「RED」「Bilibili」「Douyin」他 中国の主要SNSプラットフォームの特徴まとめ:中国マーケティングの「壁」を乗り越える【第3回】
トレンド変化の大きい中国においてマーケティングを成功させるためには、主要SNSプラットフォームにおける適材適所の施策が欠かせない。中国SNSの最新状況をまとめた。
情報発信をするSNSにも変化が起きている。従来は「Weibo(微博)」や「WeChat」を活用することが一般的だったが、中国のインターネットユーザーの増加やコンテンツの多様化に伴い、現在は用途に応じて多くのSNSが利用されている。
以下の表は中国の主要SNSプラットフォームの利用状況をまとめたものだ。
特にこの1〜2年で情報発信が急増しているSNSは「RED(小紅書)」「Bilibili(哔哩哔哩:ビリビリ)」「Douyin(抖音:ドウイン)」である。以下、その一つ一つについて解説する。
Weiboは、2009年にサービスが開始され、中国本土のユーザーに長らく利用されているアプリである。2020年第2四半期の月間利用者数は、5億2300万人と前年対比で2300万人増加している。他のSNSと比べて拡散性が高いことが特徴である。また、ハッシュタグを活用することで、一つの情報に対して多くのユーザーが投稿・コメント・閲覧し、話題を作ることができる。Weibo上ではKOL(インフルエンサー・タレント)や最新情報などが話題になることが多い。日本人タレントの結婚などについてもWeibo上のホットトピックに挙がることもある。
企業のマーケティング施策においては、KOL(Key Opinion Leaderつまりインフルエンサーやタレントの起用が有効である。KOLが発信した情報をハッシュタグやWeibo広告を活用して広めることで、商品・ブランドの認知向上や話題作りにつなげることができる。
Weiboは、機能面では2020年にAlibabaが提供開始したライブコマースアプリ「淘宝直播」との連動により、ライブコマースの事前告知やライブ視聴が可能になっている。今後Weiboにとってライブコマースをはじめとした「動画」が1つの注力キーワードになる。
WeChatは、友人・知人とのコミュニケーションをはじめ、企業やメディアアカウントからの情報収集、WeChatPayを活用した決済など、さまざまな場面で利用されるスーパーアプリだ。WeChat内で起動するダウンロード不要のミニアプリ「ミニプログラム」を提供していることも特徴だ。企業・ブランドはそれぞれ独自のミニプログラムを展開することにより、WeChat内でサービス提供が可能になる。
中国マーケティングにおいては、「私域流量」という手法が注目されている。これは、WeChatの公式アカウントやグループチャット、ミニプログラムに加え、各社が保有している独自の会員プログラムや自社メディアへのトラフィック流入を重視するものだ。私域流量は主に既存顧客やその友人などを対象として、より効果的なマーケティングが可能になるとして注目されている。
私域流量に対する手法が「公域流量」だ。こちらはECサイトやニュースサイト、WeChatを除くSNSを活用してオープンな場で情報発信することで、大きなトラフィックを獲得する手法を指す。どちらが有効というわけではなく、公域流量と私域流量の両軸でマーケティングを実践し、新規顧客の獲得から既存顧客のリピート獲得まで幅広く取り組むことが重要となっている。
RED
REDは、都市部に住んでいる10代後半〜30代の女性を中心に人気のSNSだ。中国で人気のタレントやKOLも多く利用しており、3000万人を超えるユーザーがコスメ、ファッション、旅行、グルメなどの写真や動画をREDに投稿している。REDはタレントやKOLのライフスタイル、彼らが使用している商品の情報を収集したり検討しているサービスや商品の口コミを調べたりするために利用されている。日本におけるInstagramの使い方に近いといえる。
他の媒体でKOLなどを活用して商品の話題や露出を増やしても、彼らがRED上で何も投稿していないとユーザーの不信感につながってしまう。このため、REDにもたくさん投稿がある状態が理想だ。もちろん、数だけそろえれば十分というわけではない。実際に商品やサービスを体験してもらい、信頼性・真実性のある投稿を増やしていくことが重要なのである。
