なぜ調査が役に立たないのか――プロが語る「失敗する理由」:【連載】データと調査で“愛されWeb”を作る 最終回(1/2 ページ)
これまで、ビジネスに貢献するWebサイトを作るための各種調査活用のポイントを紹介してきました。最終回では各回の執筆者たちが、ありがちな問題点を整理しつつ成果につながる調査の進め方を語ります。
前回まで5回にわたり、ビジネスに貢献できる「愛されWeb」を作るための手法を紹介してきました。
具体的には、NPS(Net Promoter Score)で「どうして愛されているのか」を可視化し、定性調査で「愛される理由」を深掘りし、「定量調査(アクセスデータ分析)」で効果を観測していく流れについて説明しました。
しかし、実際にそのようなフローでWebサイトが作られることにリアリティーを感じられない人もいるかもしれません。そもそも、どうしてWebサイト作りに調査を連動させた方がいいのかが分からない、あるいは連動させたくてもできていないといった悩みもあるでしょう。
最終回では本連載を執筆した各分野のエキスパートたちが、調査がうまくいかない企業にありがちな理由を解明し、効果が上がるポイントについて語ります。
間違いは発注するタイミングから起きている
千田 連載第1回では「何のための調査なのか」を考えることの重要性を、第2〜5回では、NPSや定量調査、定性調査といった手法を用いてPDCAを回すポイントについて解説しました。ただ実際は「定量調査をしたいです」「定性調査をしたいです」と方法ありきでご相談いただくケースが多い気がします。
太田 そうですね。さらに定性調査の場合、「インタビューをやりたい」「行動観察をやりたい」と手法まで細かく指定される一方で、「手法は決まっているが使い方がよく分からないので手伝ってほしい」といった相談も多い。何の手法でどのように進めて欲しいか(How)についてはお客さまも勉強していて、依頼時にいろいろ話してくださるのですが、何のためにその手法を使うのか(Why)がぼやっとしていることが多い印象です。どの調査方法や手法が適切なのかを決める前に、まずはこの部分からご検討いただきたいですね。
松永 私にも同じような経験があります。NPSについて本を読んで知識を得ている方は設問にこだわりを持っている一方で、基本的な設問を省いて先に進もうとしてしまいがちです。プロから見れば、こういう聞き方をしなければ絶対に答えが得られないという肝心なところを端折ってしまう。
太田 お任せにすればするほど専門的で細かい話になって、担当者自身で把握しづらくなってくるので、不安になるんでしょうね。ただ、自分の理解が及ぶ範囲でピンポイントに調査をしたいという気持ちは分かるのですが、重要なのは適切なHow(手法)からデータを集めて「次に何をすればいいのか」を知ることですから、そこはプロを信じていただきたいと思います。
松永 分かったつもりになるのは危険ですね。また、手法だけに固執すると、自分が想定していなかった結果が出たときに改善策が取りにくいと思います。例えばNPSでは「Webの課題を洗い出すつもりだったのに、調査を進めた結果、そもそも課題はWeb以外のことにあることが分かった」というようなことがあったりします。
太田 定性調査でもありますね。Webの使用状況について調査してみたら「そもそもWebページは見ていなかった」ということが分かったり、「商品に問題があってWebでは解決できない」といった、どうにもできない事実が出てきてしまう。最初に決めうちで調査手法を指定してしまうと、ビジネスイシューとかみ合わず、PDCAを回す上で逆効果となってしまいます。第1回の繰り返しになりますが、WhyとHowを厳密に話し合い、判断していく必要があります。
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