B2Cブランディングにもnote 「カルビー」「みんなの銀行」に学ぶ、生活者の共感を呼ぶ活用術:note活用で企業の「想い」を広げる【第4回】
企業のnote活用を目的別に考えるこの連載、今回のテーマは「B2Cブランディング」です。
コムニコのマーケティングチームの北村です。第4回となる今回は、noteでnote pro事業部長を務める半田美幸氏と共に、「B2Cブランディング」の目的でnoteを運用する企業の活用方法や、法人向けの高機能プランであるnote pro(※)を活用して成果を得られたというカルビーとみんなの銀行の2社について紹介します(以下、文中敬称略)。
※note pro:法人向けの高機能プラン。デザインカスタマイズや分析機能などさまざまな機能を利用することができ、カスタマーサクセスチームによる運用サポートを受けることが可能になる。
B2C企業がnoteを使う理由
北村 ユーザーと買い手が必ずしも一致しないB2B企業と異なり、B2C企業は自社商品やサービスを通じて生活者と直に接点を持ちやすく、もともと認知も獲得しやすいように思います。それでもnoteでブランディングを始めたB2C企業があるのは何故なのでしょうか、また、それらの企業はどのような課題があってnoteの活用に踏み切ったのでしょうか。
半田 今は、企業が生活者とのコミュニケーションを工夫しなければいけない時代だと思っています。モノやサービスがあふれ、生活者の選択の幅は広がっていますが、一方でお財布のひもは固くなっています。生活者は、思い入れがある商品の購入にはお金をかけますが、それ以外は節約する傾向がありますよね。つまり、自社を選んでくれる「コアファン」をいかに作るかが重要になる。これがB2C企業の一番の課題ではないでしょうか。企業やブランドに共感を持っているコアファンとつながるためには、自分の言葉で等身大の想いを伝えられるnoteやオウンドメディアが、相性が良いと思います。
北村 共感って、今いろいろなところで必要とされるワードになっていますよね。
半田 そうですね。特に購買活動においては2:8(にはち)の法則というものがあって、上位20%のコアな顧客が、80%の売り上げを作っていると言われています。コアなファンをどれほど増やすかが重要になりますね。
「ファン巻き込み型」の運用
北村 オウンドメディアを立ち上げたり、SNSアカウントを作ったりと、情報を発信する側の選択肢も同時に広がっています。B2C企業のブランディングにおけるnoteの強みや魅力はどんなところでしょう。
半田 noteは一般のユーザーである個人クリエイターがコンテンツを簡単に投稿できるプラットフォームです。つまり、B2C企業が自社製品を購入する生活者と一緒にコンテンツを作れるということです。企業の商品を使ったレシピや食レポ、使ってみた感想などを投稿する方も多くいらっしゃいます。カルビーさんは、「●●商品がスキ」「●●商品を食べてみた」などという一般ユーザーの企業や商品愛に関する記事を、公式アカウントのマガジン「Calbee Lovers」でまとめています。さらに、note proの限定機能「マガジンリツイート」を使い、マガジンにまとめた記事をカルビーさんのトップページへ表示しています。これはまさにnoteならではのファンの巻き込み方だと思います。自社運用のブログサイトだと、なかなかこういうことはできないのではないでしょうか。
北村 確かに。例えばX(旧Twitter)でも企業アカウントが一般の方の投稿をリポストすることは多いですが、Xのタイムラインってすぐに流れてしまうので、過去の投稿までさかのぼって読む人はあまりいないと思うんです。でもタイムラインがないnoteではコンテンツのストックがいつでも読みやすくなっているので、過去の投稿でも読まれる可能性が高いということですよね。
半田 当連載の第1回「企業のオウンドメディア戦略に『note』活用を強く薦めたい理由」で「フロー型」と「ストック型」という話がありましたが、まさにnoteはストック型なので、過去の情報が資産になります。そしてnoteに長文を書くということは、相当な思い入れがある熱量が高いファンだと思います。こうした、ファン巻き込み型コンテンツを作るのが、B2C企業の特徴的な使い方です。
ファンが喜ぶ「裏話」でファン数や好感度の上昇を狙う
北村 面白いですね。こういうファンの巻き込み方もあるんですね。カルビーさんといえば、SNSですごく話題になって、そこからメディアの取材につながったnoteの記事があるとのことですが、どの記事でしょう。
半田 こちらの「ピザポテト」の記事(外部リンク)ですね。この記事を読んだ方が、記事に登場する遠藤さんのことを「この人は神だ!」といった感じで崇拝するようになって。それで話題になって、あるWebメディアにも取り上げられました(笑)
北村 なるほど、「ピザポテト」「堅あげポテト」「ア・ラ・ポテト」の開発者が同じ方だったということですよね。
