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格闘家・青木真也氏と「ONE」がAbemaTVを武器に挑む「熱量の高いファン」の作り方【連載】池田園子の「マーケ目線」 第7回(1/2 ページ)

人気格闘家の青木真也氏がインターネットテレビ局「AbemaTV」とタッグを組み、シンガポール発の総合格闘技団体「ONE」への関心度を高める取り組みを追った。

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 シンガポールを拠点とする格闘技団体「ONE Championship(以下、ONE)」が10月13日、日本では2回目となる大会「ONE:Century 世紀」を東京・両国国技館で開催する。1部(8時30分開始)と2部(16時開始)と昼夜2大会に分かれた、格闘技大会の中でもかなり長尺のものとなる。

 本大会を完全生中継するのが、サイバーエージェント子会社のインターネットテレビ局「AbemaTV」だ。同局の格闘技に特化した「格闘チャンネル」を見ている人であれば、大会CMを目にしたことがあるだろう。


「ONE:Century 世紀」は2019年10月13日午前8時からAbemaTVで15時間完全生中継される(衣装提供:ヨウジヤマモト「Ground Y」)

 AbemaTVでは独自に制作した番組(コンテンツ)を通じて、「ONE:Century 世紀」の認知を高め、新たな視聴者を獲得しようと試みてきた。キーパーソンは2人いる。1人がAbemaTVの北野雄司氏(総合編成局スポーツ/格闘Ch.ゼネラルプロデューサー)、そしてもう1人がONEChampionshipと契約する格闘家・青木真也氏だ。

 青木氏は番組の一出演者としてだけでなく、番組の見せ方や届け方を考える制作チームの一員のような役割も果たしている。ONEというコンテンツの中心にいる人気選手が、AbemaTVというメディア(手段)を通じてONE及びその大会のブランディング(目的)に尽力する姿を視聴者は目にしているのだ。「ONE:Century 世紀」の中継テーマ「舐めんなよ、ジャパニーズMMA。」は、青木氏が発信する月刊Webマガジン(コンテンツプラットフォーム「note」で掲載)に書いた言葉を基にしたコピーだ。

 「青木さんはメディアにヒントをくれる人。積極的に提案してくれたり、自分が出演する番組をいろいろな媒体でプロモーションしてくれたりして、僕たちと“良い共犯関係”を築いています」と北野氏は語る。


サイバーエージェントのイメージキャラクター「アベマくん」を囲んで左が青木真也氏、右が北野雄司氏

格闘家をリアリティー番組の中心人物に

 日本でONEの大会(以下、ONE日本大会)が初開催されたのは2019年3月31日のことだ。2017年に日本でのONEの放送権を取得したAbemaTVは、海外から入ってきた格闘技団体を視聴者にどう届けるか、表現方法を模索していたという。

 「あの頃のONEは、日本でほとんど知られていない印象でした。だから、普通に大会を放送したところで響かない。視聴者に興味を持ってもらえるような見せ方をするために、翻訳作業が必要でした。そこで青木さんのように知名度があり、ソーシャルメディアでの拡散力が高い選手をコンテンツ化し、ONEの認知度を高めることを目指したのです」(北野氏)

 今でこそ青木氏を筆頭にONE所属の日本人選手は増えているが、当時の日本ではONEの知名度は高くなかった。青木氏は「ONEがAbemaTVをパートナーに選んだのは、日本最大のネットテレビ局であり、地上波だと実現不可能で自由度が高く、高品質なコンテンツを作れるからでしょう。2018年4月にパートナーシップ締結を発表(注)したとき、ONEのチャトリ・シットヨートンCEOは『スポーツメディアがデジタルへとシフトするにつれて、より多くの視聴者が従来のテレビメディアよりもライブのデジタルコンテンツを選ぶようになっている。デジタル消費向けのオリジナルで高品質なコンテンツを提供することは今後必要不可欠になる』とコメントしています」と語る。

注:以前よりライブ中継は行っていたが、オリジナル番組などでの本格的な連携は2018年4月のパートナーシップ契約締結後から始まった

 北野氏は青木氏を目玉コンテンツとして捉えている。4年前の生中継で青木氏の敗北を生中継して北野氏は「青木さんのような強い選手にも、浮き沈みがあるんだなと感情移入し、より一層応援したいと思えるようになった」と振り返る。そんなエピソードもあって、青木氏を中心に据えたコンテンツを作り、ONE日本大会への動線を作ろうと決意した。

 「青木さんや格闘家がもともと持っている感情を増幅して伝えることで、視聴者に感情移入してもらうリアリティー番組を作る、という表現方法を考えました。あえて台本は 一切作らず、ストーリーの行方は出演者に委ねています。ネットのテレビ番組では生(ナマ)感が求められていて、過度に作り込んだものは見てもらえない。作り手としてそう実感しています。とがった演出をしつつも、できるだけ生っぽさを残したドキュメンタリーにするために、時間をかけて丁寧に編集しようとは最初から決めていました」(北野氏)

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