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広報効果を「逆算」と「分解」で測る――脱広告換算のための一つのアイデアB2Bマーケターのための「広報」入門【第4回】

前回に引き続き、広報マーケティング兼任者が見誤りやすいポイントの一つである広報の成果の測定方法について解説します。

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 前回「広報の成果を『広告換算』するのが決定的に間違っている理由」では、広報の効果がなぜ広告換算では測れないのか、「バルセロナ原則3.0」を紹介しながら、効果測定時に考えるべき原則を整理しました。今回は、筆者が推奨しているやり方を、例を挙げながら紹介します。

広告換算の代替として筆者がお薦めする方法

 先に答えを言ってしまいましょう。広告換算の代替として筆者がお薦めするのは、掲載記事を複数の指標でスコア化して記録する方法です。記事を掲載してほしいメディア(例えば見込み客が読んでいるメディア)に載ったら3点、自社が記事のメインで取り上げられたら3点、言及されただけなら1点、好意的な文脈なら3点、中立なら2点……などと決めておいて、その数字を足し合わせるのです。

 これをやることで、前回言及した広告換算の致命的な欠陥である金額と実際の影響力のギャップを埋めることができます。広告費が高い大手メディアに大きく取り上げられても自社としてあまりメリットのない場合は小さなスコアになりますし、広告費用が割安でも記事掲載がその企業にとって大きな意味を持つ業界誌に掲載された場合は大きなスコアになります。このやり方なら掲載記事の与えるインパクトを広告換算よりも正確に出せると、国内外のさまざまな企業の広報担当者やPR会社の方々との間で、よく話題になります。

目指したいのは逆算と分解

 とはいえ、成果の記録はプロセスのごく一部でしかありません。全体像を見ていきましょう。目指したいのは「会社全体の目標、部署の目標を分解し、広報としての目標を定め、それが達成できているかどうかを測定し、記録する」ということです。

 マーケティング業務においては、「○○億円の売り上げを達成するために××件のリードを営業に渡す」というようなKPIを設定していることでしょう。これを広報業務にも応用するのです。

 例えば、露出先を「購買層となる中堅中小企業のマーケティング部門の責任者が目を通すマーケティングの専門メディア」などと定め、「自社が出したいメッセージが入った記事が××件掲載される」ことを目指します。それを達成することでどうなりたいのか、目標達成のため具体的にどんな活動が必要になるのかと、やるべきことが明確化されるでしょう。

 もちろん、ただ計画を立てて終わりではなく、進ちょく状況が分かるような活動と結果の記録を残すことが重要です。

では、どうすればいいのかを見ていきましょう。

ファーストステップでやること4つ

 最初にやってほしいことは以下の通りです。

  • 自社と競合他社、マーケットの現状把握
  • 目標の設定
  • 計測すべき指標の確認
  • 活動計画の策定と実施
図

自社と競合他社、マーケットの現状把握

 まずは現状の把握です。今どんな状況なのか、データを取り、記録する。これは活動後の差異を見るためのものです。現在の掲載記事数、現在所有していて連絡のつく(メールが相手に送れる、電話が繋がる)記者の連絡先(いわゆるメディアリスト)の数、直近の取材数などがこれに当たります。

 次に、競合他社の記事を把握します。活動内容(取材、プレスリリース、記者説明会など)、掲載数、掲載媒体、執筆記者名、記事のトーン(肯定的か否定的か中立か)を測定し、自社との差異を知っておきます。インターネット上の公開情報を元にするだけでも、どこでPR会社を変えたのか、いつ記者説明会をしたのか、どのくらいの頻度でプレスリリースを出しているのかなど、分かることは多いものです。

 言わずもがなですが、マーケットの状況も理解しておきましょう。調査会社の資料やキーワード検索などが役立ちます。

目標の設定

 その後がゴールの設定です。目標数字は今の状況を見て、実現できそうなものをセットしましょう。

 そして、そこに向かうための小さな目標を、期間を区切ってセットします。例えば、全く記事掲載などもなく当該分野を担当する記者の連絡先も持っていないという、まさにゼロから取り組むのなら、まずは行動目標を立てる必要があります。具体的にはメディアをリスト化する、プレスリリースを5本書く、公式SNSアカウントに投稿するなどです。

計測すべき指標の確認

 目標を達成したことがどうしたら可視化させるかを考えて指標を決めます。ここは一番難しいところです。ある程度の慣れも必要です。最初のうちはうまくいかないこともあるでしょう。その場合は仮に決めておきましょう。これが、この記事の最初に触れたスコアの話と連動します。

活動計画の策定と実施

 目標を達成するための活動の計画を立て、実施します。


 何となく分かったような気になったかもしれませんが、実際問題として現状を理解し、この流れを活動に落とし込んで目標を立てるのは簡単ではありません。時間もかかります。残念ながら多くの場合は途中で壁が立ちはだかり、「迷子」になります。次回はその主な理由と解決のヒントを見ていきます。

執筆者紹介

加藤恭子

加藤恭子氏

かとう・きょうこ ビーコミ代表取締役。アスキー、ソフトバンクで編集記者を経験後、米国ナスダック上場の外資系IT企業でのマーケティング/PRマネージャーを経て独立。企業向けセミナーやビジネススクール/大学などのゲスト講師を務める他、主に国内外のテクノロジー企業が適切な相手に情報を届ける仕組み作りと実務支援を行っている。青山学院大学大学院修士(国際コミュニケーション)、日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー、日本マーケティング学会常任理事(PR担当)、サイバー大学客員講師(コミュニケーション論)。著書に「話題にしてもらう技術〜90.5%の会社が知らないPRのコツ」(技術評論社)、「デジタルで変わる広報コミュニケーション基礎」(宣伝会議、15章を担当)などがある。PR/広報について、「広報会議」「PR Week」などの専門メディアに寄稿している。


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