Z世代が考える「日本が最も力を入れて取り組むべき課題」1位は「ジェンダー平等」――SHIBUYA109 lab.調査:今日のリサーチ
SDGsで挙げられている17の目標のうち、Z世代が考える「日本が最も力を入れて取り組むべき課題1位は「ジェンダー平等を実現しよう」でした。
SHIBUYA109エンタテイメントが運営する若者マーケティング機関のSHIBUYA109 lab.は15〜24歳のZ世代を対象に、インターネット調査とグループインタビューで「Z世代とジェンダー・多様性に関する意識調査」を行いました。
SDGs(持続可能な開発目標)として掲げられた17の目標(※)の中で「日本がより力を入れて取り組むべき課題」について質問したところ、1位は「ジェンダー平等を実現しよう」(42.9%)でした。グループインタビューでも、「ジェンダーに関する授業を大学で履修しているので身近に感じる」「生徒同士でジェンダーについてディスカッションする授業が人気になっている」などの意見が聞かれました。実際、定量調査でも「SDGsに関する授業を受けたことがある」は73.0%、「ジェンダーに関する授業を受けたことがある」は57.8%となりました。
※「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「全ての人に健康と福祉を」「質の高い教育を皆に」「ジェンダー平等を実現しよう」「安全な水とトイレを世界中に」「エネルギーを皆に、そしてクリーンに」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤を作ろう「人や国の不平等をなくそう」「住み続けられる街づくりを」「作る責任、使う責任」「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」「平和と公正を全ての人に」「パートナーシップで目標を達成しよう」
ジェンダーに関する不平等感や理不尽さを感じる場面は?
ジェンダーとファッションに関して「性別にとらわれずにオシャレを楽しみたい」と回答したのは71.7%、「ジェンダーレスにおしゃれを楽しむのはその人の自由だと思う」は78.9%、「すでに性別にとらわれずにオシャレを楽しんでいる」は58.1%でした。グループインタビューでも、「性別を気にしてファッションアイテムを購入することはない。着たものがたまたまメンズだということもよくある(女子大学生)」「大きめのサイズの方が着ていてかわいい場合はメンズを購入する(女子大学生)」「ウエストの位置がウィメンズの方が合うので女性用のアイテムを着ている(男子大学生)」など、性別関係なくファッションを楽しむ姿が見られました。
学校制服に関して、「制服の中で、男女ともにスラックス・スカートどちらの選択肢もあるのは良いことだと思う」と回答した人は77.6%。実情を調査した質問でも学生生活において、「女子生徒もスラックスの選択肢がある」は50.5%、「スラックスを着用している女子生徒がいる」は44.6%でした。
「これまで生きてきた中でジェンダーに関する不平等を感じたことがある」には49.4%が、「これまで生きてきた中で性別が要因の生きづらさや理不尽さを感じたことがある」という設問には38.5%の方が「とてもあてはまる」「ややあてはまる」を選択しました。
上記の設問に対し「とてもあてはまる」「ややあてはまる」を選択した対象者から、ジェンダーに関する不平等感や理不尽さを感じる場面について聞いてみると、「SNS上での発言やコンテンツの中で」が33.6%、「学校生活の中で」が30.0%、「家族や親せきとのやりとりの中で」が25.2%でした。グループインタビューでは、「共働きなのに母親の方が家事の負荷が高いのをみて、自分の家庭内で違和感」「飲食店で量が少なめのものを頼もうとすると『レディースセット』といった名前になっていて、(自分が男性なので)頼みづらい」などの実体験が話題に上りました。
「『男なんだから』『女なんだから』という性別『らしさ』を強要されること」に違和感・不平等感を感じる人は64.6%となっています。「ジェンダーに関して差別的・不適切な発言をしている人がいたら」不愉快だと感じる人は63.5%、「ジェンダーに関して差別的・不適切な発言をしないように意識している」は66.6%でした。
ジェンダーを含む価値観の多様性に関して、「価値観が合わない人がいるのは仕方ないことだと思う」という回答は79.1%、「価値観が合わない人とは戦わずに距離を置きたい」のは73.4%、「価値観が合わない人とも歩み寄っていきたい」という回答は半数以下の43.8%となりました。インタビューでは「考え方が違う人がいるのは仕方がないと思うので、各々が楽しく過ごせれば良いかなと思う」など、異なる価値観を持つ人に対して、距離を取ることで衝突を避ける傾向にあることがわかりました。
SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏は以下のようにコメントしています。
「『ジェンダー平等』は、Z世代にとって最も身近な社会課題です。彼らは無自覚なジェンダー差別で誰かを傷つけたり、自分自身の選択肢を狭めてしまうことが無いように、学校の授業で学んでいます。学校の制服に関する制度を変える提案をしたり、日々のコミュニケーションの中でも意識するなど、能動的にジェンダー平等を体現する実態も見られています。また、ファッションをはじめとしたジェンダーに囚われない消費は浸透しつつあり、個人の選択肢を狭めない『選択できる余白』を求めています。一方で、Z世代は価値観が合わない人に対しては距離を置くことで衝突を避ける傾向にあるため、ジェンダー意識のアップデートができていない環境やコンテンツは理由がわからないままZ世代から距離を置かれてしまうことが危惧されます。今後企業は、職場のユニフォームや売り場づくりなどにおいて、『こうあるべき』をアップデートしていけると、新たな働きやすさ・買い物のしやすさの創出ができるかもしれません」
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