半田 カルビーさんは、普段表には出てこない開発秘話、社員の想いなど、従業員インタビューの掘り下げ方が非常に上手ですよね。職人魂が伝わる内容など、すごくコアな話を公開していて、私自身もそういう記事を読むのが好きです。記事を読んだ後に店頭でカルビーさんの商品を見ると、「これはあの方の想いがあって誕生した商品なんだな」と、愛着が湧いてきます。そう思わせるような描写がとても上手だと感じています。自社では当たり前になっていることが傍から見ると面白いというのはよくあることで、note proのカスタマーサクセスチームでは、「御社独自の裏話をぜひ書いてください」とお伝えしています。
北村 開発秘話は、ファンの方にとってはたまらない内容ですよね。その記事がまさにファンの方々に刺さってSNSで話題になり、メディア掲載にもつながり、読者とファンが増えるというサイクルにつながるかもしれない。生活者とのコミュニケーション強化やファン増加のための、素晴らしい流れですね。
専門性の高い記事の投稿でその領域の専門家というイメージを訴求
北村 次はみんなの銀行さんの事例を紹介していただきます。みんなの銀行さんは、どうしてnoteの活用を始められたのでしょうか。
半田 みんなの銀行さんは2021年5月にサービスの提供を開始したばかりの新しい銀行ですが、実はnoteの運用はその5カ月前に始めています。世の中が銀行に抱く「お堅い」「面倒くさい」といったネガティブな意味での“銀行らしさ”からの脱却を目指し、当初よりブランディング面でnoteを戦略的に活用されています。スタッフの視点を通して「仕事」や「お金」、あるいは「これからの銀行」にまつわるストーリーを積極的に発信することで、ユーザーにとってフレンドリーな存在を目指したいとのことでした。
北村 みんなの銀行さんも、noteの記事がメディアの取材につながったようですね。
半田 そうなんです。最先端の銀行システムやセキュリティ、「BaaS(Banking as a Service)」がもたらす金融の未来といった、やや専門的な話をnoteで分かりやすく紹介したところ、それを目にしたメディアの方から、「もう少し詳しく話を伺いたい」と取材依頼が入りました。その取材記事を基に、さらに別のメディアからも問い合わせが入り、取材を受ける機会が増えるという広がりもあったとのことです。取材につながった点に加え、採用広報としても効果があったとうかがっています。
北村 かなり多くのメリットを感じられているようですね。みんなの銀行さんのnoteはデザインも銀行らしくない。すごく雰囲気を重視されている感じで、若い方にも好まれそうです。見出し画像も分かりやすくて良いですね。
半田 note proですと、デザインカスタマイズが可能ですので、自社のブランドイメージに合わせたデザインにも力を入れています。ブランドカラーとイラストを活用して、ブランドイメージが訴求できるよう工夫されているのかと思います。みんなの銀行さんもまさにブランドカラーの白、黒、黄色を用いて、noteの中でも独自の世界観を構築しています。堅苦しいイメージから遠い雰囲気作りをされていますね。
北村 メディアの取材につながったきっかけは何だったのでしょうか
半田 専門性の高い記事を継続的に投稿していることですね。みんなの銀行さんには、銀行出身者の他にデザイナーやエンジニア、マーケター、データサイエンティストといった職種の方も多く、銀行を舞台にしつつも、それぞれの領域で専門性の高い記事を投稿することが可能です。企業が持っている専門知識は価値あるコンテンツです。それを公開していくことは、高い専門知識を持つ専門家として信頼を得ることにつながります。noteの活用でこのようなメリットを得ている企業さんは、他にも多数いらっしゃいます。また、メディアで取り上げられることで、より広く多くの方に、その業界の専門家であることを知ってもらえると思いますし、企業としての信頼度も上がるかもしれません。オウンドメディアでの発信と外部メディアによるパブリシティの双方が、良い連鎖を起こしていますね。
北村 生活者がお客さまとなるB2C企業は、いかに広く多くの方と接点を作るかが重要だと思います。noteを運用することで人に見てもらう機会を増やすことができますが、それだけではなく、ファンの醸成やファンによる盛り上がり、話題化、外部メディアでの紹介という広がりも生まれる。その可能性を信じるという意味で、B2C企業にとっても、noteを地道に運用する意義は十分にありますね。
これまで、「採用広報」「B2Bブランディング」「B2Cブランディング」と、それぞれの目的でnoteを運用されている企業の事例、運用のコツなどをご紹介しました。最終回となる次回は、これまでの話を経て、あらためて企業がnoteを活用する心得やメリットについてお話しします。
この連載について
今、多くの企業がオウンドメディア運用に活用している「note」。noteは、2014年4月にサービスが開始され、2023年5月末時点で会員数は663万人に達している。当連載では、SNSマーケティングの総合代理店であるコムニコが、複数社の好事例の紹介も交えながら、企業が有効にnoteを活用する方法を解説する。
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