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生成AIはCRMをどう変えるのか?Salesforce World Tour Tokyoレポート

「AI、データとCRMがビジネスの未来を創る」をテーマとした基調講演のハイライト部分を紹介する。

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 セールスフォース・ジャパンは2023年7月20日、ビジネスイベント「Salesforce World Tour Tokyo」を開催した。今回のテーマは「AI、データとCRMがビジネスの未来を創る」。本稿では生成AI関連サービスをはじめ、Salesforceが仕掛けるAI×CRMのさまざまな取り組みについて、基調講演のハイライト部分をまとめた。

SalesforceとAIの関わり


小出伸一氏

 Salesforceはコアバリューとして「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等(イクオリティ)」「サステナビリティ」の5つを掲げている。そのうち「AI、データとCRMがビジネスの未来を創る」という今回のイベントのテーマに特に関わりが強いのが「信頼」と「イノベーション」だ。

 基調講演の冒頭に登壇したセールスフォース・ジャパン代表取締役会長兼社長の小出伸一氏は「『新しいカタチで顧客とつながる』というのが私たちのビジョン。生成AI が生み出すイノベーションを信頼できるテクノロジーモデルで提供し、顧客接点を新しい形に変革する支援をする」と語り、これまでのSalesforceとAIの関わりについて振り返った。

 Salesforceは2014年からAIの研究開発に先行投資してきた。2016年にはCRM向けAIを「Salesforce Einstein」の名で提供開始し、今ではこのEinsteinがさまざまなSalesforce製品にネイティブに組み込まれ、多くの人に利用されている。実際、Einsteinは週に1兆回以上の予測処理を実行している。また、SalesforceではAIの研究者やデータエンジニアといった人材にも投資をしてきた。現在までに227件のAI研究論文を発表し、300件のAI特許を取得している。


SalesforceとAIの関わり(出典:セールスフォース・ジャパン資料)

 そんなSalesforceが現在最も注力するのが生成AIだ。小出氏は生成AIを「生産性、ビジネスモデル、顧客体験、ツールやスキル、そして企業の製品戦略を新しい形に変化させる力を持っている」と評価し、企業の経営者はこの新しいイノベーションの潮流を早く捉え、AIを企業戦略の柱にする「AIファースト」の考え方にシフトする必要があると語る。

信頼性に優れた生成AIを

 生成AIによるイノベーションへの期待は高い。しかし、その信頼性には課題がある。Salesforceが実施した生成AIに関する調査では、生成AIの活用を考えている人の60%近くが「データの安全性をどのように確保したらよいか分からない」と回答している。

 企業がAIをイノベーションに積極的に活用するには、ハルシネーション(もっともらしいうそ)や有害性、プライバシー、バイアス、データガバナンスといった、信頼性についての課題を解決する必要がある。そこで2023年6月に発表したのが「AI Cloud」だ。AI CloudはSalesforceが提供するさまざまな製品において、「信頼性の高いオープンでリアルタイムの生成を実現することに最適化された一連の機能群」と説明されている。

 生成AIはプロンプト(対話文)から始まる。生成AIが生み出す成果物の質はプロンプトの質に左右される。例えば顧客に送るメールを生成する際には単純なプロンプトよりも、顧客や自社の文脈(コンテクスト)を踏まえたプロンプトを用意した方が、顧客の関心を引く可能性が高い。

 AI Cloudの核となる新しい「Einstein GPT Trust Layer」は「Data Cloud」などSalesforce製品のデータを参照して顧客のコンテクストを取得し、それをグラウンディング(AIが言葉や概念を具体的なものや実際の世界と結びつけて理解すること)してプロンプトを生成する。そして、LLM(大規模言語モデル)を活用して関係性の高い出力を得ることができる。Salesforceは最適なプロンプトテンプレート作成を支援するためのツールである「Prompt Studio」も用意している。

 ただし、顧客の個人情報をそのままLLMに送るのは信頼性の点で問題がある。そこでEinstein GPT Trust Layerは、個人情報保護のためのデータマスキングやコンプライアンス確保のための有害性・バイアス監査といった機能を備えている。プロンプトを処理すると、プロンプトも生成されたコンテンツも両方が直ちに消去されるようになっており、LLMに顧客の機密データが残ることはない。


Einstein GPT Trust Layerの仕組み(出典:セールスフォース・ジャパン)

さまざまな業務を生成AIで支援する


マーク・マシュー氏

 小出氏に続いて登壇したSalesforceシニアバイスプレジデント(Web3 & Emerging Tech Studio担当)のマーク・マシュー氏はEinstein GPT Trust Layerの仕組みについて一通り説明した上で、その中の「セキュアゲートウェイ」の意義について強調した。

 「AI Cloudを作る際に重要だと思ったのはオープンであること。OpenAIの『ChatGPT』を使う、Amazon Web Services(AWS)やAnthropic、CohereなどのLLMをSalesforceのインフラストラクチャ内でホストする、独自のLLMを構築するといった、企業のどのようなAI戦略にも対応したい。そのためにも安全性を最優先することを考えている」(マシュー氏)

 AI CloudはSaleceのさまざまな製品を通じ、さまざまな業務において、生成AIの力を提供していく。例えば「Sales GPT」は見込み客に送るためのメールを生成して営業担当者が顧客との時間をより多く取れるよう支援する。「Service GPT」は、コールセンターのサービスエージェントの回答やケースの要約、ナレッジ記事などを生成する。そして「Marketing GPT」はファーストパーティーデータを基に適切なターゲットに向けてパーソナライズされたコンテンツを生成し、さまざまなタッチポイントでより良い体験を提供できるよう支援する


「Sales GPT」によって生成される営業メール(出典:セールスフォース・ジャパン)

 AIをより洗練するための取り組みとして、Salesforceはユーザーのフィードバックに加えてビジネス結果を学習することを重視している。「生成されたメールが商談をクローズさせるのに役立ったか、サービスにおいて提案されたレスポンスがお客さまの問題解決に役立ったか、マーケティングメールの開封率が上がってキャンペーンの目標が達成されたのか、AI Cloudはそれぞれのプライオリティーに従って生産性向上とビジネスの成長に貢献する」(マシュー氏)

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