マーケターこそ今知るべき「インクルージョン」について:異色のCMOが語る「共感」の絶大な効果
世界的な広告会社のグローバルCMOにして社会活動家でもあるアシシュ・パラシャール氏が、今日の社会の重要課題である「インクルージョン」についてマーケター視点で解説する。
世界的な広告会社グループであるInterpublic Group of Companies(IPG)の一員であるR/GAは、より人間らしい未来を目指して44年にわたり新しいテクノロジーと人をつないできた。16カ国にオフィスを構え、日本拠点は2017年に開設。Googleをはじめとする海外企業の他、サントリーや資生堂など国内企業にもサービスを提供し、日本と世界中のユーザーを結び付けている。
そのR/GAでグローバルCMO(Global Chief Marketing Officer)を務めるアシシュ・パラシャール氏は、伝統的なコミュニケーションやマーケティングの考え方に挑戦してきた経験豊富なマーケティングエグゼクティブである一方、司法改革のアクティビストとしての顔も持つ。自身が若くして投獄された経験から、元投獄者のためのプログラムを立ち上げ、保釈金の改革、独房の廃止、選挙権の回復などのキャンペーンを展開した。
異色の経歴の持ち主であるパラシャール氏だが、企業およびクリエイティブコミュニケーションの分野における15年以上の経験とアクティビストとしての活動に通底するのが、日本語で「包摂」を意味する「インクルージョン」の考え方だ。人種や民族、性別などのダイバーシティ(多様性)を包摂することはポジティブなインパクトをもたらす。企業・組織の視点では生産性向上や業績アップ、ブランドの評判向上にもつながる。企業の経営、そしてマーケティングやコミュニケーションに携わる人にとって無関心ではいられないテーマと言える。マーケターが今知るべきこと、学ぶべきことについて、パラシャール氏の特別寄稿を短期集中連載でお届けする。
アシシュ・パラシャール
Ashish Prashar R/GAに入社する以前はPublicisのデジタルトランスフォーメーションハブであるPublicis Sapientで北米、EMEA、MENA、APAC 地域のグローバルコミュニケーションチームを率いてきた。Publicis Sapientブランドの近代化において重要な役割を果たしたことにより、同社はデジタルビジネストランスフォーメーションのリーダーとして再評価されるに至った。ABC、Business Insider、CNN、Fast Company、NBC、USA Todayなどの米メディアにレギュラーコメンテーターとして出演。ロンドンのウェストミンスター大学を卒業し、現在はニューヨーク在住。
エリートとは異なるアプローチでCMOに
私は企業の典型的なCMOではありません。私の道のりは波乱万丈でした。貧しい階層の出身であり、若くして収監されましたが、セカンドチャンスつまりやり直しと自らの価値を証明する機会を与えられ、一介の記者としてキャリアをスタートさせました。その後、英首相のボリス・ジョンソン氏や米国大統領のジョー・バイデン氏といったトップレベルの政治家の報道官を務めた後、現在はR/GAにおけるグローバルCMOという役職に就いています。
政治運動家、政治戦略家、そして司法改革活動家でもある私の仕事とは、ストーリーを語ることとキャンペーンを組み立てて発展させることです。本稿では、コロナ後の世界で企業が広く存在価値を持つための基本的な考え方について、私見を紹介します。キーワードは「インクルージョン」。これからの優れたマーケターが隠し持つ「共感」という秘伝のスパイスです。
インクルージョンへの取り組みが私たちの状況を一変させた
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