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Xの自然流入がInstagram超え? イーロン・マスク氏が自慢げに示すデータの正しい読み方Social Media Today

イーロン・マスク氏の奔放な発言の数々は広告主のX離れを加速させている。しかし、ユーザーの利用は減っていないと示唆するデータもある。それらをどう解釈すればいいのか。

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 Xの利用状況やイーロン・マスク氏の下でXが成長しているか否かについては、いくつかの矛盾した情報が飛び交っている。

 Xの使用率が大幅に減少し、アプリのダウンロード数も減少しているという報告もあれば、実はXのトラフィックとエンゲージメント数は前年比で上昇しているという報告もある。

マスク氏が示した一見説得力ありそうなグラフ

 旧Twitter時代は実際の利用状況を測定する手段として、法的に義務付けられた四半期ごとの報告を信頼することができた。しかし、買収で上場廃止となり私企業となったXにはそのような報告義務はない。故に、現在のXの利用状況に関し、私たちはマスク氏とXのCEOであるリンダ・ヤッカリーノ氏に実際の洞察を提供してもらうしかない。

 だが、これまでの報道を見る限り、何が正しいのか、何が真実なのか、何が事実に即しているのか、まるで分からない。まず、マスク氏自身がXのトラフィック急増の指標として最近公開したグラフを見てみよう。

 何となく説得力ありそうなグラフで、Xが全体的な利用率でInstagramに勝っているように思うかもしれない。

 だが、実際にはそうではない。

 Instagramの月間アクティブユーザー数は10億人以上であるのに対し、Xのそれは5億人だ。単純に訪問者数だけ考えて、XがいきなりInstagramに匹敵する可能性は極めて低い。

 そもそもこのグラフを見ても、ここにある数字が実際に何を表しているのかがはっきりしていない。

 このグラフの数字は、SEMRush(外部リンク/英語)によるWebサイトのトラフィックデータに基づいている。SEMRushはドメインへのトラフィックを測定して競合と比較分析できる検索エンジンマーケティングツールで、この場合はx.comとinstagram.comを比較している。つまり、アプリではなくWebブラウザ(PCまたはモバイル)での訪問者を測定している。Xの利用率の80%はアプリ経由だし、Instagramに至っては97%がそうだ。言い換えれば、どちらのプラットフォームにおいても、wwwドメイン経由でアクセスしているユーザーはごく一部なのに、大半を占めているアプリ利用者はこのグラフに反映されていない。

 また、Xの投稿はGoogleにインデックスされるが、Instagramの投稿の大半はインデックスされていないという事実がある。だからXがWebサイトへのアクセスで上回るからといって少しも驚くところはない。どちらかといえば、これまでXがInstagramを下回っていたことの方が懸念されるくらいだ。いずれにしてもこのクラフによってXがInstagramより全体的な利用が多いことを意味するとほのめかすのは正しくない。

 これと同じ尺度は、Xのトラフィックが増加していることを示唆するさまざまな報道で使われている。

 SEOツールの「Ahrefs」のデータを使った別のレポートによると、Xのトラフィックは前年比で22.3%増加したという。AhrefsもSEMRushと同様にアプリの使用率データにはアクセスできないため、こちらもやはりドメインのトラフィック、つまりデスクトップやモバイルデバイスのWebブラウザ経由でXを使用する人々のデータのみに基づいている。全体の5分の1程度にすぎないデータの中でXの使用量が増えているように見えるだけだ。これはマスク氏の投稿とそこに寄せられるコメントについて特に言えることだが、いずれにせよ、アプリ利用データがなければ、この種の洞察はX全体の利用状況を示す指標として、ほとんど意味がない。

 また、ヤッカリーノ氏は公式ブログ(外部リンク/英語)で、Xには1日当たり150万人の新規登録があると主張しているが、これは毎月だと4500万人の新規ユーザーが増えていることになる。この数字はXの発表する公式なユーザー数に反映されていないし、たとえ毎月4500万人の新規登録が本当だとしても、その新規ユーザーが定着しているわけではないなら、Xの成長を強調するのに最適な統計とは思えない。

 最後に、マスク氏はXが1年を通して累積ユーザー秒数でさまざまな新記録を達成したと報告しているが、この数字はさまざまな業界専門家から批判されている。マスク氏はこれこそが真のエンゲージメントを測る最も正確な指標だと言うが、批評家たちは、この指標で示唆されるのはマスク氏の最も熱心なファンが全ての時間をアプリに費やしているということだけであり、より一般的な利用傾向を示すものではないと主張している。

 まとめると、Xが全体的に使用率を高めていることを示唆する明確な証拠はない。また、たとえユーザーが10億人に増えたとしても、それ自体が問題ではなく、重要なのはターゲットオーディエンスがそこで活動しているかどうかである。従って、大雑把に言えば、マスク氏のリーダーシップの下でXが飛躍していようがいまいが、個々の広告主のマーケティングプランにはあまり関係がないかもしれない。

 しかし、プラットフォームの持続可能性という点では重要なことであり、マスク氏のXの将来に影響を与える可能性はある。その点、数値が急激に減少してはいないという事実を見れば、全体としてXはまだ十分に機能していると言うべきかもしれない。ただし、結局のところ現在受け取っているデータだけ見ても、Xのパフォーマンスの実態はよく分からない。

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