ステマの闇に落ちないために日本のマーケターも知っておきたい米FTCの「エンドースメント」新指針:Marketing Dive
米FTCが「エンドースメントガイド」の最新版を発表した。この新たな指針には、企業のマーケティング担当者やソーシャルメディアのインフルエンサーにとって注意すべき点が幾つかあると専門家は指摘する。
編注:本稿は法律事務所Lewis Riceのアソシエイト、ローレン・キャリー氏によるゲスト記事です。記載された意見は筆者のものであり、必ずしもLewis Riceの見解を反映するものではありません。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を意図したものではなく、またそのように受け取られるべきでもありません。
2023年6月、米連邦取引委員会(FTC)は、ソーシャルメディアにおけるインフルエンサーマーケティングに対処するため、広告における推薦文および顧客の声の使用に関する指針である「エンドースメントガイド」の最新版を、FAQと共に発表した。
インフルエンサーとの協業で企業が気をつけるべき3つのポイント
インフルエンサーはどんなメディアよりもインパクトがあり、効果的かつ信ぴょう性のある方法でブランドとターゲットオーディエンスを結び付ける能力を持っている。
次のシナリオのうち、どちらの場合に購入する可能性が高いか、考えてみてほしい。
- アパレルブランドのカタログをめくっていて、かわいい水着が目にとまる
- Instagramをスクロールしていると、お気に入りのインフルエンサーがストーリーに表れ、同じ水着を試着している。インフルエンサーは、水着をあらゆる角度から、あらゆる色・スタイルで見せ、購入ページへのリンクとユニークな割引コードを教えてくれる。
あなたが(筆者と同様に)ミレニアル世代か、またはZ世代なら、2番目のシナリオを選ぶに違いない。
とはいえ、多くのインフルエンサーは、質問箱やフォロワープレゼント、お出かけコーデやメイクなどのGRWM(get ready with me)動画、読みたい本のリストなどのオーガニックな、つまりスポンサーなしのコンテンツを通じて、フォロワーの信頼とロイヤリティーを得ている。ご想像通り、オーガニックコンテンツとスポンサードコンテンツの境界線は曖昧になりやすい。例えばGRWM動画に登場する製品には、インフルエンサー自身が購入した製品と企業からプレゼントされた製品が混在していることがある。こうしたケースがあることからエンドースメントガイドが必要になる。
エンドースメントガイドは、どのような行為が不公正で欺瞞(ぎまん)的か、法令(外部リンク/英語)に違反する可能性があるかを判断するための指針を提供している。また、ブランドとインフルエンサー、そしてスポンサー付きコンテンツの発信に関わる広告代理店やPR会社などの仲介業者がインフルエンサーキャンペーンに関して知っておくべき注意点を含んでいる。 以下、とりわけ重要なアップデートを幾つか紹介しよう。
ポイント1:どのような場合に情報開示が必要か?
インフルエンサーとブランドとの間に重大な関係性があり、その関係性がスポンサードポストの閲覧者によって合理的に予想されない場合、その関係性を開示しなければならない。言い換えれば、スポンサードポストの閲覧者の一部でも両者の関係性を理解できない場合には、関係性の開示が必要だ。この基準は明確なものではないので、迷うなら関係性を開示することだ。インフルエンサーとブランドとの関係性は、インフルエンサーの商品に対する意見に与える重みや信頼性に影響を与える可能性がある。
ヒント
関係性の開示義務は、フォロワー500人程度の副業ナノインフルエンサーから100万人以上のフォロワーを持つメガインフルエンサーに至るまで、全てのインフルエンサーに適用される。ルールを学ぶのはバズってからでいいというわけではない。
関係性の開示する際、関係の詳細を全て伝える必要はない。しかし、閲覧者がその重要性を評価できるように、インフルエンサーとブランドの関係の性質を明確に伝えなければならない。FTCは、関係性を伝えるための決まり文句を規定しているわけではないが、以下の情報が明確かつ目に付きやすいように記載されていれば(これについては後述)、一般的に許容されるだろう。
- Ad
- Paid ad
- #ad
- Advertising
- Advertisement
- Sponsored by XYZ(注1)
- Promotion by XYZ(注1)
※注1:XYZにはブランド名や企業名が入る
ヒント
ブランド製品の販売におけるインフルエンサー独自の割引コードは、それ自体で重大な関係性を開示するのに十分とは言えない。インフルエンサーとブランドの間に関係性があることを伝えることはできても、必ずしも金銭的関係が存在することを示すものではないからだ。
ポイント2:どこで情報開示をするべきか?
一般的に、関係性の開示は「明確かつ目に付きやすい」ものでなければならない。エンドースメントガイドによれば、開示は「見落としにくく(つまり、容易に気付き)、一般消費者が容易に理解できる」ものでなければならない。投稿形式によって見つけやすさは異なる。スポンサード投稿が画像のような視覚的手段を通じて実施される場合、開示は少なくとも視覚的に実施しなければならない。例えば、画像の上に重ねるか、キャプションの中に記載するといった具合だ。また、スポンサード投稿が聴覚的手段で実施される場合は、開示もまた音声で実施すべきだ。例えば製品のエンドースメントがMetaの「ストーリーズ」で行われるなら、口頭で開示を述べるべきだ、できれば視覚的開示と聴覚的開示の両方があった方が望ましい。
ソーシャルメディアプラットフォームにあらかじめ組み込まれた開示ツールは、明確かつ目に付きやすい方法で重大な関係性を開示するという目的には十分でない場合がある。FTCは、組み込みの開示が明確かつ目に付きやすいかどうかを判断する際、以下のような幾つかの重要な要素を考慮するという。
- 配置(見落としにくいこと)
- 読みやすさ(対照的なフォントで読みやすいこと)
- 明確さ(分かりやすい表現であること)
組み込みの情報開示ツールだけに頼らず、注意を払うことが不可欠だ。注意が不十分な場合、その責任を負う可能性があるのはプラットフォームではなく、インフルエンサーやブランドの側なのだから。
ヒント
ブランドが投稿をスシリーズでスポンサリングしている場合、適切な関係性の開示は各投稿に含めるべきだ。インフルエンサーは、視聴者が自分の投稿を複数読み、それらを互いに関連付けると勝手に想定すべきではない。
ポイント3:ブランドはどのようにコンプライアンスを監視できるのか?
エンドースメントガイドによれば、広告主はスポンサード投稿の中に誤解を招く発言や根拠のない発言があった場合、あるいは閲覧者が予期できないインフルエンサーとの広告主との重大な関係性を開示しなかったことについて、責任を問われる。インフルエンサーが責任に問われなかったとしても、広告主は欺瞞的なスポンサード投稿に対して責任を負う可能性がある。
エンドースメントガイドを確実に順守するために、ブランドはインフルエンサーをトレーニングし、監視するための適切な手段を用意すべきだ。FTCは、「セーフハーバーではないが、誠実かつ効果的な指導、監視、是正措置を講じれば、欺瞞的な主張の発生や、広告主が(FTCの)強制措置に直面する確率を減らせるはずだ」と指摘している。
ヒント
短時間で消えるスポンサード投稿(ストーリーズなど)は、ブランドがリアルタイムで内容を監視するのが難しい。特にこのようなタイプの投稿については、ブランドのモニタリングシステムに事前承認プロセスを追加することを検討してみよう。
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