2時間配送を実現した「Walmart」他、米国のオンラインショッピングアプリが熱い:世界のモバイルアプリトレンドを読む
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による外出自粛は世界的なトレンド。これに伴いオンラインショッピングの市場が急拡大しています。
この連載について
Airnow(旧社名appScatter)傘下のPrioridataのスマートフォンアプリ市場分析データを使い、世界のアプリの動向をさまざまな切り口から探ります(執筆者の所属するインターアローズはAirnowの日本総代理店です)。
通常、MAU(月間アクティブユーザー)やDAU(日間アクティブユーザー)はアプリに実装された測定用SDKを使い、モバイルアプリユーザーを調査パネルとして推定値を出しますが、Prioridataは傘下のAirpushおよびデータパートナーとの提携により、デベロッパーおよびパブリッシャーデータとトラッキング対象デバイス35億のビッグデータを活用してMAUやDAUを算出しています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が特に深刻な米国では2020年3月以降、全土においてショッピングモールが閉鎖されました。5月になってやっと部分的にサービスが再開しましたが、その間にJCPenneyやNeiman Marcusといった有名百貨店、アパレル大手J.Crewなど名だたる企業が破産申請に追い込まれました。その他、老舗百貨店のNordstromとSears、ドラッグストアのWalgreen、アパレルのVictoria's Secret、家具のPier 1 Importsなども破産または大規模な店舗閉鎖を発表しています。年内に閉鎖される米国総店舗数は1万2000店に及ぶという予測もあり、雇用やテナント料など波及的な損失も含めると、米国経済へ与える影響は深刻なものとなるでしょう。
米国文化の豊かさの象徴でもあったショッピングモールとその存在を前提とした消費文化が今、否応なく変容を迫られています。それと軌を一にして急伸しているのがオンラインショッピングです。今回はAirnow Priori Dataの解析を基に、米国における2020年4月度iOSショッピングアプリのダウンロード数TOP10を紹介します。
Shopifyが公開する宅配トラッキング管理アプリ「Shop」とは
最もダウンロード数が多かったのはやはりAmazon.comの「Amazon」ですが、この絶対的王者に続いたのが、2017年からShopifyが公開する「Shop」です。これは注文商品の配送状況をライブと地図で確認できる宅配トラッキングアプリで、「Shop Pay」による決済の一元化や注文履歴からのレコメンデーション機能も備えています。配送番号の入力などが不要なだけでなく、分単位の正確さで商品の到着を確認できる点が評価され、ネットショッピング需要増と呼応して、前月比91%の拡大を記録しました。
コロナ禍においてAmazonにも負けない勢いを見せているのが米国小売大手のWalmartです。3位の「Walmart」と7位の「Walmart Grocery」の両アプリをランクインさせました。
Eコマースが日本よりはるかに進む米国ですが、それでもこれまでは日用品・食品までオンラインで購入する消費者は少なく、新型コロナ感染拡大前の食品のオンラインショッピング率は2〜3%にすぎませんでした。しかし最近ではそれが10〜15%まで拡大しているといわれています。
Walmartは米国内に4000以上の実店舗を展開しています。このオフラインの強みとオンラインショッピングを上手に結び付けたのが勝因といえるでしょう。消費者は店舗受け取り(無料)とデリバリー(1回8ドル)を選び、ストアカードやクーポンを使って賢く安全に買い物ができるのです。
ダウンロード数推移を見ると、クリスマス商戦時期に総合ショッピングアプリである「Walmart」が大きく伸び、外出制限時にも2回目の山ができています。一方、食料品専門の「Walmart Grocery」は横ばいの推移が続いていましたが、外出制限後に大きく伸長しています。食料品や日用品の購入が実店舗からネットへ移行しつつあることが、この動きからも分かります。
Walmartはさらに進化を続けています。新しく始まったサービス「Express Delivery」では、食料品を含む16万点以上の注文品をわずか2時間で配送します。割増配送料は10ドル加算、全米2000店舗がサービス拠点です。
米国のテック系メディア「VentureBeat」の記事(外部リンク/英語)によるとこの2時間配送サービスには最先端のAIシステムが利用されており、Walmartの74000人の優良顧客へのレコメンデーションから在庫管理、配送最短ルートなどをAIがリアルタイムで決定していくということです。Walmartは今後、一般用品と食料品に分かれていた2つのアプリを統合し、さらにユーザーフレンドリーなアプリへと変える予定です。
変化に遅れた多くの小売業が今まさに消えつつあります。老舗企業も例外ではありません。一方、決済やロジスティクスを含めオンラインとオフライン双方でテクノロジーを活用して機敏に動く企業は、ますますビジネスを拡大しています。技術革新を競い合う体力が最後まで続く企業はどこか、ポストコロナを見据えた生き残り合戦は既に始まっています。
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