コカ・コーラに学ぶイノベーション スパイスの利いたコーラや涙の味がするコーラを開発する理由とは?:Marketing Dive
北米市場で3年ぶりに新フレーバーを市場投入するCoca-Cola。TikTokのEコマースマーケットでは、さらに変わった製品を実験販売する。
Coca-Colaは、マーケティング分野における生成AI活用の先陣を切った2023年に引き続き、2024年もイノベーションのペースを最高の状態に保つことを目指している。2024年2月7日に開催されたメディアイベントで同社は、北米市場において3年以上ぶりの新製品となるラズベリー風味の「Coca-Cola Spiced」を発表した。また、限定生産製品に特化したCreationsプロジェクトの最新版として、喜びの涙をイメージした炭酸水も発表。こちらはTikTokのECプラットフォームである「TikTok Shop」での独占販売が予定されている。
“創業137年のスタートアップ”の考え方
一方は永続的、もう一方は一時的なものと、2つのドリンクの背後にある戦略は異なる。だが、どちらを見てもCoca-Colaが新製品を迅速に市場に投入し、変化する消費者、特にデジタル志向のZ世代の嗜好に適応しようとしていることが分かる。過去には、Spicedのような主力製品を開発するのに1年以上かかったが、現在では、このプロセスがわずか数か月で完了すると、北米Coca-Colaのマーケティング責任者であるシャキール・モイン氏は述べている。
モイン氏は他の幹部らとのパネルディスカッションで、「特にマーケティング変革に関して、私が思うに、私たちは自分たちが創業137年のスタートアップだというマインドセットを持っている」と語り、「私たちの根本的な変革は、より大胆で、より迅速で、より少ない取り組みに焦点を当てることだ」と続けた。
Spicedの迅速な展開は、同社が2年前に立ち上げたプラットフォームであるCreationsから得た洞察によって支えられた。このプラットフォームは、宇宙や夢などのコンセプトに基づいた突飛なフレーバーに焦点を当てている。北米Coca-Colaのマーケティング担当バイスプレジデントであるスー・リン・チャ氏は、同社の広範な組織が「イノベーションを再学習する」上でCreationsは大いに役立ったとMarketing Diveのインタビューで語った。Coca-Colaはまた、マーケティング部門と研究開発チーム間のコラボレーションの合理化にも取り組んでいる。
「私たちはサイロを撤去した。今や私たちは“共犯者”であり、だからこそより楽しいことができる」と、チャ氏は言った。
どんな味かではなく飲んだ人がどう感じたかを伝えたい
2024年2月19日に店頭に並ぶSpicedは、いまどきの消費者の嗜好に合わせて通常バージョンと糖質ゼロバージョンを用意している。最大のライバルであるPepsiも、最近スーパーボウルに先立ってラスベガスの球体施設Sphereをジャックして「Pepsi Wild Cherry」をフィーチャーするキャンペーン展開するなど、フレーバー付きカテゴリーでのマーケティングを強化している。
プレス資料によると、「Spiced」というネーミングには、特徴的なコーラの配合に「ラズベリーとスパイスの風味からの爽やかなノートの一瞬」をブレンドするという意味が込められているが、人によってはその味は名前が示すよりもマイルドであると感じるかもしれない。パッケージは古典的なコーラのトレードマークを維持しており、鮮やかなピンクと紫のラズベリーの色合いが渦巻いていることで補完されている。缶は背が高く、より滑らかになり、プレミアムな位置付けを強調している。
「スパイシーではないが、これまで私たちが行った中でも最も大胆なイノベーションだ。私たちは消費者がユニークなフレーバーを試すことにますます意欲的であることを知っている」とチャ氏は語った。
Spicedのデビューに際しては、Snapchatのカスタムレンズなどを含むマーケティングキャンペーンが展開され、ただ見せるのではなく伝えるアプローチを目指している。この目的を達成するために、同社は数週間以内にニューヨークでイベントを開催する予定で、詳細については説明されなかったものの、没入型AI体験を用いて初めてSpicedを飲む人々の表情を表示するという。
「このキャンペーンでは、"伝える"と"感じる"が全てだ。私たちは消費者にCoca-Cola Spicedがどんな味かを伝えたいのではなく、Spicedを飲んだ人がどのように感じるのかを伝えることで、より本物のつながりが持てるようにしたいのだ」とチャ氏は語った。
涙の味ってどんな味?
Creationsの最新の取り組みは感情をテーマとしており、多幸感に満ちた涙を味で表現し、TikTokのEコマース市場への関心を捉えようとしている。2月17日の「Random Acts of Kindness Day(ランダムな親切行為の日)」に発売される「Happy Tears Zero Sugar」は、大学の合格通知を受け取った10代の若者や、肯定的なメッセージを送ってきた友人などの楽しい瞬間を描いている。プレスリリースによると、このコーラには涙の味を模した「塩辛いミネラルの飛沫」が含まれているという。
今回Creationsが提供するこの製品に対して、Coca-Colaはこれまでとは異なるアプローチを取っている。この涙味の飲み物は「ハイプキット」としてTikTokで販売されており、そこには涙を拭うためのティッシュや他の商品が同梱されている。このアイデアは、ソーシャルメディアコンテンツでは定番ジャンルの一つである「開封の儀」、つまり受け取った商品を一つ一つ開封して紹介するクリエイターがいることに着目したものだ。Happy Tears Zero Sugarは、缶の縁から一筋の虹色の涙が転がる銀色のパッケージでも目を引く。
Happy Tears Zero Sugarは過去のCreationsと異なり、米国と英国でのみ販売される。TikTokを所有するByteDanceはソーシャルコマースが進まない米国でShopプラットフォームの普及を目指している。インフルエンサーとのパートナーシップと親切な行為を促進するTikTokの影響力は、Coca-Colaの狙いを後押しする。
Creationsのグローバル・ブランド戦略をリードするオアナ・ブラド氏はパネルディスカッションの中で「規模ははるかに限られているものの、これは私たちが学ぶための素晴らしいやり方だ。私たちにとって少し異質なものだが、そこから学ぶことに本当に興奮している」と語った。
2022年以来8つの製品を製造しているCreationsは、リスクもあるベンチャーだが、その成果は現れている。Creations発の飲料は、平均して同社主力商品の約2倍若い消費者とエンゲージしているとブラド氏は言う。また、彼らの75%以上は、新規の消費者が占めるということだ。
「私たちはある意味、次世代にブランドをあらためて紹介している」とヴラド氏は言う。
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