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アナログレコード復活の狼煙(のろし) 仕掛け人は電気通信事業者の異端児――オプテージ山下慶太氏イノベーター列伝(1/2 ページ)

新市場の創造を目指す挑戦者を紹介します。

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BRAND PRESS

(このコンテンツはBRAND PRESS連載「イノベーター列伝」からの転載です)

 市場の常識を変えるような華々しいプロダクトやサービスが日々メディアに取り上げられる今日。その裏では無数の挑戦や試行錯誤があったはずです。「イノベーター列伝」では、既存市場の競争軸を変える挑戦、新しい習慣を根付かせるような試み、新たなカテゴリーの創出に取り組む「イノベーター」のストーリーに迫ります。今回話を伺ったのは、アナログレコード売買アプリ「REVINYL(リバイナル)」を生み出した山下慶太氏。関西を拠点とする電気通信事業者オプテージの事業開発推進室に所属する同氏が、異色ともいえる新規事業を立ち上げた理由に迫ります。

学生時代に“商い”の楽しさを知る

 中学時代は、当時全盛だったBRAHMANやHi-STANDARDのコピーバンドを結成して、音楽に夢中になっていました。バンドを始めた理由は単にモテたかったから。思春期真っただ中の中学生男子としては当たり前の動機ですね(笑)。大学に入ってからは「ミュージシャンを目指したい」と親に宣言したほど、本気で音楽に打ち込むようになりました。


山下慶太
オプテージ 事業開発室 REVINYLディレクター。2007年に入社後、営業、人事業務に従事。その後、コンシューマー向けサービスの企画部門でさまざまな商品開発に携わるとともに、新規事業の検討を並行で進める。現在はアナログレコードの再興を目指すプラットフォームサービス「REVINYL」のプロデュース全般を担う。

 バンド活動と同じくらい夢中になっていたのが、アナログレコードの収集です。高校生のとき、有名なレコードショップのロゴ入り袋が欲しくてレコードを買ったのがきっかけでした。大学生になるとなじみのレコードショップに通って、ブラックミュージックを買いそろえるようになりました。レコードを集めるうちに、日本ではプレミアがついているレコードが海外では安く売られていることを知り、個人輸入もしていました。

 やがてバンド活動の熱は冷めたのですが、アナログレコードへの興味はその後もさらに強くなり、ついに小規模ながら輸入レコードを販売する事業を立ち上げました。当然、学業よりも“商い”に夢中になってしまいました。次第に大学に通う回数が減り、ついに留年。最終的には卒業できましたが、しばらく親には頭が上がりませんでしたね(笑)。

活躍の場を移しながらビジネススキルを習得

 ケイ・オプティコム(現オプテージ)を志望した理由は、光ファイバー網を持つ通信事業者の将来性に魅力を感じたことと、もともと同社が提供する個人向けの光ファイバー回線「eo光」のユーザーだったことが影響しています。また、大きな会社に入ることで親を安心させたいという気持ちもありました。

 最初に配属されたのは、提案営業の部署でした。マンションなどの集合住宅の設計セクションに回線の導入を提案する、いわゆるB2Bの営業です。自由気ままな学生時代を過ごしてきたこともあり、営業活動の中で社会の厳しさを痛感する日々が続きましたが、嫌なことがあっても引きずらない自分の性格に助けられたように思います。

 入社して3年後には、人事部への異動が決まりました。自分のような人間がお堅いイメージの人事部に異動するとは予想していなかったので、とても驚きました。

 私に割り当てられた役割は、採用業務でした。担当するようになって、すぐに疑問に感じたことがありました。就活イベントの開催、応募用Webサイトの開設、面接といったように、新卒採用業務はルーティンワークが多いのですが、これでは多様化する学生に対して自社の魅力を十分に伝えることができず、学生一人一人の個性も把握できません。そこで、採用のスキームを大きく変更しました。面接の回数や質問の内容を学生ごとに変えるとともに、アフターフォローも学生ごとに企画してみたんです。その結果はすぐに現れ、内定辞退率を大幅に減少させることに成功しました。

既存事業とは異なる新事業の立ち上げに挑戦

 人事部で3年間働いたあと、コンシューマー向けサービスの企画部門に異動しました。その部門のミッションは、主軸事業である光ファイバー網の顧客獲得につながる新サービスの企画開発でしたが、私はその当時から既存事業とは異なる新機軸を作ることを目的に活動していました。新しい企画を考えては地方自治体やパートナー各社に提案し、事業化を模索する日々が続きました。

 2014年には、メガネ型ウェアラブル端末と連動したアプリ「グラッソン」の開発に携わりました。グラッソンは、マラソンランナー向けに開発したもので、メガネ型ウェアラブル端末を装着したランナーのレンズに5キロごとに通過時刻や平均タイムなどの走行関連情報を表示するほか、ファンからの応援メッセージやコース沿道周辺の観光情報を自動的に配信することができます。

 2014年10月に開催された「大阪マラソン」では、透過式メガネ型端末を提供するソニーをはじめとするパートナーと一緒に実証実験を行いました。紆余曲折もあり商品化には至りませんでしたが、こうした新しい取り組みにはやりがいを感じていました。「試してみよう、やってみよう」という社風が自分に合っていたのだと思います。

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