ゲーミフィケーションフレームワークについて(1):ゲーミフィケーションを設計するために
現在展開しているサービスにゲーミフィケーションのコンセプトを導入するには、何をどのような手順で考えればいいのでしょうか。ゆめみの深田氏が解説します。
こんにちは、ゲーミフィケーションの導入のお手伝いをしている、ゆめみの深田です。ゲーミフィケーション拙著「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」にて、「ゲーミフィケーション・フレームワーク」(以下、GFW)という考え方を提示しています。その後、自分自身あるいはゆめみとしての仕事でもこのフレームワークを使って実践する機会が増えてきました。さまざまな場面で使うことができる考え方だと実感しているので、ご紹介します。
GFWはこのような図で表現します。さまざまな意味がこの図には込められているのですが、基本的にはここに書かれている6つの要素で構成されています。これはゲーミフィケーションのコンセプトを実際のサービスに導入する際に、何をどのような手順で考えていけばいいのかということを提示するものです。ここに記載されている番号順に考えていくことでゲーミフィケーションをサービスに適用することができます。
(1)目的と利用者
図の一番上に表現されている「目的」を定めるのが第一歩です。そのためにはまず利用者をしっかりと理解する必要があります。利用者はなぜこのサービスを使うのか? 真の動機をつかむのがこのステップで実施することです。誤解してはいけないのは、ここではあくまで利用者の動機に注目することです。決して、サービス提供者(企業であることが多いでしょう)の動機ではありません。
以前、「広告主がいるサービスの場合、広告主の動機にも重点を置くのか」という質問をいただいたことがありました。そのような場合にはサービスの利用者として、1.広告主、2.(広告を閲覧する側となる)一般ユーザーの2種類が考えられます。しかし、そのような場合でも後者の動機に重きをおきます。一般ユーザーが満足してこそ広告媒体としての価値が出るからです。「動機が複数考えられる場合はどうするのか? 」という質問をいただいたこともあります。それぞれの動機を満たすようなゲーミフィケーションデザインを考えることが理想ですが、実際は複雑さの度合いが増すため、まずは1つの動機に絞るほうが現実的です。より多くの人の動機となっているケースを選ぶ方が効果が出やすいので、そちらを設定してみてはいかがでしょうか。
(2)可視化要素
動機を1つに絞ったら、次にそれを可視化することを考えます。可視化とは、数値化と考えてもかまいません。動機の実現に近づいていることを表現する数値を設定してみましょう。例えば、動機が「健康になりたい!」であるとすると、「健康度」を数値で表現することを考えます。あるいは「自分の知見を披露したい!」なら「披露できている度」を数値で表現する方法を考えてみましょう。このような数値は、実際はどのような要素に分解されるでしょうか?「ゲーミフィケーションを適用するサービスが提供できる何か」を基準に考えてみてもいいですし、「その数値が表現していること」を基準に考えてみてもいいでしょう。
例えば、健康度であれば、Nike+を例にとれば「ジョギング」という切り口でこれを表現することになります。「走った距離」「スピード」「継続日数」などといった要素への分解が考えられます。また燃焼した「カロリー量」「体重」「血圧」といった要素もあり得ますね。仮にNike+を拡張して、ジョギング以外の切り口で健康を実現することを含めるとすると、「食事」「睡眠」といった要素を新たに加えてもいいかもしれません。ここでは、「数値が向上/改善すれば動機の実現に近づくであろう」と考えられる項目をできるだけたくさん挙げてみましょう。
(3)目標要素
3−1 アクションの決定
可視化要素として挙げたこれらの数値について、全てが実際のサービスの中で取得できるわけではありません。ここでは実際のサービスの中で具体的にとり得るアクションを基準として、(2)で挙げた数値のうちどれが表現可能なのかを検討します。ここでいうアクションとは、Nike+であれば「ジョギング」が主となりますが、Webサービスであれば「ログインした」「商品を閲覧した」「検索した」「購入した」「レビューを書いた」「Facebookでシェアした」といったアクションが挙げられます。Nike+の上記の例ですと、体重はNike+単体としては取得しづらい数値なので、いったん省いた方がよいでしょう。
ただし、現在のサービスで用意している機能では取得できない数値であったとしても、本来あった方がよい数値は、将来の機能拡張の有力な候補なのでチェックしましょう。ユーザーがサービスの中でとり得るアクションはさまざまにあると思いますが、アクションの組み合わせの中で考えられる要素こそが具体的な「目標要素」です。ちなみに(1)で考えた「目的」とは言葉が似ていますが、GFWではこの2つを明確に区別しています。目標は具体的なアクションとして記述でき、達成したかどうかが明確に判定可能なものです。目的は(健康になりたい、というように)必ずしも達成指標が明らかではありません。
3−2 難易度のデザイン
こうしたアクションを決めたら、今度は難易度を考えます。当然ながら簡単な目標と達成が難しい目標があります。Nike+の例で挙げれば、1km走るのは容易でも100km走るのはそう簡単ではありません。アクションの量、頻度、結果などに応じて達成が困難な目標と容易な目標をいくつか設定します。(2)で分解した各数値要素を表現するアクションについて、難易度に応じて段階を設けて表現してみましょう。それぞれが利用者にとっての目標となります。
3−3 フィードバックのデザイン
最後に、それぞれの目標を達成した時にどんなフィードバックを利用者に返すのかをデザインします。簡単なものであれば簡単なりの、難しいものであれば難しいなりのフィードバックを考えましょう。その際に、そのサービスならではの特典があるとなおよいです。
※この記事はGAMIFICATION.JPのゲーミフィケーションフレームワークについて(1)の原稿を一部修正して転載しています。
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