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X(旧Twitter)が広告主に“忖度”する日は来るか?Social Media Today

誤情報の取り締まりに重要な役割を果たすと期待される「コミュニティノート」は広告にも追加可能だ。広告費を払っても内容が疑わしければ即座に否定される。透明性という点で好ましい仕組みだが……。

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 「コミュニティノート」は、イーロン・マスク氏のX(旧Twitter)改革における目玉の一つとして注目されている。以前は「バードウォッチ」として知られていたこの機能は、X内での体験をユーザーが自分で管理できるようにするというマスク氏の広大な計画の中で、重要なツールとなりつつある。

AppleやUberも「コミュニティノート」に困惑

 コミュニティノートは誤情報の取り締まりに重要な役割を果たすとマスク氏は考える。ユーザーが文脈を追加し、それに投票にかけることで、何が真実で何がそうでないかの判断をユーザー自身に委ねられる。そうすることで、コンテンツに関する困難な決定をXの運営から切り離すことができる。

 マスク氏は繰り返し、以下のように訴えている。

ある人にとっての誤報も別の人にとっては情報だ。

 マスク氏は、真実を中立的に裁定できる者は存在せず、それを決定すべきは人々だと考える。だからこそ、コミュニティノートが非常に魅力的なのだというのだ。

 捉え方にもよるが、これは少なくともある程度の妥当性を持つだろう。 しかし同時に、以下のようなコミュニティノートについて広告主がどう感じているかも気にしなければならない。


あるオンラインストアのプロモ広告に付いたコミュニティノートで、別のストアへの誘導リンクが張られている例

 コミュニティノートの参加者が広告に説明書きを追加することで文字通りユーザーを安価な代替オプションに誘導するのは、Xでは比較的一般的な慣行となっている。こうした行為のせいでプロモ広告自体の価値がほとんどなくなるケースもある。マスク氏による買収以来、毎月の広告収入が50%以上減少しているXのビジネスにとって、それは良いことではあるまい。

 広告収入が激減していることについて、マスク氏はユダヤ人の権利保護団体であるADL(名誉毀損防止同盟)の圧力などがXの価値を下落させたとして非難しようとしている。だが、本当に非難されるべきは、議論の分かれる問題に首を突っ込みたがるマスク氏自身が下したこのような決断にこそ向けられるべきだと思われる。

 実際、「The Wall Street Journal」の新しいレポート(外部リンク/英語)によると、幾つかの主要ブランドもコミュニティノートの修正で打撃を受けている。

AppleからUberまで、さまざまなブランドの広告がここ数カ月、虚偽または誤解を招くような主張をしていると指摘されている。結果はさまざまだ。Uberは批判的なコミュニティノートを掲載した広告を削除したが、Appleのコミュニティノートは他のコミュニティのメンバーが反対したため、後に姿を消した。

 誤解のないように言っておくと、透明性があることは全面的にプラスであり、コミュニティノートを付けられてしまう広告主に対してマスク氏自身が気にかけない理由も分かる。マスク氏は、Xにおいては誰もが、マスク氏でさえもノートを付けられる可能性があると指摘している。だから彼がそれをあっさり撤回して広告主だけ見逃すことは難しいのだろう。

 しかし、それがXの収益にとって良いことではないのは、マスク氏も認めている(外部リンク/英語)。

 広告にコミュニティノートを残せるようにしていることで Xは明らかに自らの価値を損なっている。このままではX内で製品の宣伝をためらうようになる企業はますます増えるだろう。

 ユーザーの多くはそれを歓迎するはずだ。彼らは、誤解を招くようなプロモーションを利用する者は責任を問われるべきだと考えているからだ。 しかし、繰り返すが、Xの広告収入は60%も減少している。

 いずれにせよ、Xが広告ビジネスで再浮上するためには、何かを変えなければならない。マスク氏は今なお、彼の「全部乗せアプリ」のビジョンが実現すれば、Xは人気を取り戻し、広く使われ、誰もがそこにいたいと思うようになると確信しているようだ。結果、ブランドは広告出稿を再開せざるを得なくなる、と。

 しかし、それは危険なギャンブルのように思える。あなたもある段階で、Xチームがプロモ広告からノートを削除する必要が生じると思うようになるだろう。

 マスク氏の公的な立場を考えれば、今のところそのようなことは起こりそうもない。だが、多額の負債を抱え、広告収入も低いままであるなら、Xはいつかある時点で、アプローチを変えざるを得なくなるだろう。

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