月朝にダッシュボードを見て夕方に打ち手が決まり火曜に実行 アドビのサブスクビジネスを支える「DDOM」とは:【新連載】アドビ流データドリブン経営への道(1/2 ページ)
ソフトウェアの提供形態をパッケージ販売モデルからサブスクリプションモデルへ転換させ、見事に成功を果たしたアドビ。変革を支えたデータドリブン経営の根幹を支える仕組みとはどのようなものか。
データドリブン経営を実践したいと考える企業が日本でも増えてきました。
私たちアドビは、お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する会社です。それと同時に自ら変革を実践してきた会社でもあります。もともとクリエイター向けソフトウェアを売り切り型で販売していたアドビがビジネスモデルをサブスクリプション型に転換させたのはご存じの通りです。私は2001年にアドビに入社し、2011年に始まったビジネスモデル変革を体験しました。
これからデータドリブン経営で大きく成長する日本企業が増えていくよう、この連載ではアドビがDDOM(Data Driven Operating Model)という仕組みで経営を行うに至るまでの歩みと、その過程で学んだことを紹介します。
第1回のテーマとして取り上げるのは、DXに取り組む企業との対話を通じてあらためて認識したデータドリブン経営の必須条件です。
執筆者紹介
西山正一
にしやま・しょういち アドビ デジタルメディア事業統括本部 営業戦略本部 執行役員 本部長。2001年にアドビ システムズに入社。Web製作アプリケーションやDTPアプリケーションの製品担当を経た後、「Adobe Creative Cloud」のマーケティングを担当。2017年6月に営業部に異動し、現在はアドビの直販ビジネスおよび販売戦略立案の責任者として、アドビのデジタルマーケティング技術をフル活用しながらアドビのデジタルメディア製品の販売に携わっている。
アドビが実践してきたことを伝える意味
アドビに入社して以来、私は一貫してアドビのデジタルメディアのビジネスに携わってきました。現在は「Adobe Creative Cloud」と「Adobe Document Cloud」を扱うデジタルメディア事業統括本部に在籍し、Eコマースを中心とする営業戦略を立案し、実行するチームのリーダーを務めています。今は営業側でEコマースチームが売上を伸ばすサポートをする立場ですが、それ以前はマーケティングとしてEコマースチームの売上を伸ばすサポートをしていたので、両方の経験があることになります。2020年12月から、日本を含む世界のデジタルメディア事業の営業トップはCEOのシャンタヌ・ナラヤンに直接レポートする体制に変わりました。CEOがこのビジネスを重視していると考えると、私たちも身が引き締まる思いです。
最近、普段の仕事とは別に「DDOMの話をしてほしい」とお声掛けをいただき、直接その企業に出向いて話をする機会が増えています。それぞれの企業が抱えている課題はさまざまですが、主に2つのパターンに分かれます。その1つに、あらゆる業種でデジタル化が進む中、自社がどうすべきかを整理したいと考えている企業がいます。アドビがデータドリブン経営に投資をして、どんなことを実現したのかを知りたい。デジタルに投資をしているけれども、このままでいいのか。外部からの客観的な意見を求めているケースです。例えば、ある企業の社内セミナーの講師として呼ばれた時は、参加者の多くを営業が占めていました。今まで重視してきたハイタッチセールスとEコマースでは正反対の仕事のやり方が求められます。デジタルで具体的に何をするのか。そこにアドビの知見を必要としていました。
もう1つの例はアドビ自身がデジタルに投資を行い、ビジネスモデルを変えて成功したことを知っていて、どんな取り組みを進めてきたのか。その詳細を聞きたいという企業です。新規事業を立ち上げようとすると、これまで培ってきた成功体験は役に立ちません。今までとは全く違うお客さまとの関係構築から始めなくてはならないことも多々あります。特にコロナ禍においては、リアルの販売チャネルからデジタルへのシフトが進みました。データを使って何とかならないか。そう考えた企業のトップからお声がけをいただき、経営会議のゲストに呼ばれました。社長以下、多くの役員からさまざまな質問にお答えし、お客さまとの新しいエンゲージメント構築と維持の方法を模索していると気付きました。感染拡大が始まった2020年の3月頃を振り返ると、マスク、ガウン、手袋などの個人用防護具の品薄が続いていたことは記憶に新しいところです。異業種からこの分野のビジネスに参入した企業は、同じ思いを抱えていたのではないかと推察します。
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