検索
連載

現実味を帯びる「TikTok禁止」で得をするのは誰?Marketing Dive

米国でTikTokの売却を迫る法案が可決された場合、売却先候補のリストに影響を与える可能性がある。

PC用表示
Share
Tweet
LINE
Hatena
Marketing Dive

 大きな「もしも」が残っている。それは、TikTokを禁止する法案が可決されるかどうかだ。さらに、ByteDanceがTikTokの売却に同意するかどうか、そしてその高く評価されているアルゴリズムが取引の一部となるかどうかという点も気になるところだ。このニュースに対してTikTokは「法案が強行採決された理由はただ一つ、禁止するためだ」と声明を発表し、米国で1億7000万人のユーザーを擁し700万社の中小企業を支援するこのアプリが提供する経済的機会を議会が認識し、理解してほしいと述べた。

TikTokの売却先候補

※本稿は「今度の『TikTok禁止』はこれまでとどう違う?」の続きです。

 それでも、買収に興味を持ってすでに動き始めている者も少数ながら存在する。その中には投資エンタメ番組「Shark Tank」司会者で実業家のケビン・オレアリー氏やMicrosoftに買収された大手ゲームメーカーActivision BlizzardでCEOだったボビー・コティック氏も含まれる。下院で法案が可決されたことを受け、元財務長官のスティーブン・ムニューシン氏も、TikTok買収のために投資家グループを設立すると発表した。対米外国投資委員会の委員長も務めたムニューシン氏は、多くの投資を行っているLiberty Strategic Capitalの創設者であり、投資先の中にはサイバーセキュリティ企業もある。これにより、ムニューシン氏は強力な潜在的候補と見なされている。

 TikTokを買収しようとする者は、多額の資本を必要とするだろう。若者の間で人気があるこのアプリは自社の評価額を2680億ドルとしている。

 「あくまで、もしもの話ではあるが、ByteDanceが売却の決断を下すとしたら、相手はすでに勢いがある企業ということになるだろう。TikTokというアプリは文化、社会、人口統計、創造性、そしてこの国のほぼ半分の人々の日常生活のあらゆる側面に影響を与えているのだから」とプルクス氏は話す。

 2020年のトランプ政権下における禁止期間中、さまざまな企業がさまざまな理由でTikTok買収に名乗りを上げた。Walmartは広告事業の強化を望み、Oracleはデータサービスの強化に向けた支援を求めていた。その後、TikTokは強力な広告ビジネスを築き上げながら、ソーシャルコマースなどの分野にも進出し、巨大な企業へと成熟した。従って、今回の買収候補者の関心は、新たな形を取る可能性がある。

 広告業界の情報を提供するWARC Mediaのコンテンツ担当シニアバイスプレジデントであるデイビッド・ティルトマン氏は「今回の買収交渉は、新興企業のソーシャルネットワークにすぎないと思われていた2020年とは様相が異なるかもしれない」と話す。

 WARC Mediaの調査結果によると、TikTokに対する米国の広告費は2023年に87億ドルと推定され、2024年は109億ドルに成長すると予想されている。WARCのデータによると、2020年と2021年の米国でのTikTokへの支出はSnapへの支出よりも少なかった。TikTokの広範な成長により、買収に関心のある者は同社の将来をさまざまな方法で思い描くことができるとティルトマンは指摘する。同氏は、コマースなどTikTokの既存のビジネスのへの関心に加えて、AIに関する持続的な興奮と調和する可能性についての関心が高まると予想している。

 「TikTokを中心としたAIの展開は何か。私にはその答えがないが、それはこれから問われるべきことだ」とティルトマン氏は話す。

 Forresterのバイスプレジデント兼リサーチディレクターであるマイク・プルクス氏は、今回の禁止措置の背景を考えると、どのような買い手候補であっても、消費者のプライバシーの権利を守るという信頼性と社会的認知の両方を備えていることが決定的に重要だと述べる。

 「政府と消費者の双方が、客観的で誠実な第三者ブローカーとして信頼する企業でなければ、一つの問題を別の問題と交換するだけであり、どうかするとすでに存在する問題を悪化させることになりかねない」(プルクス氏)

TikTok禁止で多額の広告費はどこに流れることになるか

 規制を乗り越えた2020年以降、TikTokは大きく進化した。TikTokへの対抗策としてMetaはその年の8月にInstagramリールをローンチした。その後、いくつかの調査結果では、リール上のブランドビデオコンテンツがTikTokやFacebook上のそれよりも優れていることが示されている。

 もしマーケターが予算をTikTokから切り替えるなら、行く先はリールになるとプルクス氏は考えている。だが、政府の独占禁止法の考え方には逆行することになるかもしれない。

 「Metaが全てにおいてTikTokの後援者となれば、ユーザー数と広告収入の両方が実質的に増加すると見込まれるとので、企業としては良いこかもしれない。だが、それは市場から競争が失われるということでもある」(プルクス氏)

 YouTubeが収益化に取り組み続けている「YouTube Shorts」など、他の競合も登場している。WARCの Mediaの最近の調査結果によると、北米の広告主は2024年、ショート動画プラットフォームの中で、TikTok、YouTube、Instagramの順に予算を増やす計画を立てている。これは、TikTokが禁止されれば後者2つが恩恵を受ける可能性が高いことを示している。

 しかし、TikTokに対してどんなアクションがあろうと、マーケターは何らかの対応を取らなければならないだろう。Forresterのマーケティング調査レポートによると、米国のB2Cマーケターの67%が2024年に自社がTikTokへの投資を増やす計画であるとされている。政府の決断が迫る中、プルクス氏は想定される結果に対して計画を立て始めることを勧めている。

 「全てのマーケターは今、事態を想定して計画を立てる必要がある。もし計画を立てていないのな、彼らは既に遅れている」(プルクス氏)

© Industry Dive. All rights reserved.

ページトップに戻る