第4回 「とりあえず」を卒業したいマーケターためのビッグデータ入門:【連載】デジタルの時代にマーケターが知るべきこと(1/2 ページ)
とりあえずデータ化し、とりあえず蓄積し、とりあえず分析すれば、とりあえず何かすごいことができるかも……。こういう経験ありませんか? 「とりあえず」を卒業したいマーケターのためのビッグデータ活用入門。
マーケティングにとってのビッグデータとは
「第3回 データドリブンマーケティングと『カイゼン』」はデータドリブンマーケティングとカイゼンというテーマでお話をさせていただきましたが、今回は「データ」という流れで、マーケティング界隈でもよく取り上げられる「ビッグデータ」についてお話をさせていただきます。
大量のデータが安価に蓄積でき、Hadoop、MapReduceなどの技術を使って高度な解析が可能になったことで「ビッグデータ」というキーワードは非常な盛り上がりを見せています。この「ビッグデータ」という言葉はまるで金脈が眠っているようなニュアンスで使われますが、一方で、「自社のマーケティングに使えるかどうか、ちょっとよく分からない」と悩んでいるマーケターは少なくない気がします。
技術上可能になったので、とりあえずデータ化し、ストレージに余裕ができたので、とりあえず蓄積し、すごく早く分析できる手法が登場したので、とりあえず分析してみよう! とりあえず何かすごいことができるかも……。
批判を承知で述べると、多くは「とりあえず」こういう感じでビッグデータを捉えているのではないかと思います。
もちろん成功したマーケティング事例もあるでしょう。また、昨今話題になったSUICAやDocomoの例のように、日本企業でも保有するデータを外部に売り出すケースが出てきました。また、メディア側でもYahoo!やGoogleのように、訪問者のデータを分析することで、行動ターゲティング/インタレストマッチといった、よりターゲティング精度の高い広告サービスを提供している企業もあります。
しかし、これらの成功事例は果たしてすべての企業に当てはまるものでしょうか? 対顧客コミュニケーションを担当する企業のマーケターにとっての真の意味での「ビッグデータ活用」とは一体どういうものなのでしょうか?
雑誌やオンラインメディアが取り上げるさまざまな事例に目を通しながらも、実際はどう取り組んでよいのか悩んでいる企業の担当者が多いということは、先月、カウンシルメンバーとして参加させていただいたiMedia Data Summitでも実感しました。
IT業界では早くから取り上げられ、話題になったビッグデータですが、最近の野村総合研究所の調査では、ビッグデータの最も大きな課題は「ビジネスとして具体的に何に活用するかが明確ではない」ということでした。
IT部門を否定するわけではないのですが、いくつかの業界でお客さまのマーケティングに関わりながらデータを扱ってきた身としては、「マーケティングにとってのビッグデータ」は技術に強い人、分析だけが得意な人が、「とりあえず」データを集めて統計知識を振り回せば何かすごいことができる、というものではないと思います。明確な目的、仮説がない状態で、大量のデータから何らかの統計的な傾向が見られても、Actionable(実際の現場で使えない)ではないというのがほとんどではないでしょうか。
ビッグデータを活用したマーケティングプロジェクトは、自社のビジネス/顧客、そして課題を理解し、改善のための仮説を立てられるマーケターが主導して進めるべきだと思います。マーケターにとってクラウドなどのインフラ技術は、あくまでマーケティング戦略を実現するための「手段」でしかありません。昔はできなかったことが技術によってできるようになってきた、というだけのことと考えてよいのではないでしょうか。
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