Googleの広告用生成AIはマーケターの仕事をどう変える?:Marketing Dive
Googleが米国でβ版を公開したP-MAXの最新機能により、代理店やブランドはアセットを迅速に作成してテストできるようになる。
Googleは2023年11月7日(米国時間)、広告商品である「P-MAX(パフォーマンス最大化)」に生成AI機能(β版)を提供することを明らかにした。米国の全ての顧客向けに展開する。
同社幹部は2023年5月に「Google Marketing Live 2023」で初めて発表されたこの機能の初期テストの結果、そしてマーケティング担当者が何を期待できるかを、Marketing Diveに対して詳細に説明した。
広告主の大きな悩みを生成AIが解決
Googleのグローバルプロダクトリードであるアマンダ・シルバーネール氏は、新機能に関するバーチャルラウンドテーブルイベントで「お客さまからから聞いたところ、クロスチャネルキャンペーンを構築し、最適化する際に最も難しい部分の一つが、アセットを作成し、テストし、拡大していくことであると分かった」と述べた。新機能は広告主にとって「これまで大きな悩みの種だった」というこのプロセスの合理化支援を目的としている。
2021年に初めて登場したP-MAXは、検索やYouTube、ディスプレイ、Gmail、マップなど、全てのGoogle広告インベントリで機能する史上初のAI搭載ツールだった。それ以来、グーグルは基礎となるAIを改良し、広告主がこの技術を使用してパフォーマンスを評価するのに役立つ機能を展開してきた。
Google広告の検索およびコマース担当バイスプレジデントを務めるブレンドン・クラハム氏は、「マーケティング担当者は、消費者のトレンドを先取りし、適切なタイミングで顧客にリーチしてエンゲージするために、P-MAXに注目し続けている」と述べ、このプラットフォームが、広告市場の「ダイナミズム」に対応するのに役立つことを強調する。「P-MAXはこの重要な時期に顧客のROIを最大化する手助けをする」(クラハム氏)
新機能はホリデーシーズンが本格化する中で展開され、広告主がますます分断されたメディアの環境を航行するのを支援することを目的としている。Googleのデータによると、2022年のホリデーシーズン中、買い物客の半数以上(54%)が2日間のショッピングに5つ以上のチャネルを使用した。このことは、広告主がさまざまなチャネルのアセットを迅速かつ簡単に生成する必要があることを示している。
生成AIにより、今後キャンペーンを展開する広告主は、さまざまなテキストや画像を個別に作成するのではなく、好みのランディングページのURLを指定するだけで、キャンペーンに必要なあらゆるクリエイティブを生成できるようになる。そこから広告主は、ストック画像とAI生成画像の両方を含むアセットを表示および編集できるようになり、全く同じプロンプトが表示された場合でも、Googleが2つの同一の画像を作成しないことが保証される。
初期のβテストの参加者たちは、このツールが彼らにとって時間とリソースを節約する手助けとなり、キャンペーン実施前に創造的なアイデアやコンセプトをより迅速に実験できるようにしてくれると言う。
ギフト用生花をオンラインで販売する1-800-Flowers.comのCMOであるジェイソン・ジョン氏は、「これらのアセットは、私たちのクリエイティブチームにとってまさに画期的なものとなった。この革新的なアプローチにより、貴重な時間を節約できるだけでなく、視聴者の共感を呼ぶ高品質でパーソナライズされたビジュアルを作成することができるようになる。生成されたアセットを使用すると、人々の距離を近づけ、重要なつながりを築く説得力のあるストーリーを実験し、適応し、伝えることができるようになる」と、コメントしている。
AIへの懸念
Googleによる今回の新機能は、生成AIが評判を傷つけるコンテンツを作成したり、「ハルシネーション(※)」を起こしたりする傾向があると話題になる中で発表された。生成されたアセットはGoogleのAI原則と実践に従って開発されており、この技術を使用して作成された全ての画像は識別され、すかしが入れられる。Googleはシステムが不適切なプロンプトや機密性の高いプロンプトに反応するのを防ぐための「ガードレール」を導入しているとしているが、具体的な安全対策の詳細は明らかになっていない。
※編注:Hallucination。「幻覚」と訳されることが多い。生成AIが事実と異なる内容や文脈と無関係な内容を出力して、もっともらしいうそをつくこと。
GoogleのP-MAXグループプロダクトマネジャーのパラビ・ナレシュ氏は「私たちのモデルは、品質と安全性の面で常に改善している。私たちが生成したアセットの全てが標準的な広告のレビュープロセスを通過し、私たちのポリシーと実施メカニズムの対象となる」と述べている。
生成AIに関する問題とは別に、P-MAXに関しては一部の代理店が在庫の質や透明性、キャンペーンのパフォーマンスについて懸念を抱いていることも最近報じられている。Marketing Diveがこれらの報道について尋ねたところクラハム氏は、P-MAXが広告主の目標や成果を達成するために最適化されていること、そのため、これまでの手作業によるキャンペーン構築とは異なる新しい考え方が必要になることを強調した。
「(P-MAXは)顧客のKPI(重要業績評価指標)に根ざしており、そのKPIに基づいて成果を上げ、例えばオークション分析の観点からできる限り多くの情報を共有して、特定のパフォーマンスに関連して何が起こっているのかを理解する。最優先事項は顧客の中核となる目標だ。つまり、顧客が最も達成したいKPIが何であり、それに対してどのように成果を出すかということにある」(クラハム氏)
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