「リアルもWebも変わらない」――ファン100万人の「無印良品」アカウントを1人で支える風間さん(2/2 ページ)
「接するのがお客さんだということは、リアルもWebも変わらない」。3つのソーシャルメディアで合計100万の“ファン”を持つ「無印良品」公式アカウントを支えるのは、たった1人の社員だ。
リアルもWebも変わらない
風間さんが公式アカウントの運営に当たって重視しているのは「無名性」だ。無印良品の店舗やECサイトでは、著名なデザイナーを起用した商品でも大々的にそれを公表せず、まるで無名のデザイナーが作ったかのように演出する。それと同様に、ソーシャルメディアでも運営者個人の人間性を前面に出しすぎないよう意識しているという。
「ネット上ではユーザーと親しくしようとすればできてしまうが、それは無印良品らしくない。店舗とWebでは顧客接点が変わるとはいえ、無印良品であることには変わりない」。個人的になりすぎず、機械的にもなりすぎないように――そんな絶妙なユーザーとの“距離感”を「お客さんと握手するぐらいの距離」と風間さんは表現する。
“炎上”の心配もないという。「ネットでもそこにいるのがお客さんだという意識を忘れなければ、炎上は100%起こらない」と風間さん。「無印良品は370店舗で毎日お客さんと接している。そこで接しているのが友達ではなくお客さんだということは、リアルもWebも変わらない」
販売した商品などについて、時にはユーザーから公式アカウント宛てにクレームが寄せられることもあるという。だが風間さんは、ソーシャルメディア上でのユーザーの声は「圧倒的にポジティブな意見が多い」と感じている。
「お客様室(無印良品のコンタクトセンター)に『この商品が良かった』と言ってくれる人はなかなかいない。しかしソーシャルメディアによって、お客さんから『良かったですよ』と言ってもらえるようになった。そのことを商品開発部に伝えると喜ぶし、商品開発のモチベーション向上にもつながっている」
海外市場でも“ソーシャル”活用
国内向けソーシャルメディアアカウントの運営を行う一方で、風間さんには「もっと世界のお客さんとつながりたい」思いがあるという。そこで現在、風間さんが力を入れているのがソーシャルメディアを活用した海外向けWebキャンペーン施策だ。
無印良品は現在、アジアやヨーロッパを中心とした22カ国で店舗を展開している。だが風間さんによれば「ヨーロッパ市場での認知度は日本と比べてまだまだ低い」のが現状だという。
そこで同社は6月、ドイツのECサイトのリニューアルをきっかけに、無印良品の商品を紹介する“Web見本市”ページ「MUJI MESSE」をオープン。ユーザーはFacebook/Twitterアカウントで同サイトにログインすれば、気に入った商品に投票やコメントをして楽しんだり、投票した商品を実際にもらえる抽選に参加したりでき、投票やコメントはソーシャルメディア上でシェアされる仕組みになっている。
「ソーシャルな仕組みを使えば、情報が伝わるスピードも拡大範囲もすごい」と風間さん。今後は中国など世界各国でMUJI MESSEを展開していく予定だという。同社はこうした施策を通じ、世界中での“ファン”獲得を目指していく。
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