プログラマティック広告の不都合な真実 220億ドルの予算をどこで溶かしているのか?:Marketing Dive
全米広告主協会(ANA)は、プログラマティック広告費のうち、消費者にリーチできている費用はわずか36%にとどまっていると指摘している。なぜこうなったのか。
全米広告主協会(ANA)が2023年12月に発表したプログラマティック広告の現状に関する調査レポートによると、広告主がDSP(デマンドサイドプラットフォーム)に投資した1ドルのうち実質的に最終消費者にリーチできるのはわずか36セントで、残りは「コストの滝」に飲み込まれていることが明らかになった。
健全で透明性のあるプログラマティック広告戦略で大幅な効率向上を
広告支出の29%はアドテクノロジーの取引コストが占めており、35%は低価値なMFAサイトや測定不能なWebサイトへの露出のために費やされていた。MFAとはMade For Advertising(広告のために作られた)の略称で、センセーショナリズムやクリックベイトを使ってトラフィックを誘導し、プログラマティック広告費を吸い上げるWebサイトを指す。
調査レポートによれば、広告主はより健全で透明性のあるプログラマティック広告戦略を採用すれば、220億ドルの効率向上を実現できる可能性がある。この数字は、推定880億ドルと評価されるオープンWeb市場の4分の1に相当する。
ANAが2023年12月に公開したこのレポートは120ページ以上に及ぶ。これは2023年6月に同協会が発表したプログラマティック広告に関する調査レポートを補強したもの(関連記事「広告の15%はムダ打ち? プログラマティック広告とクリックベイト(“釣り”サイト)を巡る不都合な真実」)で、2023年6月のレポートで指摘したプログラマティック広告の透明性の問題を再確認している。
2023年12月のレポートには、チャネルに存在する無駄な広告掲載の量と、業界がそれを改善した場合に表れる潜在的な利益に関する統計が追加されている。ANAはレポートの中で、インクルージョンリスト(広告掲載をするのに安全な高品質なWebサイトをまとめたリスト)とイクスクルージョンリスト(広告掲載を避けたい質の低いWebサイトをまとめたリスト)の採用、SSP(サプライサイドプラットフォーム)の最適化、よりプライベートなプログラマティックマーケットプレース取引への注力といった、より詳細なアドバイスも掲載している。
MFAへの対抗策は進んではいる。2023年9月と同年10月に実施した調査では、マーケターの21%がプログラマティック広告キャンペーンの一環としてMFAアクティビティーを追跡しており、33%が今後追跡する予定であることが分かった。代理店もこの分野での取り組みを強化している。WPP傘下のメディアエージェンシーであるGroupMは2023年8月、プログラマティック広告サプライチェーン管理会社のJounce Mediaと提携し、クライアント向けにMFAに対する保護を強化した。
それでもMFA広告枠の供給は増加傾向にある。調査に参加した広告主は、平均してプログラマティック広告予算の約15%をMFAに費やしており、ジャンクドメインに42%もの予算を投じた広告主もいた。
ANAは、プログラマティック広告に資金を費やす場所を統合するという潜在的なニーズにも注目している。つまり、より少数のパートナーと協力することで、広告で埋め尽くされるWebサイトに広告が吸い上げられるリスクを削減しようというわけだ。この問題は、業界の知識ギャップに起因する部分もある。自社ブランドのプログラマティック広告キャンペーンに使用されるWebサイトの数を追跡していると回答したマーケターは、わずか半数程度(46%)だった。
ANAの推計によると、平均的なキャンペーンは4万4000のWebサイトで実施されており、その効果は低減している。ANAは数千の質の高いWebサイトにリーチする75〜100の信頼できる広告販売者と協力することで、不正なトラフィックや閲覧不能なトラフィックを減らしながら、望ましい成果を達成できると述べている。以前の調査レポートでは数百のWebサイトで十分だとも述べていた。
ANAのプレジデント兼CEOのボブ・リオディス氏は、プログラマティック広告の原動力となるデータのスチュワードシップ(運用管理)と理解において、マーケターがより積極的な役割を果たすべきだと指摘する。
「マーケターはデータ管理を最適化するスキルを十分に備えていない。さらに問題なのは、ログレベルのデータのセキュリティを確保するスキルも不足していることだ。これは効果的な意思決定とプログラム活動を通じた成長を促進するためのには必ず通らなければならない道だ」(リオディス氏)
これらの洞察を明らかにするためにANAは、さまざまな業界の21人のマーケターと協力した。プロジェクトには、食品、飲料メーカーMondelez International、飲料メーカーMolson Coors Beverage、薬局チェーンWalgreens、保険会社State Farmなどが参加した他、追加調査の際にはアドテク企業やサプライチェーン企業も協力している。
© Industry Dive. All rights reserved.