「マーケティング」の定義が34年ぶりに刷新 旧定義との違いは?:デジタル化に伴うマーケティングの役割の変化を反映
日本マーケティング協会が新しい「マーケティング」の定義を発表した。
日本マーケティング協会は2024年1月25日、34年振りにマーケティングの定義を刷新したと発表した。デジタル化が進む中でマーケティングの担う役割も変化を遂げていることから同協会は1990年に制定され国内で定着しているマーケティングの定義を刷新するタイミングを検討し続けてきたが、2023年に新理事長として早稲田大学の恩藏直人教授を迎えたことを機に、新しいマーケティングの定義を制定するための委員会を発足。複数回の議論を重ね、今回の発表に至った。
新しいマーケティングの定義(2024年制定)は以下の通り。
(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。
注1:主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
注2:関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
注3:構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。
定義を変更した背景
日本マーケティング協会は1957年に設立された団体で、1979年に社団法人格を取得し、2012年に公益社団法人に認定されている。産学協同の下にマーケティングの理論と技法の研究、教育、普及のため活動し、日本におけるマーケティングのナショナルセンターとして位置づけられている。
1990年に制定されたマーケティングの定義は以下のようなものだった。
マーケティングとは、企業および他の組織(1)がグローバルな視野(2)に立ち、顧客(3)との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動(4)である。
1:教育・医療・行政などの機関、団体などを含む。
2:国内外の社会、文化、自然環境の重視。
3:一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民を含む。
4:組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動をいう。
今回マーケティングの定義を刷新した背景として同協会は、
- 社会全体でデジタル化が進む中でデジタル技術を用いた高度なマーケティング施策が広がり、新しいビジネススキームも台頭して企業と顧客の関係性が変化していること
- 地球環境への配慮が求められる中で企業は社会の持続可能性に貢献する組織である必要性があり、こうした今日的な諸課題を伴うビジネス上の環境変化に対して、マーケティングの担う役割も変化を遂げていること
を挙げている。
今回のマーケティングの定義の制作過程においては、世界各国のマーケティングの定義を調査した上で「日本独自の視点」を含めるべく、日本の社会、企業、顧客の状況に鑑みて委員で複数回にわたり議論し、「企業と顧客の価値共創」「ステークホルダーとの関係性の構築」「社会課題の解決」「持続的成長」などを共通キーワードとして挙げ、それらを基に、日本のビジネス慣習を念頭に日本独自の定義としてふさわしい文章に推敲した。
マーケティングの定義の制作委員会は理事長の恩藏氏をはじめ、以下11人で構成された(五十音順/敬称略)。
- 委員長
- 恩藏直人(早稲田大学教授)
- 委員
- 岩﨑 拓(博報堂 執行役員)
- 栗木 契(神戸大学大学院教授)
- 里村卓也(慶應義塾大学教授)
- 須永 努(早稲田大学教授)
- 平木 いくみ(東京国際大学 教授)
- 西尾 チヅル(筑波大学教授)
- 福島常浩(トランスコスモス上席常務執行役員)
- 星野朝子(日産自動車執行役副社長)
- 柳井 慎一郎(サントリー食品インターナショナル常務執行役員)
- 山口 有希子(パナソニックコネクト取締役執行役員CMO)
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