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セールスフォース×Snowflake×Amplitude 日本法人のキーパーソンが「グロースマーケティング」を語るプロダクトアウトからプロダクトグロースへ

顧客の行動を理解し、的確な目標・指標を設計して高速に施策を繰り返す「グロースマーケティング」。これを実践する上で何が必要なのか。識者が語った。

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『グロースマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)

 NTTドコモのマーケティング分野における新規事業型子会社であるDearOne(旧ロケーションバリュー)は、2021年4月23日、日本におけるデジタルトランスフォーメーションの課題と米国の先進企業の最新マーケティング手法と成功事例について解説した書籍『グロースマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)を出版した。

 本稿では2021年4月13日に開催された同書の出版記念イベントにおけるパネルディスカッションの内容を紹介する。ゲストはセールスフォース・ドットコム専務執行役員の笹俊文氏、 Snowflake日本代表の東條英俊氏、Amplitude日本カントリーマネジャーの米田匡克氏。Dear One代表取締役社長の河野恭久氏がモデレーターを務めた。


左からセールスフォース・ドットコム専務執行役員の笹俊文氏、 Snowflake日本代表の東條英俊氏、Amplitude日本カントリーマネジャーの米田匡克氏

グロースマーケティングとは何か

 グロースマーケティングとは新規顧客の獲得のみならずビジネスの持続的な成長にフォーカスしたマーケティング活動のこと。サービス自体に成長・拡散の仕組みを取り入れる手法である「グロースハック」を応用し、戦略策定や成長を実現するための環境整備、人材育成、組織変革まで視野に入れている。

 グロースマーケティングは以下の3つの要素から成る。

  • 行動理解(Behavioral Analytics)
  • 高速に施策を繰り返す(Rapid Iteration)
  • 的確な目標・指標設計(Business Impact)

 良いものを作れば売れるという思い込みはもはや幻想でしかない。プロダクトアウトで高い成果が望めないならばプロダクトグロース、すなわちプロダクト自体が自走し、成長することを考えなければならない。顧客の視点に立ってより優れた体験を提供し、気に入ってもらってリピート購入・継続使用を促すような努力が必要なのだ。

グロースマーケティングは小さく始める

 顧客の行動をデータで知り、グロースにつながる指標を見つけ出してそれを改善するための施策を実行し、うまく行かなければ別の打ち手に変えて次々と素早く実行する――。グロースマーケティングの取り組みをごく単純化して言えばそれだけのことだが、まともにできている企業は多くない。

 グロースマーケティングを阻む大きな理由の一つが、データのサイロ化だ。マーケターを取り囲む環境には、既にたくさんのデータソースが存在し、その数は年々増えている。持てるデータが多くなるのはいいが、それらが分断されたままでは、 顧客の行動を横断的に理解することはできない。故に第一歩として「現にサイロ化してしまっている状況を変え、データを一元的に集めてきてリアルタイムにアクセスできるようにすることが必要」と東條氏は語る。SnowflakeはDWH(データウェアハウス)を軸にデータ分析の基盤全般をSaaSとして提供している。

 1カ所にため込んだデータを分析し、使えるようにするために整える必要がある。よく知られているのが、日付の形式をそろえたり表記ゆれをなくしたりといったデータクレンジングだ。これに加え米田氏は「集めたデータに意味付けをするタクソノミー設計が重要」と指摘する。例えば購買行動を見るとして、アプリでは購入ボタンを押すこと、Webサイトではサンクスページが表示されること、店舗ではレシートがでてくることといった具合に、チャネルによって購買の定義がまちまちなことがある。それぞれのアクションを、購買という同一イベントにひも付けるのがタクソノミー設計だ。

 グロースマーケティングを始めるに当たって社内の全データを統合しようとなると時間もコストもかかる。ステークホルダーとの調整が必要なケースもあるだろう。高速に施策が回せなければグロースマーケティングにならない。東條氏が推奨するのは「まずチーム単位で、できるところから小さく始める」ことだ。スモールスタートであれば失敗をしてもダメージは少なく学びを得やすい。ノウハウが蓄積されれば横展開もしやすくなる。急がば回れではないが、結果的に全社的な取り組みも早く進むことにもつながる。

 笹氏は「何のためにデータ集めるかをチームで整理して、それに必要なデータは何かと逆引きで考えることも重要」と語る。やみくもにデータを集めて施策の数だけ増やすのは本末転倒だ。

