクで編集記者を経験後、米国ナスダック上場の外資系IT企業でのマーケティング/PRマネージャーを経て独立。企業向けセミナーやビジネススクール/大学などのゲスト講師を務める他、主に国内外のテクノロジー企業が適切な相手に情報を届ける仕組み作りと実務支援を行っている。青山学院大学大学院修士(国際コミュニケーション)、日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー、日本マーケティング学会常任理事(PR担当)、サイバー大学客員講師(コミュニケーション論)。著書に「話題にしてもらう技術〜90.5%の会社が知らないPRのコツ」(技術評論社)、「デジタルで変わる広報コミュニケーション基礎」(宣伝会議、15章を担当)などがある。PR/広報について、「広報会議」「PR Week」などの専門メディアに寄稿している。


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