データに基づく意思決定ができる企業の組織と文化:「データトレンドレポート 2020」解説(後編)(1/2 ページ)
アナリティクスとデータ活用の将来を左右する主要トレンドを分析したTableau Softwareの年次レポート「データトレンドレポート 2020」解説後編。
Tableau Softwareが2020年3月に発表した「データトレンドレポート2020」では、アナリティクスとデータの活用に関して以下6つの主要なトレンドを取りまとめている。
- データリテラシー:組織は教育機関をデータリテラシーインキュベーターとして位置付ける
- 人工知能(AI):AIは抽象的な概念から実用化可能な技術に変化する
- データのストーリーテリング:パーソナライズされたデータストーリーが今後の主流になる
- データの公平性:職場のデータの透明性の確保が公平性と組織の成功につながる
- データカルチャー:経営幹部全体にデータの説明責任が求められる
- データ管理:データ統合がIT部門の企業の調和を推進するものになる
後編では太字の4つのトレンドについて、前編に続きTableau Softwareで日本のカントリーマネージャーを務める佐藤 豊氏が解説する。
佐藤 豊
Tableau Softwareカントリーマネージャー(日本)。デル、レッドハット、F5ネットワークスジャパンなどをへて2013年にTableau Software入社。エンタープライズ本部長を務めた後、2018年4月より現職。
データを基にストーリーを描く力
第3のトレンドとして挙げた「データのストーリーテリング」は、最近では新しい学問の分野にもなりつつあります。ビジネスの文脈では、データを基にどんなストーリーを描き、意思決定者に伝えるかという課題につながります。
特に重要なのが、ストーリーをパーソナライズするスキルです。アクセンチュア・インタラクティブの調査では、「87%の消費者が本当の自分を理解しているブランドから買いたいと考えている」ことが分かっています。
ストーリーに裏付けられたアプローチに気持ちを動かされるのは、ビジネスがB2CでもB2Bでも変わりません。顧客エンゲージメントを高めるためには、データストーリーテリングを理解し、ビジネスで実践する必要があります。
その際、最も重要となるのがプライバシーです。プライバシー保護を講じて、顧客の信頼を得ることが、データ活用の大前提といえます。パーソナライズされた体験で顧客に圧倒的な利便性を感じてもらうことが、信頼を得るための近道になるかもしれません。
「データの公平性」実現には組織のD&Iが不可欠
第4のトレンドである「データの公平性」は、組織の中に公平性を確立するためにデータを使うことであり、「同一労働同一賃金」の原則の浸透や女性の管理職登用が遅れている日本企業には実践が難しいところもあるかもしれません。
データの公平性はダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を前提とするものです。Deloitteが実施した調査の結果によると、社員それぞれがお互いを認め合うインクルーシブな組織では、個人のパフォーマンスがそうでない組織と比べて3.6倍高いことが分かっています。
男女それぞれの昇給率、昇格率、報酬のようなデータを見ると、生産性の高い組織ほど、機会、評価、報酬で公平性が保証されています。公平性を裏付けるためにデータを上手に使うというトレンドの裏側には、働く場所をD&Iの観点から見て理想的な組織に変えていこうというトレンドがあります。グローバル企業は組織の成功のためにD&Iに力を入れています。日本企業も、この動きに追随していくと期待しています。
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