#1 ビジネスが「戦争」ならマーケティングは諜報、洞察、広報/宣伝、兵站:【連載】マーケティング7つの法則
マーケティングとはどのようなものでしょうか。ビジネスの競争を戦争に例えると、マーケティングの役割は諜報、洞察、広報/宣伝、兵站活動です。本稿では実務に沿ったマーケティングの役割をユニークな例を用いながら解説します。
現代のビジネスの競争は例えるとしたら、戦争が一番近いでしょう。ゲーム、スポーツと候補は他にもいろいろありますが、複雑かつ多様でライバルやら関係者が多く、負けるとその組織体が持続できなくなるという意味では戦争が最もしっくりきます。古今東西いろいろな戦争が記録されています。現代のビジネスパーソンは過去に学ぶことができます。
ビジネスという現代の「戦争」で一義的に必要なのは、戦っている兵隊たる営業や、戦闘を支える国力たる生産部門でしょう。しかし、現代のビジネスは営業と生産だけでは足りないケースがほとんどで、残りの要素はマーケティングが担います。それが、諜報、洞察、広報/宣伝、兵站という4つの領域です。
1.諜報(インテリジェンス):敵を知り己を知る
戦う相手や自分の組織、市場という顧客を知る諜報活動が重要です。勝てそうか勝てなさそうかを正確に知ることができれば、「負ける戦争は仕掛けない」という常勝の作戦が可能になります。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」という孫子の兵法の言葉が有名です。「BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールブームが何度か来ては、定着しない日本」とよく言われますが、経営層が諜報を重視し、顧客の実態とその変化を詳しく知り、把握して経営に使う、という発想と実践があれば、嫌でも使わざるを得なくなると思います。
2.洞察(インサイト)が情報を価値に変える
せっかく得た情報も解釈を間違えては意味がありません。コンピュータゲームなら、相手の情報はパラメータとして数値化され、単純に比較できますが、実際のライバル企業の情報は数値化できないものが多く、だからどうしたという部分での洞察は別途ヒトが行う必要があります。
3.広報/宣伝がマーケティングの花形
営業や生産以上に威力が見えやすい部門があります。広報/宣伝です。例えば、「会社で犬を飼う」とかいう突飛なアイディアを実行に移してテレビに数多く露出し、知名度を一気に上げるなんていう芸当はマーケティングの花形たる広報/宣伝だからできることです。
知名度が上がると、営業活動はかなり楽になります。電話で連絡をとろうとする時、認知度は大きな武器になります。話題にならなくなると広報から宣伝へ予算が移っていくことになりますが、広報と宣伝は表裏一体の「飛び道具」として大きな威力を持つと実感できると思います。
4.兵站(ロジスティクス)は、BtoBマーケティングでのデマンドジェネレーションなど多様な役割を担う
業種や業界によりますが、企業向けで営業の介在が必要な複雑な商品では、営業にリード(引き合い情報)を渡すデマンドジェネレーション(以下デマジェン)活動が欠かせません。企業向けIT商材だと、広報は外注しつつ、社員のマーケティング活動はこのデマジェンに専念という場合が多くあります。
日本の会社では、取引先に営業が行って案件を掘り起こして売り上げを立てるというサイクルが営業部内で完結していることが多いのですが、それにはいくつか問題があります。結局のところ、案件をクロージングして売り上げを立てるという行為と、案件化できそうな見込みの手前の顧客(=リード)を探してくるという行為は結構違っていて、担当者に求められる特性も違うのです。それらを兼ねてしまうと、ビジネスマンとして大きな成長がしにくいという問題があります。そこで、分業し、以下のような役割分担、プロセス分離を行うことが結局は企業にとって効率とチャンスの最大化につながります。
マーケティングから営業へのフロー
連絡先情報取得 → 予算、時期、権限、関心などの取得 → 選別 → 案件対応
以上、マーケティングを4つの役割に分類してみました。人によりこれらの役割の1つだけを実施するケースもあるし、会社として役割が分断されているケースや繋がっているケースなど様々です。自社、競合、顧客を理解していない広報には意味がありません。また、認知度だけを上げても営業にリードを渡せるような仕組みがなければ売り上げにはなかなかつながりません。
外資系IT企業でマーケティングを長くやってきた経験から、これら4つのアクションを統括し、営業や生産などの他部門との連携までを調整するのがマーケティングの役割かつ醍醐味だと感じています。
※この記事はITmedia オルタナティブブログ「坂本英樹の繋いで稼ぐBtoBマーケティング」の原稿を一部修正したものです。
寄稿者プロフィール
坂本英樹(さかもとひでき) 基盤系の外資ソフトウェア会社でネットマーケティングを担当。リード獲得の実務と裏方に日々奮闘中。案件を営業に「繋ぐ」、売り上げに結び付けて「稼ぐ」という意識(日本のマーケティングではまだまだ足りない)や活動を普及させ、さらにはマーケティングで「測れて報われる」ことを目指している。
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