(このコンテンツはBRAND PRESS連載「イノベーター列伝」からの転載です)
市場の常識を変えるような華々しいプロダクトやサービスが日々メディアに取り上げられる今日。その裏では、無数の挑戦や試行錯誤があったはずです。「イノベーター列伝」では、既存市場の競争軸を変える挑戦、新しい習慣を根付かせるような試み、新たなカテゴリーの創出に取り組む「イノベーター」のストーリーに迫ります。今回話を伺ったのは、町工場向けに遊休設備のシェアリングエコノミーのサービスを展開するシェアリングファクトリーの代表取締役社長 長谷川 祐貴氏。工場間で設備や機器などの貸し借りを可能にするというユニークなアイデアの発案に至るまでの道のりを伺いました。
ものづくりの町で育ったことが原点
小学生のころから算数が得意で、高校でも理数コースを選択していました。大学も理学部に進むという生粋の理系です。学生時代は、本を読みあさっていました。ジャンルを限定せずに、“情報をインプットすること”を目的にあらゆる種類の本を読んでいました。読書を通して出会った偉人の中で特に感銘を受けたのは坂本龍馬です。彼のように「生まれたからには命を懸けて何かを成し遂げたい」という思いは、いまでも常に心の中に持っています。
長谷川 祐貴
1998年日本特殊陶業入社。半導体部品事業部に配属後18年以上にわたり、オーガニックパッケージと呼ばれるPCのCPU向け商品の歩留まり改善や工場の立ち上げ等のし術部門を主に担当。2013年には中小企業診断士の資格を取得。その後、2016年のオーガニックパッケージからの撤退を機に社内新規事業プロジェクトに公募。2018年に設立した社内初の新規事業子会社シェアリングファクトリーに従事。
自分の将来について真剣に考えるようになったのは、就職活動がきっかけでした。ものづくりが盛んな名古屋で育ったこともあり、「ものを作ったり売ったりすることで人の役に立ちたい」という思いが強くなり、製造業に絞って就職活動を展開。愛知県内での就職を考えていたこともあり、自動車用点火プラグやセラミックスの製造・販売を手掛ける日本特殊陶業へ入社しました。
中小企業診断士の資格取得に挑戦
入社後に配属されたのは半導体パッケージ事業部でした。不良の改善などを担当した他、新工場の立ち上げという大きな仕事を任されたこともありました。
日本特殊陶業の中核事業は、自動車のエンジンで使用される点火プラグやセラミックスの開発、製造です。それに比べて、主にPCやスマートフォンなどに使用される半導体を開発、製造する半導体パッケージ事業は、韓国や台湾をはじめとする海外メーカーとの競争が激しく、経営上の課題を抱えていた時期でした。
30歳を過ぎたころ、思い立って中小企業診断士の資格を取ることを決意しました。半導体事業のキャリアしかない自分の将来に対して危機感を抱いていたこともありますが、経営について学びたいとの思いもあったからです。
中小企業診断士の資格を取得するには、一般的には1000時間以上の勉強が必要といわれているそうですが、私はそれ以上に時間を費やしたと思います。終業後と休日にコツコツ勉強しましたが、正直、辛かったですね。合格はしたものの、この資格がエンジニアの仕事に役立っているとはいえませんでした(笑)。しかし、同じ資格を持つ人との交流ができたことと、経営についての知識を習得できたことは大きな収穫となりました。
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