インテージは、全国約6000店舗で収集している小売店販売データ「SRI+(全国小売店パネル調査)」を基に、日用消費財の中で何がより売れたかを推定販売金額の伸びから振り返る「2023年、売れたものランキング」を発表しました(データは10月分まで使用)。6月に発表した上半期ランキング(データは5月分まで使用)では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げられたことを背景に、医薬品などの売れ筋の変化が見られました。年間ランキングではさらに「猛暑」も大きな変動要因となっていることがうかがえます。
1〜30位の結果は以下の通りです。
売り上げ増3位は「検査薬」で2位は「口紅」 1位は?
年間1位となったのは「強心剤」でした。前年比183%と、2倍近くの売り上げを記録しています。2位は「口紅」(164%)、3位は「検査薬」(159%)でした。
トップの「強心剤」の他にも、「ビタミンB1剤」(148%)が4位になるなど、市販薬の売り上げが急回復しています。背景には訪日外国人旅行客の増加があるようですが、インバウンドのみならず国内需要も強かった「ビタミンC剤」(132%)も13位、「整腸薬」(131%)も14位にランクインしました。
コロナ5類移行で外出の機会が増えたのは訪日外国人だけではありません。日常が戻り、多くの人にとって、ビジネスや余暇で対面活動の機会が増えています。2位の「口紅」は、2021年にはコロナ前の約3分の1まで販売金額が激減していましたが、2019年と比べても8割超まで復活しています。「ほほべに」(139%)は7位に、「リップクリーム」(135%)は11位にランクインしました。
3位に「検査薬」(159%)が入ったのは夏場にコロナ患者が増加したこともあってコロナ用の抗原検査キット(研究用は除く)の販売が伸びたことが主因と見られます。しかし、10月に入ってから販売金額が前年割れするなど、脱コロナのような動きも見えます。
2023年は猛暑日が多い年でしたが、これで大きく数字を伸ばしたと見られるのが9位の「日焼け・日焼け止め」(138%)。特にミストタイプのものなどが人気でした。18位「果汁飲料」(123%)や21位「美容・健康ドリンク」(121%)、22位「ミネラルウォーター類」(119%)などの飲料も大幅増となりました。
コロナ禍の売れ筋の変遷
コロナ禍以降、前年比較で見ると、売れたものの傾向は毎年のように大きく変わっています。2020年は「マスク」「殺菌消毒剤」「体温計」と、衛生系商品がトップ3を占めました。2021年になると長引く外出規制と巣ごもり需要などもあり「オートミール」「麦芽飲料」「玩具メーカー菓子」と、健康に訴求した食品やおうち時間を充実させる商品などが上位に来ました。2022年は検査薬とオートミールに「鎮暈剤(酔い止め)」が加わってトップ3となり、コロナ対策から旅行に使う乗り物酔い止めまでWithコロナとも言うべき多様な商品が入ってきています。そして2023年は上述の通りインバウンドの影響なども入り、さらに売れ筋が多様化しています。
2023年に最も売れなかったのは?
販売苦戦ランキング(金額前年比下位ランキング)は1位「体温計」(61%)、2位「殺菌消毒剤」(72%)、3位「マスク」(75%)と、2020年の売れたものトップ3がそのままワーストになった形です。7位には「うがい薬」(87%)も入りました。特にマスクは猛暑で気温が跳ね上がった夏場以降は6割台まで低下しました。それでも上記の商品はコロナ前の販売金額を大きく上回っています。
同じくコロナの時期に大きく売り上げを伸ばした「麦芽飲料」(82%)や「オートミール」(83%)も数字を落としましたが、こちらも2019年比では大きく伸びており、人々の生活に定着している様子がうかがえます。
巣ごもり需要関連も不調で、「家庭用手袋」(90%)や「住居用ワックス」(90%)などは、外出が増えた生活者の行動変化が影響しました。
2024年は何が売れ、何が売れなくなるのか。変化が激しく先行きの予測が困難な「VUCA」の時代、マーケターにはトレンドに機敏に反応できる力とトレンドに左右されない本質を見抜く力の両方が求められるのではないでしょうか。
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