データの民主化に必要なこと

 笹氏は、一元化したデータを社内の誰の手にも届くようにすることも必要だと付け加える。書籍ではこれを「データの民主化」と呼んでいる。現実社会での民主化に法律が必要なように、データを民主化するためにも共通のルールが必要だ。「組織を横串にしてルールを整備する役割が求められる」(笹氏)

 データの取り扱いスキルは人それぞれだ。誰もがデータサイエンティストのようなスキルを会得することは現実的には無理だ。東條氏は「これまではテクノロジーがデータの一元化を許さなかったが、今はそれができるようになってきた。使いやすいツールの導入を選択肢に入れるのも民主化の一歩」と語る。

 誰でもデータにアクセスできるとなると今度はガバナンスやセキュリティ、ユーザビリティも課題になる。だが、東條氏はそれについてもテクノロジーで解決できることたくさんあると考えている。「例えば『月曜朝9時問題』。週の初めに出社してBIツールを立ち上げるとすると、重くて反応が返ってこない。これはツールではなく裏側に問題がある。こういう点のモダナイズも必要。多くの人が使ってこそデータの価値が引き出せる」(東條氏)

 米田氏のAmplitudeは全世界1万2000社以上が利用するユーザー行動分析ツールを提供している。導入企業の中には5000人規模の従業員が分析に取り組む例もある。「誰でもアクセスできる環境整備が必要。ツールもいろいろ。自社に合った最適なツールを選ぶことが大事」(米田氏)

データの民主化の先にあるもの

 誰でもデータを分析できることで、各部署がそれぞれの分析ニーズに応じてトライアンドエラーをしやすくなる。「さまざまなデータの掛け合わせによるコンテクストを見ていくことが重要。マスセグメントを割り出すというより、マイクロセグメントからコンテストを見いだしてトライアルアンドエラーを繰り返しつつ施策を回していく時代」と笹氏は語る。

 データの民主化について東條氏はビジネス創造という視点からも可能性を感じている。「現在データを消費する側、恩恵を受ける側が、外に対して価値のあるデータを生み出していくこともできる。そこから収益を上げられるかもしれない」(東條氏)。

 利用範囲を明確にして適切に利用許諾を得た上で自社の持つデータを外販できるようになり、データの流通が広がれば企業の枠を超えて日本の競争力強化につながっていく可能性もある。Snowflakeは、自社のガバナンス下にあるデータ資産をSnowflakeユーザー企業向けに販売することのできる「Snowflake Data Marketplace」を用意しており、さまざまな企業がアプリストアのような手軽さでデータセットを販売できるようになることを目指している。

グロースマーケティング成功事例

 最後にグロースマーケティングの成功事例を紹介された。

 米田氏が取り上げたのはFacebookのマジックナンバーの話だ。マジックナンバーとは、ユーザーが特定のアクションを規定回数実行すると収益が上がったり継続率が上がったりする数字のこと。Facebookでは、「ユーザーが10日間に7人の友だちを作ると継続率が飛躍的に上がる」という法則を見いだしている。SNSは友だちが次々とコンテンツを公開してくれるところに醍醐味がある。それがないとだんだん飽きてくる。飽きられないためには必要なのが10日以内にでくる7人の友だちなのだ。こういう特徴量を求めていくのがユーザー行動分析だ。

 「はまったきっかけを知るにはまずはまっている人を抽出し、一方で特定アクションを選択して重なり合っている部分に注目する。さまざまなアクションで重なりをも求め、重なりが最も大きいところを見つける。こうして見つかったマジックナンバーは未来につながる先行指標になる。これが本来のデータの使い方。日本ではまだ過去のデータを集計するだけで終わっていることが多い」(米田氏)

 笹氏はSalesforce導入企業であるオランダ発の紳士服ブランド「Suitsupply」の事例を紹介した。実店舗とEコマースの両方でビジネスを展開するSuitsupplyは、オンラインとオフラインで顧客データを統合し、プロファイルを可視化している。店舗では接客に当たる従業員が来訪客の購買履歴、トータル消費額から平均単価、最終発注場所、好み、サイズ、開封したメールやチャット履歴などの情報を専用端末で把握することができる。これによって目の前の人の求めているものを理解し、適切なレコメンドをすることができる。同じデータはコンタクトセンターも共有している。購入後はお直し完了の連絡やレビュー依頼など、店舗で応対した従業員の名前でメールが飛ぶ。「いわゆるOMO(Online Merges with Offline)の成功例。裏側ではSalesforce Marketing CloudとCommerce Cloud、Service Cloudが連携している。同じプラットフォームに載ってきてもらえれば、ツールが分断されてスピードが落ちることなく施策を回せる。オフラインも含めたデータ連携も可能になる」(笹氏)

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