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マーケティングは自分に関わる全てを幸せにするサイクル――アドビ 小沢 匠氏が音楽から得た本質チャレンジするマーケター(1/2 ページ)

B2Bマーケター注目のイベント「Bigbeat LIVE」が2019年8月2日に開催される。そこに登壇する気鋭のマーケターへのインタビューをお届けする。

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この連載について

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 ビッグビートの濱口 豊です。私は広告業界で30年、一貫してB2B企業(とりわけIT企業)のマーケティングを支援しています。外資系クライアントとのお付き合いの中、マーケティングの強力なパワーを間近で感じ、日本企業がこの機能をうまく使いこなせば日本の将来に大きなインパクトを与えることができるはずだと考えるようになりました。

 チャレンジするマーケターを応援し続けているビッグビートの根底にあるのは、「マーケティングが変われば経営が変わり、未来がよくなる」という思いです。

 この連載では、そんな「チャレンジするマーケター」たちのキャリアや考え方、生の姿を私とビッグビートのスタッフがご紹介し、マーケターの方々の悩みを解決するヒントや、楽しく仕事をするコツを感じて行動を変えるきっかけを見つけていただきます。


 クラウドを活用したサブスクリプションモデルへの転換をいち早く実行に移したアドビ。今回は、その大変革プロジェクトの立役者であるアドビ システムズ(以下、アドビ) カスタマー ソリューションズ統括本部 プロフェッショナル サービス事業本部 執行役員 事業本部長の小沢 匠氏の元を訪れ、マーケティングの本質について話を聞いた。


アドビ システムズの小沢 匠(右)と筆者(左)

キャリアのスタートは音楽家から

 アドビの執行役員ともなれば、外資系コンサルティングファーム出身か、あるいは米国の大学院を卒業したMBAホルダーかと思いきや、小沢氏は元音楽家なのだという。

 3歳からバイオリンを始め、クラシック一筋で武蔵野音楽大学に進学。しかしある日、母親に連れられて聴きに行ったジャズバイオリニストのステファン・グラッペリの追悼コンサートで、初めてジャズに出会った。ここから小沢氏の人生は急転することとなる。

 ジャズに魅了された小沢氏は大学にはほとんど行かず、六本木のジャズバーに入り浸るようになる。そこで周りの大人たちから「ジャズをやりたいなら絶対にバークリー音楽院へ行け」と強く勧められ、大学を中退してバークリー音楽院のあるボストンへと飛んだ。

 「演奏で食うのはとても厳しい。映像音楽で稼ぎながら好きなことをした方がいい」と日本の師匠にアドバイスを受けていた小沢氏は、バークリーでは映画音楽作曲を専攻し、映画やテレビなどの映像に音を付ける技術を学んだ。

 バークリーを卒業後、小沢氏は音響効果の仕事を求めてニューヨークに渡った。ニューヨーク大学をはじめ、映画を学べる学校を見つけては、“Need music for your film?”という短いメッセージと自分の連絡先を書いたメモを張る日々。そこから連絡が来た仕事を受けているうちに、スタート時は無報酬だったのが1作品につき100ドル、200ドルと徐々に上がり、2000ドルまでもらえるようになっていった。

 映画音楽家として身を立てる道筋が見えてきた矢先、小沢氏は父親が病気で余命半年だという事実を知る。25歳のときだった。「僕の中に、帰国する以外の選択肢はありませんでした」(小沢氏)

音楽もマーケティングも仕事の本質は同じ

 帰国後、小沢氏は主にNHKの教育番組の音響素材を制作する仕事に就いた。しかし、余命半年と告げられていた父親が、とうとう亡くなってしまった。会社経営をしていた父親には借金があり、小沢氏がそれを返済することになった。

 「正直、金利を返すのも難しかったです」(小沢氏)

週末はバイオリンに関わる仕事をすることにした。給料を上げなくては生活ができなくなるので転職もした。次の職場に選んだエンタメ総合配信サイト「music.jp」を運営するエムティーアイで、小沢氏はマーケティングの仕事に出合うこととなる。

 エムティーアイでは、当時大流行していた着うたや着メロの公式サイトを運営していた。募集職種が「サウンドデザイナー」だったため、小沢氏は音を作る仕事だと思って入ったのだ。

 ところが実際は制作職ではなく、企画の仕事であった。どんなアーティストを選び、どんなページを作り、予算をどう振り分けて、どんな広告に出稿するかといった、まさにマーケティングの仕事である。

 その後、「モバゲータウン」を運営するDeNAに転職し、『怪盗ロワイヤル』を生み出す一員となった。マーケティングの手法で海外のヒットゲームを徹底的に分析し、そこに日本の文化をミックスさせた。ソーシャルゲームというトレンドが巻き起こる瞬間に立ち会うことができた。

 一見、音楽とマーケティングは懸け離れているように思えるが、小沢氏にとっては一貫したものであるという。「僕の仕事の本質は、バイオリンを弾いていた頃からずっと変わっておらず、“お客さまを満足させて、拍手とお金をもらうこと”だと思っています」(小沢氏)

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