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トレジャーデータの4つの新戦略 「D2C」や「脱Cookie」でCDPに期待されることとは?新体制でスタート

新生トレジャーデータの新戦略キーワードは「APAC」「人材育成」「エコシステム」「カスタマーサクセス」の4つ。

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トレジャーデータ社長執行役員の三浦喬氏

 Treasure Data日本法人のトレジャーデータは2020年11月5日に記者発表会を実施した。2018年のArmによる吸収合併の後Armのデータ事業部門となっていたTreasure Dataだが、2020年10月にArm子会社として独立。同時にCEOや日本法人社長が交代した。今回、新体制になってから初めての発表会で、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)市場の概況と今後の戦略について、新たにトレジャーデータ社長執行役員に就任した三浦喬氏が語った。

急成長市場で確固たる地位を築いたTreasure Data

 米国のCDP Instituteがまとめた「Customer Data Platform Industry Update January 2020」によると2019年現在、世界のCDP市場にはAdobeやOracle、Microsoft、Salesforceを含む101社のベンダーが参入している。その中にあってTreasure Dataが提供する「Treasure Data CDP」は、ClickZとSearch Engine Watchが主催する世界的なマーケティングイベント「The Marketing Technology Awards 2020」で「最優秀カスタマーデータプラットフォーム(CDP)」に選出されるなど、この領域において確固たる地位を築いている。

 日本国内に限ればCDPシェアの9割超(CDP Market share. by Datanyze.)、プライベートDMPまで含めても4割以上をTreasure Data CDPが占めている(ITR「ITR Market View:メール/Webマーケティング市場2020」のプライベートDMP市場:ベンダー別売上金額シェア2019年度予測)。導入実績も着々と積み重ねており、Forbes Global 2000(The world Largest public company)に選出されている国内企業218社(2020年度)のうち50以上がTreasure Data CDPを既に活用している。

ますます重要になるCDP

 Digitize or Die(デジタル化か、死か)――三浦氏は、2015年にマーケティング学の権威であるフィリップ・コトラー氏が掲げたスローガンを引用しつつ、それから5年で起こった著しい変化に言及した。デジタルトランスフォーメーションが進む企業と出遅れた企業のギャップはますます拡大している。2020年に世界を襲ったCOVID-19のパンデミックはこの流れをさらに進めた。「強制的なゲームチェンジ。『やるかやらないか』『いつやるか』ではなく『いかにやるか』が論点になった」(三浦氏)

 D2C(製造直販)は今や大きなトレンドだ。加えて、サードパーティーCookie利用を巡るプライバシーの制限という課題もある。ニーズの変化に対応して体験価値向上を図るためには、最適な施策を展開するためのプラットフォームを提供し続けなければならない。プライバシーに関しても、技術・法制度の両面から見直す必要がある。

 また、これまで北米市場を中心にニーズが拡大してきたCDPは今後成長の舞台をAPAC(アジア太平洋)へ移すと予想される。成熟市場である日本で得た知見を、成長市場であるAPACに投入し、次の成長エンジンとしたいところだ。

新生トレジャーデータの4つのビジネス戦略とは?

 三浦氏が語った新生トレジャーデータの新戦略の柱は以下の4つだ。

  1. APAC進出の加速
  2. 人材育成ビジネス開始
  3. CDPのエコシステム強化
  4. カスタマーサクセス強化

1. APAC進出の加速

 新たなビジネス戦略で最も注力するのはAPAC進出だ。日本企業のAPAC展開(日系現地法人)を支援し、主要地域には自前のデータセンターも準備する。2020年9月には既に韓国にデータセンター設立を果たした。もちろん日本企業のみならず、新規顧客としてAPAC現地企業の獲得も進める。まずは韓国、タイ、インドネシアなどの企業が新たなターゲットとなる。

2. 人材育成ビジネス開始

 人材育成ビジネスとしては2020年に開始した有償の「Treasure Academy For CDP Masters」があり、現在までに21社約200人が受講している。ここではCDP導入に携わるエンジニアやビジネス担当者を対象に、データ利活用のノウハウやCDPの活用、DXプロジェクトの全体設計や推進の仕方を習得するためのトレーニングを実施。コンテンツは随時拡充している。

3. CDPのエコシステム強化

 CDPのエコシステム強化としては攻め(D2C/EC施策強化)と守り(データ法規制対応)の両面で促進するため、それぞれにパートナープログラムを用意する。2020年には「Treasure Data Partner Certification Program」として、Treasure Data CDPを活用したシステムの提案や導入支援、コンサルティング、技術サポートなどを行うパートナー企業を対象とした「マスターパートナープログラム」と、自社製品・サービスとTreasure Data CDPを組み合わせたソリューションを提供するパートナー企業を対象とした「テクノロジーパートナープログラム」を開始した。これまでに、23社のマスターパートナーを認定してTreasure Data CDPの活用支援やコンサルティング、技術支援を行っている。なお、テクノロジーパートナープログラムの一環として、CIAM(Consumer Identity and Access Management:顧客ID&アクセス管理)、CMP(Consent Management Platform:同意管理プラットフォーム)、CDP、MA(マーケティングオートメーション)、デジタルコマースを連携させた新たなサービス基盤を構築し、ユーザーニーズに対応したデータ活用によるDXの実現を目指す。CMPに関しては業界大手OneTrustとパートナーシップを締結している。

4. カスタマーサクセス強化

 各戦略を顧客価値に変えるために重要になるのがカスタマーサクセスだ。プラットフォームを強化するのみならず人のサポートを強化してユーザー企業のビジネス価値向上へコミットする。その目的でトレジャーデータでは2020年10月より田村清人氏が取締役CCO(チーフカスタマーオフィサー)に就任、全世界のユーザー支援を統括する。CCO率いるグローバルカスタマーサクセスチームは、既存ユーザー企業のうち特に日系企業の現地法人において課題となっているアジアとグローバル展開の支援を強化する。CCOが各エリアのカスタマーサクセスチームと連携し、ユーザー企業の要望を収集して本国開発チームへの定期的フィードバックを行う。

競合ひしめく中でのTreasure Dataならではの強み

 三浦氏は「Treasure Dataは2011年からの創業期にビッグデータプラットフォーム(Hadoop as a Service)として発展し、2016年からの成長期に世界一のCDPベンダーになった。2020年からは発展期。DXを支えるエコシステムとして成長したい」と語る。

 冒頭の市場概況にあったように、大手ベンダーも続々とCDPをリリースしている。各社とも独自のCDPを基盤にアナリティクスやマーケティングオートメーションなどさまざまな機能を一つのプラットフォームで一気通貫に実現できることを強みとしている。これについて三浦氏は「Treasure Dataはデータのプラットフォームとして非常に力強いコンピューティングリソースを持つエンジンを用意している。データをうまくハンドリングできるシステムであり、エコシステムとしてもわれわれの製品からのデータのインプット、アウトプットは数百に及ぶ。さまざまなベンダーのプロダクトとつなげられることこそが強み」と語り、市場の先駆者としての自信をのぞかせた。

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