ブランドセーフティー(安全性)とブランドスータビリティー(適合性)はリーチと両立できる:「広告のムダ打ち」をなくすためにできること【第4回】
そもそも広告は表示されなければ始まりません。だからこそ「ビューアビリティー」が重要な指標となるのは前回説明した通りです。しかし、ビューアブルでありさえすればいいのかといえば、そう単純ではありません。
適切なコンテンツと一緒に表示されたコンテンツは注目され、見た人に良い印象を残し、より高い効果を発揮します。逆に、不適切なコンテンツと一緒に表示されたコンテンツは、狙ったターゲットに届かないだけでなく、ブランドイメージを毀損し、逆効果になり得ます。
ビューアブルであることは大前提として、ブランド価値を毀損することなく安全なコンテンツに広告を表示できるようには、ブランドセーフティー(安全性)およびブランドスータビリティー(適合性)を管理する必要があります。
JICDAQによる8つのブランドセーフティー認証基準
JICDAQ(一般社団法人日本デジタル広告品質認証機構)は、違法サイトや不当なサイトへの広告費の流出を防ぐことと不適切なページへの広告配信を避けて広告主のブランドを守り安全性を確保することを目的として、「ブランドセーフティー認証基準」を設けています。この認証基準では、「広告掲載不適切コンテンツカテゴリー」として下図のような8つのカテゴリーを設け、広告掲載を排除することを求めています。
また、広告主によってはブランド価値が毀損される恐れがある以下9つの「ブランド毀損リスクコンテンツカテゴリ」に関して、必要に応じて広告掲載を排除することを求めています。
- 違法・脱法行為に関する情報
- アダルトグッズ販売、露骨な性表現、過剰な肌露出、芸術的なヌード
- 暴力的な表現、醜悪・グロテスク、映画・ゲーム等の暴力表現
- 投機心を著しく煽る表現、非科学的・迷信な情報によって不安を与える表現
- ハラスメントを助長する表現
- 薬物に関する情報
- 「広告掲載不適切コンテンツカテゴリ」にあたるものに関する研究、論説、教育、啓発またはニュース
- 虚偽の情報により社会的混乱を生じさせるもの
- その他、ブランドへの広告主の考え方によってはリスクとなり得るもの
2021年よりJICDAQのブランドセーフティー認証を受けているDoubleVerifyは、広告を表示するコンテンツをブランドセーフティーとブランドスータビリティーの2階層で管理しています。JICDAQの「広告掲載不適切カテゴリ」はブランドセーフティーの階層、「ブランド毀損リスクコンテンツカテゴリ」はブランドスータビリティーの階層に、それぞれ該当します。
ブランドセーフティーでは、テロリズムなど、どのブランドにとっても安全でない特定のコンテンツを除外し、リスクの高いコンテンツから広告を保護します。対して、ブランドスータビリティーでは、適切なレベルでのブランドプロテクションを行いながらも、それぞれのブランドの適合性に沿った、より的確なアプローチを実現します。
DoubleVerifyは、ブランドセーフティーとブランドスータビリティーを合わせて100以上のカテゴリーを設定しており、ブランドのイメージに適した微調整が可能です。さらに、カテゴリーは45以上の言語にも対応しています。
リスクのあるコンテンツに広告を表示しないようにする方法として最も簡単なのは、リスクのあるコンテンツを掲載している媒体(Webサイト)の情報を集めて除外リストを作成し、それらの媒体には広告を配信しないことです。あるいは逆に、リスクのあるコンテンツを掲載する恐れのない媒体の包含リストを作成して配信先を限定することも考えられます。
しかし、実際には同じWeサイトの中にリスクのないコンテンツとリスクのあるコンテンツが混在していることが少なくありません。特に多くのオーディエンスが見込めるポータルサイトなどは多様なコンテンツを掲載しており、リスクの度合いもさまざまです。そうしたサイトを完全に排除してしまっては、リーチが不足してしまいます。安全性と引き換えに広告が届く人が少なくなってしまうのは、広告主にとって好ましいことではありません。
リスクを避け、かつリーチを確保するためには、配信可否はコンテンツごとに決める必要があります。しかも広告が配信されるのはRTB(リアルタイム入札)で落札した配信面になるため「これは入札しても大丈夫なコンテンツなのか?」を瞬時に判断し、リスクのあるコンテンツへの入札は避けなくてはいけません。
日々変わる基準に追随するために
メディア品質に問題がないと判断し、広告配信先として設定していても、そこに掲載される個別の記事内容によっては、ブランドとの適合性が失われてしまう場合があります。このような状況を回避するには、広告とコンテンツとの適合性を都度判定する必要があります。
最近の事例では、大手芸能事務所の創業者による過去の性加害問題がニュースになったことで、それまでリーチを稼いでいた同事務所所属タレント関連の記事が軒並みブランドイメージの毀損につながる可能性が高いコンテンツと判定されるようになってしまいました。
判定は単純なキーワードフィルターではなく文脈までニュアンスを読み取って行う必要があります。例えば同じ「アルコール」に関するコンテンツでも「アルコール濫用で傷害事件を起こした」という記事は広告掲載NGでも「アルコールの消毒効果に関する実験」の記事であれば問題ないかもしれません。DoubleVerifyではこうした分類を、AIだけでなく言語学者の知見も加えて行っており、100以上の言語を正しく判別できます。
こうした仕組みを活用することで、アドサーバは入札後に適合しない広告をブロックすることができ、さらにAuthentic Brand Suitabilityを活用することで、入札前に適用すれば不適切なカテゴリーのコンテンツに広告が配信されることを未然に防ぐことができます。また、実際に広告が配信されたコンテンツに対して、その配信が適切だったかどうかを検証し、フィードバックすることで、さらに精度が上がります。リアルタイムに入札・配信が行われるインターネット広告では、実際どこに広告が配信されているかを広告主が完全にフォローすることは物理的に不可能なので、こうした仕組みが重要になります。
DoubleVerifyの調査によれば、リーチの規模に対応したブランドセーフティー/ブランドスータビリティーの最適化を行わない場合、最適化を行った場合に比べて10億インプレッション当たり19万9000ドル(1ドル150円換算で約3000万円)の損失が発生する可能性があります。戦争やテロ、社会を騒がせる大きな事件が発生すると、損失はさらに膨らむ可能性があります。表示された広告が常にブランドを毀損することなくポジティブな効果を挙げるためには、ブランドセーフティー&スータビリティの検証もAlways On(常時検証)で行う必要があります。
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