日本コカ・コーラのSNS事例、ガイドラインは“べからず”からの脱却が鍵:ソーシャルメディアガイドライン(2/2 ページ)
2007年ごろからソーシャルメディアを取り入れたマーケティング活動を行っている日本コカ・コーラ。広報担当者にどのようなガイドラインを設けているのか、また具体的に実施している施策を聞いた。
“べからず集”ではSNSらしくない
こうしたソーシャルメディアへの感受性の高さは、コカ・コーラがグローバル企業であることにも起因する。
「世界的規模で見ると、もともとソーシャルメディアの利用が活発でした。特にアメリカではFacebookが活用されていました」
こうした背景から、2009年12月には全世界共通のガイドラインである英語版「Online Social Media Principles」を策定、発表した。その基本的なスタンスは、ソーシャルメディアの積極的な利用を推奨するものだった。
「これを受けて、それでは日本の場合はどうするかということになりました。関連部門で話し合う中で、もちろん、基本的な考え方はグローバル版を踏襲するにしても、翻訳しただけでは日本の実情に合ったものとはいえないという結論になったんです」
そこで、日本版ガイドライン策定のためのプロジェクトチームが発足した。グローバルのものを参考にしながら、さまざまな部署の人間で構成されるチームで議論をして、日本の実情に合った内容や構成を再度検討した。何度か改善をはかり、2011年の夏前に日本版が完成。「ソーシャルメディアの利用に関する行動指針」と名付けて公開した。
「そもそも、Principlesをどう訳すかというところから議論が始まりました。初め『規定』という案が出ましたが、これでは“べからず集”的なニュアンスがあって、積極的に使おうという本来の趣旨と合わないのではないか、ということに。そこで、『指針』なら作法といった響きがあり、当社のスタンスにも合っているということでこの言葉に落ち着いたんです」
匿名利用の多い日本では成り済まし対策を重要視
日本版ガイドライン策定に当たって最も問題になったのは、オンライン利用の意識の違いだった。グローバル版は実名利用を前提として作られていた。日本の場合、Facebookの普及によって事情が違ってきたものの、まだブログなどは匿名利用が一般的であり、相いれない部分がある。
そこで、日本での運用に際しては成り済まし対策と、会社としての公式見解と個人見解の混同を回避することを特に重要視した。
「策定に当たっては、意識的にマネジメント層をしっかり巻き込んでいきました。また、複数の部署と協働したことも効果的でした。具体的には、主管部署となったインタラクティブマーケティングチームや広報に加えて法務、人事、顧客相談室などとも一緒に策定することで、今後、何かトラブルが起きたときに相談し合えるような土壌が、プロジェクトチーム内に結果的にでき上がりました。そして、運用面を考えた現実的な指針にすることも重要だと思います。あまり事細かすぎるものを作っても、実際に照らし合わせて運用するのは難しいでしょう」
もちろん、策定して終わりだとは考えていない。
「コカ・コーラビジネスではボトラー社という販売会社とのフランチャイズに基づいた独自のビジネスモデルを持っています。今後の課題としては、このボトラー社にどのように浸透させるのか。この場合、例えば自販機の補充をする営業現場のスタッフまで含めて考える必要があります」
もっとも、SNS上の会話を企業が完全にコントロールできるわけではなく、また、それがSNSのいいところなのだと、佐藤さんは考えている。
「ブランド価値を伝えるために有効に使っていこうというのが基本スタンス。策定した指針を1つのよりどころとして、ソーシャルメディアの活用についてはテストアンドラーンで進め、知見を貯めていくしかないでしょうね」
企業データ
社名:日本コカ・コーラ
設立:1957年6月(社名変更:1958年3月)/代表者:ダニエル・H・セイヤー/本社所在地:東京都渋谷区渋谷4-6-3/事業内容:清涼飲料の原液の製造販売/従業員数:496人(2011年4月1日現在)
『月刊総務』2012年3月号 「進化するSNSを上手に活用するための企業におけるソーシャルメディアガイドライン」より
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