キリンビールが生成AIをマーケティングに実装へ 商品開発の高速化に向けた具体的な活用方法とは?:「AIペルソナ」を導入
キリンビールがマーケティングに生成AIを活用する実証実験を始めた。「AIペルソナ」を構築することで商品開発の高速化を目指す。
キリンホールディングスのグループ会社であるキリンビールはこれまで、新商品開発の際に顧客インタビューを実施してきた。集めた“顧客の声”を基に商品コンセプトを検討するのだが、インタビューにかかる時間は平均50時間。そのせいで開発期間が長期化する課題を抱えている。
そこで同社は、「キリン 氷結」ブランドをはじめとしたRTD(Ready to Drink:栓を開けてそのまま飲めるアルコール飲料)商品の新商品開発工程において、生成AIを活用して構築した「AIペルソナ」をマーケティングに導入する実証実験を始めた。
キリンの課題意識とは?
キリンビールでは新商品を開発する際に「コンセプト仮説」を立てた後に顧客調査を実施するという手順を踏んでいる。
例えば、夏向けの商品開発をする場合、まずは過去のデータなどを基に社内で議論し、「かんきつ系」を押し出すといったコンセプトを仮定。そのコンセプトを実在する顧客に提示して意見を集める。この過程を繰り返してブラッシュアップしていく。
複数人の顧客にインタビューを繰り返すと、かかる時間は合計で約50時間に及ぶため、商品開発の高速化が課題になっていた。
AIに顧客の声を学習させ、対話する
そこでキリンビールは、過去のインタビューなどで得たデータを生成AIに学習させ、キリン 氷結ユーザーのペルソナを構築する取り組みを開始した。
コンセプト仮説を立てる際に「30代スポーツ好き」「20代酒好き」といった属性を持つペルソナを設定。生成AIに「夏に飲みたいかんきつ系フレーバーは?」のような商品コンセプトや味に関する質問をして、疑似的な顧客の声を出力させる。
こうしてAIペルソナとやりとりする中であらかじめ洗練させたコンセプトを、実在する顧客に提示して意見を求めるという手法を検証していく。
生成AIをマーケティングに活用する手法はOpenAIのAIチャットシステム「ChatGPT」登場から注目を集めている。ペルソナ生成の他にも、コンテンツの自動生成やデータ分析、アイデア出しなど、さまざまな活用アイデアが提唱されている。
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