ライフネット生命が13年間で培ったオンライン専業ならではの「顔が見える接客」とは?:「非対面」でも成長できる
既存のビジネスがデジタルを起点としたものに生まれ変わる上では、カスタマージャーニー全体を最適化して永続的に収益を生み出すプロセスの構築が求められる。具体的には何をすればいいのか。先駆者の取り組みから成功のヒントを探る。
ライフネット生命保険(以下、ライフネット生命)がオンライン専業の生命保険会社としてスタートして13年。開業時は死亡保険と医療保険の2つの商品だけであったが、現在は就業不能保険とがん保険が加わり、4種類の保険商品を主にWebサイトから販売している。
テクノロジーを活用して顧客体験を高める同社の取り組みは順調な業績につながっている。2020年度上半期の業績は過去最高を記録。下期は一時やや足踏みしたが、2021年1月には新契約件数9716件と、再び大きく伸びた。これは月間の数字として過去最高であった2020年4月に次ぐ業績だ。
対照的に、同業他社の多くは現在、苦境に陥っている。理由はもちろん新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行だ。コロナによる死亡保険金や入院給付金の膨らみは日本国内では限定的とみられるが、グローバル展開する企業では無視できない影響を受けている。金融市場の混乱で運用成績も芳しくない。何よりも、対面活動がままならないのが痛い。日本経済新聞2020年11月25日付朝刊によると主要生保14社の2020年4〜9月期における新規契約収入は、前年同期比42%減に終わっている。
未曾有のピンチを乗り切るために各保険会社は今、顧客体験向上とそのためのデジタルトランスフォーメーション(DX)にまい進している。同様のトレンドは他業界でも広く見られる。デジタルファーストで顧客と向き合い、事業を成功させるためのポイントはどこにあるのか。ライフネット生命でCXデザインをリードするキーパーソンに聞いた。
若いターゲットへの訴求に必要なこと
「正直に わかりやすく、安くて、便利に。」
ライフネット生命が掲げるマニフェストはシンプルにして明快だ。そして、これは従来の生命保険について顧客が持つペインポイント(悩み)の裏返しでもある。
生命保険といえば、外交員がオフィスや自宅に売りにくるものというイメージがいまだに強い。外交員が薦める特約が本当に自分に必要なのか判断しかねたり、セールストークに押されて何となく契約したものの実は契約内容を正確に把握していなかったりする人は少なくないのではないか。
また、顧客ごとにアポを取って訪問する労働集約型の営業スタイルはそのままコストとして跳ね返り、保険料の高止まりにつながっている。一人一台のスマホ所有が当然となった今日においては、対面接客よりもむしろ、知りたいことがあるときにすぐ調べたり問い合わせができたりする仕組みが整っていてほしいという人も多いだろう。
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