メールマーケティングのレベルを上げる4ステップ:B2Bマーケティングにおける正しいメルマガの設計方法【後編】
B2Bマーケティングにおけるメルマガ施策は簡単そうに見えて難しいもの。どのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。
※本稿はイノーバが2023年6月に実施したウェビナー「B2Bマーケティングにおける正しいメルマガの設計方法」の内容を書き起こし、再編集したものです。
前回「良いメルマガと嫌われるメルマガ 違いはどこにある?」では、読者がメルマガに求めるのは送り手都合のお知らせではなく、自分が読みたいコンテンツであり、メールマーケティングにも「顧客起点」の考え方が重要だと述べました。
しかし、顧客の課題や関心事の把握は難しいものです。顧客起点と言いながら、出てくるアイデアは単なるバズワードに乗っかっているだけだったり、自社商品の宣伝が先にきてしまったりしているケースは少なくありません。
ヒントはマーケティングオートメーションやインサイドセールスにあり
顧客の関心事を把握するためにはマーケティングオートメーションやインサイドセールスのコールから得られたインサイトを活用することをお薦めします。マーケティングオートメーションでアクティビティーを見れば顧客の興味関心を把握できます。イノーバでは業種別、課題別のWebページを用意した上で顧客にメールを送り、どの課題に関心を持って閲覧しているのかといったデータを見ています。インサイドセールスのコールは、「理想的には実施したい施策」です。コールの際に顧客の興味関心を把握して、タグ付けをしておき、関連情報を確実に届けられるようにしましょう。顧客の興味関心が分かれば配信内容はおのずと決まってきます。
メールマーケティングの運用レベルを上げるための4つのステップ
ここでメールマーケティングの運用レベルを上げるための具体的な進め方を、4つのステップで紹介します。
ステップ1:顧客の興味関心事の把握
まずは「受注した顧客は誰か」を確認し、「その企業はWebで何を閲覧したのか」をマーケティングオートメーションなどのツールで確認します。加えて、インサイドセールスや営業のヒアリング結果も参照します。さらに実施したいのはデプスインタビューです。顧客に直接会うことはとても有効な手法です。ハードルが高く感じるかもしれませんが、決まったやり方もあります。
ステップ2:配信内容の設計
顧客の興味関心事を把握したら、それを基に顧客ニーズに合わせた内容を設計します。その際に、顧客課題を解決する内容にすることが重要です。とはいえ、せっかくメールマガジンを送るのだから自社サービスの売り込みもしたいのが正直なところでしょう。こうした場合は情報提供の仕方を工夫します。例えば「ホワイトペーパーマーケティング、弊社で実施できます! 30万円です!」と送られてくると売り込みになってしまいますが、「ホワイトペーパーマーケティング、成功のポイント」といったテーマにすれば顧客の業務課題を解決するための情報提供になります。こうした情報提供メールの最後に「ホワイトペーパーマーケティングに興味があれば、弊社サービスもご検討ください」と、宣伝を添えるのです。役立つ情報が8割、売り込みが2割くらいの配分で送ることが望ましいでしょう。売り込みは、カレーライスについている福神漬くらいの分量にしておきましょう。
メールマガジンの仕様についてもある程度の目安があります。メールマガジンの内容は簡潔に、文字数は500文字以下が望ましいでしょう。短い時間で流し読みできるようにすることがポイントです。内容が面白ければもう少し長くても問題ありません。配信通数は最低でも週1回は送り、企業の存在を認知してもらう。推奨配信曜日は火曜日から木曜日。週末や週頭を避けることで、大量のメールに埋もれないようにします。
ステップ3:反応を見る、効果測定をする。
メールマガジンを運用する際の基本指標は以下の3つです。こうした指標を活用し、読者の反応を見て、効果測定をしていくのです。
- 開封率
- メールマガジンごとの開封の傾向を見る
- クリック率
- メールマガジンの中身がどの程度CTA(コールトゥーアクション)のクリックにつながったかを測る
- CVR(コンバージョンレート)
- CTAから実際にコンバージョンにつながったユーザー数を見る。メールマガジンの成果指標にしやすい
これ以外にも活用したい指標があります。例えば、ユーザーからの返信です。良い内容のメールマガジンを送ると時折読者から直接の返信でメッセージや問い合わせがくることがあります。そのため返信先を設定しておくことが大事です。読者アンケートもメールマガジンの改善に役立ちます。それ以外では、メールマガジンで誘導をかけたページからの遷移先など、関連ページリンクへのクリック数も確認することがお薦めです。
読者の反応を見るという面では、A/Bテストを実施するといいでしょう。テストリストを用意し、2パターンのタイトルでメールマガジンを送り、開封率が高いタイトルで本配信をするといった具合です。
ステップ4:改善
効果測定の結果を基に改善を実施する。改善の際に実施したい施策は以下の3つです。
- 開封率やクリック数
- 開封率が悪ければメールタイトルの改善、クリック率が悪ければメールマガジンの内容やCTAを見直すきっかけになる。
- ユーザーニーズの検証
- ユーザーからの反応や、再度の調査を通して、本当にユーザーが求めている内容のメールマガジンを出せていたかを振り返る。
- 社内レビュー
- 社内の複数名とメールマガジンの内容について相互レビューする。客観的な修正がしやすくなる。
ここまでメールマーケティングの重要性と施策を実施する際のポイントを紹介してきました。時代遅れとみなされがちなメールマーケティングですが、私に言わせればまさに今こそ有効なナーチャリング施策です。もちろん、成功するためには徹底した顧客視点が必要です。顧客との関係性強化ができるメールマガジンを設計するために本稿の情報を役立ててほしいと思います。
執筆者紹介
宗像 淳
むなかた・すなお イノーバ 代表取締役社長CEO。東京大学文学部卒業後、富士通にて北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の 経営管理等を経験する。MBAを取得するため、ペンシルバニア大学ウォートン校に留学後、 インターネットビジネスを手掛けたいという思いから楽天へ転職。その後、ネクスパス(現:トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当する。 2011年6月に株式会社イノーバを設立。代表取締役社長に就任。著書に「いちばんやさしいコンテンツマーケティングの教本」(インプレス)がある。
(構成:小笠原由依)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.