第1回 生活者の“買いたい”気分を創り上げるマーケティングコミュニケーション:【連載】コミュニケーションデザインのための戦略フレームワーク(1/2 ページ)
企業は「売る視点」に立ってメッセージを発信する。生活者は「買う視点」から企業のメッセージを受信する。企業と生活者のコミュニケーションは理想的な形で成立しているのだろうか? そもそもマーケティングコミュニケーションの理想的な形とは? シナジーマーケティングの工藤浩志氏によるコミュニケーションデザインのための新連載。
生活者が“買いたい”気分になるようなコミュニケーションデザインとは
これまでのマーケティングは、商品やサービスの特徴、魅力を生活者に伝える“売れる”マーケティング施策が中心でした。商品やサービスを中心に据えると、“売る”というのは企業視点になります。一方、“買う”というのは生活者視点の行為です。行為の主体を企業にするか、生活者にするか。それによって、関心ごと(=焦点)の捉え方が変わってきます。その結果、打ち手も変わります。
顧客視点のマーケティングが叫ばれて久しいですが、現代ではますます「生活者が“買いたい”気分」になるようなコミュニケーションデザインが求められています。生活者の視点をしっかり見極め、生活者が“買いたい”気分になるような打ち手(戦略シナリオ)を創りあげていくことが大切です。
完全な打ち手を創り上げることはむずかしいのですが、その打ち手は客観的なデータで評価や検証ができるものでなくてはなりません。その結果、打ち手の改善、さらにはノウハウの蓄積に寄与することができるようになります。
本連載では、顧客視点のマーケティングを組み立てていくための方法論や打ち手の組み立て方、評価の仕方を解説します。
なぜ今、コミュニケーションのあり方に見直しが迫られているのか
CRMという概念が登場してから20年以上になり、世の中一般にCRMに関する理解が得られるようになりました。しかし、実際のマーケティング現場で、どの程度CRMが実践されているのでしょうか。
企業と生活者のコミュニケーションの手段として、ダイレクトメールや電子メールなどを活用したCRMがもてはやされた時代もありました。
また、生活者の性別や年代、職業などの情報で生活者をセグメント分けし、コミュニケーションを最適化する方法がCRMと呼ばれた時代もありました。
そして現在、Webページでの行動履歴やアクション、購買履歴といった情報をもとに、生活者をセグメント分けし、コミュニケーションの最適化をはかることに関心が寄せられています。
確かに情報通信技術を駆使することで、生活者情報の把握が可能となり、生活者個々の単位でコミュニケーションを最適化していくことが現実的なものとなりました。しかし、多くの企業はいまだ、施策中心の部分解決や個別最適化に重きを置くコミュニケーションから抜け出せてはいない気がします。企業視点の一方的なコミュニケーションであるといった印象が拭い切れないのです。実際に求められているのは、生活者の心を揺り動かすコミュニケーションなのではないでしょうか。
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