REDでは動画コンテンツが増加している。2020年上期の動画投稿数は前年比223%と大きく成長した。動画投稿はユーザーからの反応が良く、画像投稿に比べて閲覧数やいいね数が伸びる傾向にある。投稿されるコンテンツも、もともと人気があった化粧品だけでなく、エンターテインメント、食、ライフスタイルなど、さまざまなジャンルに拡大してきた。今後REDを活用したマーケティングを検討している日本企業としては動画を重視していくべきと考える。
Douyin
日本などで使われている「TikTok」の中国本家アプリであるDouyinは、この数年で最も利用者が増加した注目のSNSだ。2020年下期時点で日別利用者数は6億人を超えている。
TikTokというと若年層が利用しているイメージが強いが、Douyinは10〜40代まで幅広いユーザーが利用している。また、ショート動画のプラットフォームとしてサービスを開始した点はTikTokと同じだが、2019年以降はライブコマースにも注力している。以前はDouyinの画面から外部のECサイトへ誘導することしかできなかったが、現在はライブコンテンツ視聴から商品販売までDouyin内でスムーズな誘導を実現している。
Douyinは拡散性の高いプラットフォームであるが故に、他のSNS以上にKOLを活用したマーケティングが広く行われている。ファン数300万人以上のトップKOLが起用されるケースも多い。食品・飲料など、ショート動画やライブコマースと相性が良い商品を広くプロモーションする際に活用できる。
Bilibili
Bilibiliは、2019年後半からZ世代を中心に利用者が増加している。2020年4〜6月期における月間利用者数は1億7200万人と、前年対比で55%ほどの成長を遂げた。また、UP主と呼ばれるBilibiliの動画投稿者数は180万人で、前年対比で123%も増加している。動画投稿者数・利用者数の増加、一日当たりの動画視聴時間の増加(2020年4月〜6月期では79分)など、プラットフォームの成長において非常に良いサイクルに入っており、今後も伸びていくことが見込める。
視聴されているコンテンツにも変化が起きている。従来はACG(アニメ、コミック、ゲーム)がメインだったが、最近はACGに加えてライフスタイル、コスメ、エンターテインメント関連など、幅広いコンテンツが視聴されている。中国Z世代のライフスタイルの多様化やニーズの変化が、視聴されるコンテンツにも影響を与えており、YouTubeに近いプラットフォームへと変化している。また、コンテンツの多様化に伴い、さまざまな広告主がZ世代向けの媒体として広告出稿を増やしていることにも注目すべきだ。
Bilibiliでは日本のアニメなどのコンテンツが人気であり、利用者も他のSNSと比べて日本文化や日本関連のコンテンツに興味がある層が多い。日本企業が中国マーケティングを行う媒体として今後重視すべきと考える。
企業の広告では、チャンネル登録者数が10万〜50万の中堅KOL(※注)の起用が全体の割合として多く、圧倒的な影響力を持つKOLを活用しての広範囲への情報拡散というよりは、Weiboなどで既に情報が拡散された商品に対して、さまざまな切り口での動画コンテンツを増やし、ユーザーの検討の場、ユーザー間でのやりとりの場として活用していると考えられる。
※注:BilibiliではUP主の影響力について、チャンネル登録数1万〜10万未満をマイクロ、10万〜50万未満を中堅、50万以上をトップと定義している。
中国SNSは、中国国内における競争が激しくトレンドの変化が大きい。新しく登場したSNSが急成長したり既存SNSの仕様や方針が大きく変わったりすることも、よくある。その変化のスピードはSNS大国ならではといえる。
故に、他社の成功事例を基に取り組みを行っていても、変化に乗り遅れてしまい効果的な成果を得られないというケースも起こり得る。そのため、日本企業が中国市場でマーケティングを展開していく上では、中国国内のトレンドを的確に捉えた上で取り組む必要がある。
執筆者紹介
番匠達也
ばんしょう・たつや 2011年にアライドアーキテクツ入社。口コミ生成・活用サービス「モニプラ ファンブログ」の拡販に従事、営業として中小企業向けにSNSマーケティング支援を行う。2014年に同社として最年少で営業部門の局長に就任。2015年、日本企業の中華圏へ向けたマーケティング支援を行う事業部の立ち上げを行う。2018年4月、グループ会社であるVstar Japanの代表取締役に就任。YouTuberなど日本人の動画クリエイターの中国進出を手掛けている。
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