ローソン、ビッグデータ分析で「街」をもっと幸せに:IBM CMO+CIO Leadership Forum Report
日本IBMの「CMO+CIO Leadership Forum」ではユーザー企業の講演も行われ、「Pontaカード」を活用して顧客の理解を深めるローソンの玉塚COOがステージに上がった。
3月6日、都内のホテルで行われた日本アイ・ビー・エムの「CMO+CIO Leadership Forum」では、日本を代表する企業のCIOとCMO(最高マーケティング責任者)およそ200人が参加し、テクノロジーによってその役割が再定義されつつある「マーケティング」についてさまざまな議論が交わされた。
ご存じのようにスマートフォンやソーシャルメディアの浸透は、日々膨大なデータを生み出しており、それらを収集、統合、掛け合わせ、得られた洞察を迅速かつ適切なアクションへとつなぐテクノロジーも進化してきている。いわゆる「ビッグデータ」を上手く活用できれば、顧客をセグメントではなく「個」のレベルで理解でき、また、すべての顧客接点において商品やサービスの価値を最大化することもできる。
IBMでSmarter AnalyticsやSmarter Commerceといったより付加価値の高いソフトウェアソリューション群を統括するマイク・ローディン上級副社長は、「新しいマーケティングはチャレンジだが、これまで手付かずだった課題を解決する無限のチャンスがそこにある」と話す。
午後のユーザー企業講演では、「Pontaカード」を活用し、顧客の理解を深め、彼らのニーズに基づいた品揃えや商品開発に取り組むローソンの玉塚元一COOがステージに上がった。
大手コンビニエンス・ストア・チェーンのローソンは、国内外に約1万1600の店舗をフランチャイズ展開、全店の売上高は1兆8250億円を超える。ポイントカードサービスであるPantaカードの会員数は順調に伸び、5150万人まで達した。売り上げに占める会員の比率も40%を超えており、きめ細かなマーケティングだけでなく、メーカーと一緒になって顧客が求める商品やサービスを企画開発できる体制が整った。
玉塚COOは、「Pontaカードのデータを分析することで顧客のニーズを理解し、各店舗の品揃えだけでなく、商品開発にも生かしている。厳しい競争に打ち勝ち、顧客の支持を得るためには、Pontaカードを核としてCRMとSCMという2つのエンジンを高速で回し、製造小売型のコンビニエンスストアを追求するしかない」と話す。
徒歩5分以内、距離にして半径わずか354メートルという狭い商圏で競い合うコンビニでは、毎日のように来店してくれるヘビーユーザーをいかに増やすかがカギとなる。ローソンの場合は、わずか1割に過ぎない「ヘビーユーザー」の売り上げが全体の6割以上を占め、これに「ミドルユーザー」を加えた約25%の顧客の売り上げ比率は8割以上になる。
「わたしは、ヘビーユーザーについてもっと知りたい。彼らはいつ来店し、何を買っているのか。彼らは大切な顧客。失礼のないよう、彼らが望む商品は、仮に売り上げが少なくても店頭からは外せない」と玉塚氏。
ローソンでは生鮮食料品にも力を入れ始めているが、これもヘビーユーザーの支持があるからだ。生鮮食料品を求める顧客は、夕方から来店し、ほかの商品と合わせて買うことが多く、1回当たりの購入額も高いという。もちろん、全国に拡大中の農業生産法人「ローソンファーム」にも分析から得られた知見をフィードバックし、こだわりの素材・品質で美味しさや安心・安全を届けられるよう取り組んでいる。
「Pontaカードのデータを分析すると顧客個人や各店舗の様子が見えてくる。深く見ていけば、いろいろな仮説や気付きが得られるが、商品を仕入れるのは加盟店だ」と玉塚氏。分析から得られた仮説や気付きは、実際の店舗で具体的なアクションにつながってこそ顧客の支持が得られる。
「各店舗のオーナーまで含めたローソン全体で、顧客に対する理解を深め、そこから得られた仮説や気付きに基づくアクションが成功したら、それをみんなで共有する。“みんなと暮らすマチ”を幸せにする、というローソンの企業理念もそうして実現できるはずだ」(玉塚氏)
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