検索
連載

マクドナルドに次ぐ全米2位に躍進したハンバーガーチェーンのCMOがテイラー・スウィフトに学んだことMarketing Dive

ハンバーガーチェーンのWendy'sでグローバルCMOを務めるカール・ロレド氏は「Advertising Week New York」のパネルディスカッションで、同社のマーケティング戦略の考え方について語った。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
Marketing Dive

 ハンバーガーチェーンのWendy'sは2023年3月にカール・ロレド氏をグローバルCMO(最高マーケティング責任者)に昇格させた。ロレド氏はWendy'sで7年以上勤務し、これまで4年近く米国内のCMOを務めた。その間には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの嵐を乗り切ることに貢献した。

根性と競争力のあるブランドになるということ

 ファストフード業界専門メディア「QSR」(外部リンク/英語)によれば、Wendy'sはBurger Kingから米国ハンバーガーチェーン2位の座を奪った。

 ロレド氏は2023年の「Advertising Week New York」のセッションで、最も影響を受けた人物を尋ねられたとき、広告界の巨人やビジネス界の伝説的人物ではなく、歌手のテイラー・スウィフトの名を挙げた。Yahoo! Financeのブルック・ディパルマ記者との対談の中でロレド氏は、テイラーの姿勢は顧客をブランドファンに変えようと取り組むWendy'sに通じるものがあると説明した(※)。

※編注:Wendy'sはテイラー・スウィフトのアルバム『1989(テイラーズ・ヴァージョン)』の発売を記念して2023年10月27日にフロスティ購入者にフライドポテトを無料配布するキャンペーンを実施している

 「テイラー・スウィフトの活躍を見てきた。話したいことはたくさんある。雨が降ったり晴れたりする3時間のステージで、汗を流し、雨で水浸しになった彼女の映像を私たちは目撃した。彼女は常に全力を尽くしていた」とロレド氏は説明した。「その姿勢がファンダム(熱心なファンのコミュニティ)を生み出すのだ。消費者を理解し、その消費者が必要としているものに合致するものを創造し、ひたすらにそれを追い求めるという彼女の姿は私のお手本となるものだ」(ロレド氏)

 ロレド氏が冗談交じりに「バラとユニコーンばかりではない(全てが理想通りにはいかない)」と言うように、Wendy'sは今日、インフレやCOVID-19関連の諸問題、高金利などの困難に直面している。それでもテイラーから学んだことを応用して、困難を乗り越えようとしている。

 「そこに課題があることは間違いない。しかし、適切なブランドが消費者と適切な関わりを持ち、可能な限り最高の体験を提供することで、人々は集まってきてくれる。私たちはそれを目の当たりにしている」とロレド氏は言う。「幸い、Wendy'sには、自分たちが素晴らしい仕事をしているかどうかを測る方法がある。広告であれ、当社が提供する食べ物であれ、Wendy'sに来店したときに得られる体験であれ、結局のところ去年よりも今年はもっと多くの人々が訪れているかどうかを見ればいいのだ。私たちはトラフィックの面で非常に良い状況にあると感じている」(ロレド氏)

 それでも、食品価格が高騰している今、インフレと消費者の選択の影響は否めない。ロレド氏は、Wendy'sと他のハンバーガーチェーンとの戦いは、これまで同様に厳しいものがあると述べた。

 「ファストフードの分野では、価格重視の消費者と高くても買う消費者について多くの議論が交わされている。消費者は人間であり、場面によって異なる行動を取るものだ。消費者がファストフードを利用するかどうかは、外出することと可処分所得があるかどうかにかかっている」と同氏は指摘する。「状況がより厳しい場合には、消費者が店にたどり着くのを助ける方法を見つけなければならない」(ロレド氏)

 ロレド氏は、消費者が厳しい経済状況を乗り越えられるよう支援する一例として、4個で4ドルの「バリューメニュー」の導入を挙げた。これは消費者の共感を呼んだ。バリューメニューの誕生を記念してタトゥーを入れる人もいたほどだ。カルチャーを軸にこの種の個人的なつながりを築くことは、ブランドにとって(特にWendy'sにとって)長年にわたって不可欠なものであり、Wendy'sはアニメ「リック・アンド・モーティ」とのコラボやMetaのメタバースプラットフォーム「Horizon Worlds」への参入など、さまざまな形でそれを実現してきた。

 また、Wendy'sは昨今の懐古ブームに乗り、ラッパーで歌手のT-Painと組み、彼の2007年のヒット曲である「Buy U a Drank」を「Buy U a Frosty」にリメイクしオーガニックなインフルエンサーの関心を集め、デジタルプログラム全体に高めた。しかし、ライバルのMcDonald’sが誕生日パーティーに関する消費者の思い出を同チェーンの収益ドライバーに変えたように、ロレド氏はノスタルジアを単純にマーケティングに活用することには慎重だ。

 「ノスタルジアを活用する場所は確かにあるが、自分たちの仕事のモダナイゼーションがどのようなものかを理解していないためにノスタルジアに走ってしまったブランドも見てきた。重要なのはバランスだ。私たちがノスタルジアにとらわれ、同じ古いプラットフォームでそれを実行してしまえば、あなたの目には止まらない」(ロレド氏)

 ノスタルジアの適切なバランスをとることは、他のマーケティング戦略と同じだ。ロレド氏はWendy'sについて、「競合他社ほどコストをかけられないため、頭を使って競合他社を出し抜かなければならない、根性と競争力のあるブランド」と表現した。WTWH Media傘下の業界専門メディア「QSR Magazine」(外部リンク)によるとWendy'sはハンバーガーチェーンで2位だが、この座ををキープしてつつもチャレンジャーブランドとしてのマインドセットを保持し続けることが、競争の激化している市場では必要なことなのだ。

 「ファストフード業界においては皆がハンバーガーを売っているのだから、ミスアトリビューション(キャンペーンが成果と正しく結びつかないこと)は大きな問題になる。2個で5ドルのキャンペーンなら世の中にたくさんあるし、当社よりもたくさん広告を出している黄色い店もある。私たちが抱えているリスクは、人々がそちらに行ってしまうことだ」とロレド氏は言う。「私は[素晴らしい作品]を作るのが大好きだが、結局のところそれは全て、売り上げにつながるかどうかにかかっている」(ロレド氏)


Wendy'sの定番ハンバーガー「Dave's Single」(出典:The Wendy's Company)

© Industry Dive. All rights reserved.

ページトップに戻る