崖っぷちブランドが生まれ変わるために下した「他社のマーケティング戦略に追随しない」という決断:Marketing Dive
再起を図る米老舗百貨店が、包括性とコミュニティーを重視する新たな「Make It Count(今を大切に)」というブランドメッセージを届けるために大きな投資をしている。同キャンペーンの手法は他社のやり方とは一線を画するものだと、責任者は語る。
「Make It Count」キャンペーンは、J.C. Penney Company(以下、J.C. Penney)のマーチャンダイジング、サプライチェーンオペレーション、テクノロジーに関わるより広大な計画の一部分にすぎない。それでもマーケティング支出が大幅に増加したのは確かだ。
メディア展開は重要なホリデーシーズンを前に開始された。J.C. Penney最高顧客責任者(CCO)であるケイティー・ミュレン氏は具体的な数字こそ明らかにしないものの、「当社はこの大きなブランドメッセージを確実に発信するために、基本的なマーケティング費用に加えて数千万ドルを費やしている。スポーツや音楽、その他のエンタテイメントなど、顧客が非常に関心を寄せている分野で今後当社の名前を目にするようになるだろう」と語る。
編注:本稿は「破綻した老舗百貨店が再起をかけた“10億ドル”デジタルキャンペーンの中身」の続きです。
「コンテクスト」こそが鍵
ミュレン氏は、「JCPenney」ブランドを支えるマーケティング戦略は基本的に2方向に分かれると説明する。まずはテレビCMのようなリーチを重視したクリエイティブな施策を実施する。次に、このアプローチと一致するように、マーケティングチームは特定の商品への関心を持つ消費者や特定の属性を持つ消費者をターゲットとして、Make It Countキャンペーンが抱える包括性の観点から、より文脈に即した取り組みを展開する。
「美容に関心のある人は、美容情報のために利用している出版物やフォーラムで美容コンテンツを目にすることになる。料理や家庭についても同様だ。私たちのブランドを目にするのは『Essence』(※)のようなメディアチャネルだ。私たちは、それがアフリカ系アメリカ人消費者とつながるための非常に重要な方法であることを知っている」とミュレン氏は語る。
※編注:アフリカ系アメリカ人向け女性誌
ミュレン氏によると、JCPenneyは数年前よりもはるかに「デジタルネイティブなショップ」になっている。しかし、エンゲージメントを促進するために「非常に短期的なレバー」を使うことは避けようとしていると同氏は指摘する。言い換えれば、上場しているライバル企業がプレッシャーを感じて採用するかもしれないトレンドを追いかけるようなことはしないということだ。
「非上場企業である当社は、顧客とつながり、エンゲージメントを高めるための適切かつ長期的な方法に投資できる柔軟性がある。他の上場企業が積極的に実施する手法とは違う。それは、私たちがプレイするゲームではない」とミュレン氏は述べている。
巻き返しは図れるのか
Make It Countキャンペーンはロングテールであることをミュレン氏は強調するが、マーケティングチームは短期的には幾つかのKPIに注意を払っている。その中には、ブランドのネットプロモータースコア(NPS)、直接流入、そして、フリークエンシー(同じ人がWebサイトを閲覧した頻度)のモニタリングが含まれる。おそらく最も重要なのが最後者だ。これは、消費者がMacy'sやKohl'sといった競合百貨店からJC Pennyブランドに戻ってきていることを示すものだからだ。
「Make It Count」と10億ドルの再投資計画は、ここ数年苦境に立たされているJ.C. Penneyの立て直しを図るものだ。「Retail Dive」(外部リンク/英語)が以前報じたところによると、同社の2022年の純売上高は前年比3.4%減の76億ドルだった。
J.C. Penneyはまた、同社のプライベートブランド「J.Ferrar」と「Worthington」を刷新するために有名スタイリストジェイソン・ボールデン氏と結んだパートナーシップを強調する。こうした取り組みは、リブランディングが浸透しつつあることを示しているとミュレン氏は話す。
「やらなければならない仕事は常にある。しかし業界が注目し、潜在的なパートナーが当社と提携や協業をしたいと言っていることから分かるように、私たちはこのストーリーをより広く伝えていく準備ができているのだと思う」(ミュレン氏)
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