「ニュース記事」に並ぶ広告が消費者に与えるネガティブな印象、ブランドの死角になっていないか?:Marketers Dive
マーケターは自社の広告が暴力的または憎悪的なコンテンツと一緒に表示されることを心配する。だが、消費者の反応を見ると、ブランドセーフティー対策はそれだけでは十分ではないのかもしれない。
米国の広告調査財団が発行する機関誌「Journal of Advertising Research」に最近発表されたブランドセーフティーに関するレポートでは、ブランドセーフティーが消費者に与える影響を調べるために行った実験結果を紹介している。ここでは、ネガティブな内容とともに表示される広告について消費者がどのように感じるか、311人の消費者に、子どもが登場する2つのニュース記事(ポジティブな記事とネガティブな記事)を見せた。両者の間にはミッドロール広告を流し、視聴後の意見を聞いた。
編注:本稿は「ヌード、ヘイトスピーチ、偏向報道、etc. 自社の広告を最も載せられたくないコンテンツは?」の続きです。
御社の「ブランドセーフティー」対策が不十分な理由
実験では、参加者にポジティブなニュース記事(子どもたちが警察官と友好的なやりとりをした)またはネガティブなニュース記事(子どもたちと歯科医師とのあいだの良くないサービス体験)を、McDonald’sの15秒のミッドロール広告と組み合わせて見せた。すると、ニュース記事が人々のブランドに対する印象に大きく影響することが判明した。レポートの主執筆者でノーステキサス大学教授のロス・ジョンソン氏は、マーケターがブランドセーフティーを懸念するのは当然だと言う。
「広告がこのようなネガティブな環境で表示されると、基本的に態度的ロイヤルティーやブランドエクイティーが損なわれ、そのためにお金を払うという人々の意欲が低下する」(ジョンソン氏)
ジョンソン氏が指摘したように、マーケターが広告出稿の懸念事項の上位に挙げたコンテンツ(関連記事:「ヌード、ヘイトスピーチ、偏向報道、etc. 自社の広告を最も載せられたくないコンテンツは?」)に比べれば、ニュース記事はかなり穏やかなものだった。しかし、それでも消費者の側に否定的な反応をもたらすには十分だった。また、ニュース記事とMcDonald’sの間にはあまり関連性がなかったため、プレースメントの重要性がさらに浮き彫りになった。
では、マーケターはこれまで間違ったことを心配してきたということになるのだろうか。もちろん、児童虐待やテロリズムのような真に凶悪なものと一緒に自社のコンテンツが表示されることを望むマーケターはいない。しかし、小さな悪に対して十分な注意が払われていないのではないだろうか。歯科医院での劣悪な体験に関するニュース記事と一緒にコンテンツが表示されるのを防ぐために、どれだけの努力(というか追加料金)を払うべきか、あるいは払うことができるのか。
何がネガティブなコンテンツと見なされるかは、ブランドによって異なることも注目に値するとジョンソン氏は示唆した。例えば、Burger Kingのようなファストフード会社は、ファストフードが糖尿病につながるというニュース記事に自社の広告が表示されることをおそらく望まないだろうが、食事と全く関係ないブランドなら、記事内容をそれほど気にすることはない。
解決すべき問題はそこなのか?
ネガティブな環境からブランドを守る最善の方法は何かというのは重要な考察テーマだ。しかし、インターネット広告は非常に広大かつ複雑なため、ブランドがプログラマティック広告を使用している場合、手作業で全ての露出先をチェックすることはまず不可能だ。
もちろん、ブランドセーフティーが危ういプラットフォームでは広告を出さないという選択はあり得る。YouTubeに出稿するリスクがメリットを上回ると考えるなら、YouTubeに広告を出さないこともできる。これは、イーロン・マスク氏のリーダーシップの下でXが広告主を脅かし続ける中、実際に起きていることでもある。ただし、影響力のあるプラットフォームからブランドを排除することは、より大きなダメージにつながる可能性もあるだろう。
完全に撤退する代わりに、多くのブランドはキーワードブロックという、よく採用される戦略を選ぶ。しかし、ジョンソン氏によると、この戦略は常に最適というわけではない。
「キーワードブロックは、例えば『ヌード』や『セックス』といった言葉を使っているWebサイトや記事には広告を表示しない仕組みだ。しかし、これらのキーワードは頻繁に出てくるため、実際にはそれほど問題のないコンテンツであっても、その隣に広告を掲載できないというフラグが立てられてしまう」(ジョンソン氏)
マーケターが効果的なブランドセーフティープラットフォームに追加料金を支払うことを特にいとわないのであれば、AIが潜在的な解決策となり得る。しかし、このテクノロジーを活用できるのはまだまだ先であり、精度の面で既に大きな問題を抱えている。テクノロジーが向上するまでは、マーケターはバランス感覚を養い続けなければならないだろう。
「警戒し過ぎて、潜在的な露出もあきらめていないだろうか」とジョンソン氏は言う。「率直に言って、キーワードブロックはもっと良くなると思う。AIはより多くの問題を提起する可能性もあるが、同時にこの問題に対する解決策になり得ると思う」(ジョンソン氏)
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