日本のエンターテインメント&メディアビジネスが「サブスク」の時代に生きる道とは?:識者が語る(1/2 ページ)
メディアの時代からコンテンツの時代へ。コロナ後のエンターテインメント&メディア業界が生きる道とは。
PwC Japanグループは2021年4月23日、メディア向けセミナーを開催。エンターテインメント&メディア(以下、E&M)業界に関する年次グローバルレポート「Global Entertainment & Media Outlook 2020‐2024」を基に、各界の有識者を交えてパネルディスカッションを実施した。パネルディスカッションのテーマは「エンタテイメント&メディア業界の日本企業が生き残るための3つの戦略〜産学官民の目線で捉えた変化の予兆と今後の展望〜」。ゲストは経済産業省コンテンツ産業課長の高木美香氏(「高」ははしごだか)、特定非営利活動法人映像産業振興機構 専務理事兼事務局長の市井三衛氏、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授でメディア・スタジオ代表取締役の稲蔭正彦氏。本稿ではそのハイライト部分を紹介する。
前倒しで訪れる新たな世界
「Global Entertainment & Media Outlook 2020‐2024」によると、2020年における世界のE&M総収益は前年比5.6%減少し、金額換算では1200億米ドル超の減少となる。これは21年間の定点調査の中で最大の落ち込みとなる。しかしながら、2021年においては一転して6.4%増と急回復し、2019〜2024年の年平均成長率は2.8%で推移する見通しだ。
PwCはこの状況を「前倒しで訪れる新たな世界」と呼ぶ。コロナ禍という想定外の危機をきっかけに、エンターテインメント&メディア業界がもともと取り組むべきとされていたデジタルシフトを一気に進展させ、被ったダメージを上回る成長領域が出現しているというのだ。
また、コロナ禍以前には常に広告支出が消費者支出を上回っていたが、2020年はこの関係性が逆転した。これはつまり、E&M企業が人を広告やプロダクトに注目させることのみならず、体験やコンテンツを消費者に直接提供するモデルを必要としていることを意味する。
コロナをきっかけとする消費者行動の変化は業界に大きな変化をもたらす。音楽はコンサートやフェスなどへの参加からオンラインストリーミングのライブパフォーマンスへ、映画は映画館からオーバーザトップ(OTT)プラットフォームへ、B2Bの展示会さえもバーチャルイベントへのシフトが進んでいる。
2020年において大きく開いたデジタルと非デジタルの差は今後も拡大する。E&M企業はこの時期に成長を確保すべく、広告から定額制のサブスクリプション型サービスへのシフト、VRや5Gなど新たな技術への投資といった、消費者の嗜好に合わせたアプローチを導入していくことが求められる。
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